
秋田県横手市に本社工場を置く株式会社クツザワは、金属部品加工業とロボット事業を営む企業です。
同社は経済産業省と日本健康会議による「健康経営優良法人」認定制度で、中小規模法人部門の上位500社「ブライト500」に2021年から2年連続で認定されています。
健康経営を始めたきっかけや取り組み内容、今後の展望について、沓澤淳利社長にお話を伺いました。
高い生産技術で高品質・短納期を叶える株式会社クツザワ

ーー本日はよろしくお願いします。まず御社の事業内容について教えてください。
当社は創業から約40年で、金属加工事業を営んでいます。工場製品を作る装置向けの部品が主な商品です。
高度な技術を要する部品というよりは、より安定した品質の部品を短納期でお客様に納めることができる生産技術を強みとしています。
いかに短納期で物を提供できるかを考えるなかで、人の手をかけずに生産効率を高める「改善」活動を行なっているのも特徴です。
人手がなくて困っていらっしゃるお客様にロボット化・自動化のノウハウを提供できるのではないかと考え、ロボット事業も展開しています。
ーーありがとうございます。健康経営を意識されたきっかけについてもお伺いできますでしょうか。
2017年の気温の寒暖差が激しい時期に、社員2人が心筋梗塞によって救急車で運ばれてしまうということがありました。現在は2人とも元気で仕事に復帰していますが、当時のリハビリはとても大変だったようです。
社員が生き生きと暮らせるために健康は重要ですし、社員が休んでしまうと会社の生産にも大きく影響が出てしまいます。このことが健康経営に取り組むきっかけとなりました。
健康経営の推進をしているのは業務部という部署です。毎週のミーティングで健康経営を議題に上げて企画を考えたり、定期健康診断の二次検査受診勧奨を行なったりと取り組みを進めてくれています。
管理栄養士監修の日替わりランチを提供
ーー実際にどのような取り組みをされていますか?
当社は独身または一人暮らしの社員が多く、彼らの食生活を聞いてみるとコンビニ弁当で済ませていたり、偏った食生活をしていたりするということがわかりました。
そこで社員食堂をオープンし、管理栄養士の方に考えていただいたメニューを日々提供しています。
ーー例えばどのようなメニューがあるのでしょうか。
日替わりで親子丼やとんかつ、うどんなどお腹をしっかり満たしつつ栄養バランスが取れるメニューです。社員の6~7割は男性なので肉を使ったものがやや多めですが、小松菜ときのこの炒め物など、副菜で食物繊維も取れるようにしています。
ちなみに、今はコロナ禍なので予約制のお弁当形式で配布しています。本社工場は3つの棟に分かれていて、それぞれの棟の方が社員食堂に集まると感染拡大の恐れがあるためです。
一週間のメニュー表を見て予約しておけば、お弁当風に詰められたその日のメニューが買えるので、それを受け取りに行くという方法をとっています。
歩幅の大きさを意識できる工夫も

ーー社内には「歩き方」の改善に関する工夫もあるそうですね。
就業時間中に機械を止めて運動するのはなかなか難しいのですが、適切な歩幅で早歩きをするだけでも健康にいいということを知りました。
そこで社員それぞれが自分の身長に合った歩幅で早歩きができるように、通路に身長別の歩幅目安を貼りだしています。
仕事中も構内の移動はありますので、ただの移動にするのではなく健康を意識して歩いてもらうのがねらいです。実際に意識して歩いている社員を見かけることもよくあります。
感謝を伝えやすくする「ありがとうカード」

ーーほかにはどのようなお取り組みをされていますか?
先ほどお話したように、社員食堂に集まって食事をするということが現在はできません。また、工場なので機械と向き合う仕事が多いため、社内コミュニケーションを活性化する方法も検討しました。
ただ秋田県人は口下手だと言われていますので、手紙のほうが本音で話せる、伝えられるのではないかと思いました。そのため「ありがとうカード」というものを作り、社員どうしがちょっとしたことで助けてもらったときなどに「ありがとう」と伝えあえるようにしました。
業務部が毎月集計して、ありがとうカードの宛先の社員に渡しています。ちなみに発行部数を増やすため、5枚以上のありがとうカードを書いた人には会社からいくらか手当も出しています。
朝食サポートや歯科検診も検討中
ーー今後実施したいと考えていらっしゃる取り組みはありますか?
アンケートを取ったところ、朝食を抜いて出勤している社員が全体の3~4割いました。そのため出勤してから朝食代わりに栄養が取れるよう、手軽なゼリー状食品などを社員食堂に常備しようかと考えています。どのような外部サービスを利用するか、現在検討中です。
歯の健康をサポートすることも必要だと感じています。歯周病菌は血液中を通って歯とは関係ない場所で悪さをすることもあるそうです。心臓に運ばれると、健康経営のきっかけになった心筋梗塞を引き起こすリスクもあります。
まずは自分の歯の状態を自覚してもらえるよう、協会けんぽと連携した歯科検診実施を検討しています。
ーー最後に、今後の目標や読者の方へメッセージをお願いします。
企業東北のなかでも秋田県は少子高齢化が進み、さらに高校を卒業して秋田を出てしまう若者が増えています。
その理由の一つは秋田県内の企業の情報が足りず、魅力があまり伝わっていないことだと考えています。
関東圏の福利厚生が充実した企業で働きたい、あるいはそういう企業で子を働かせたいという方もいらっしゃるかもしれません。
そのため秋田にも社員の健康を大切にし、働きやすくしようとしている会社があるということをもっと対外的にアピールしていきたいですね。そして人口の流出を止め、秋田県を豊かにしていければと考えています
健康と事業との関わりでいうと、自動化・ロボット導入によって障害をもつ方などさまざまな方がより働きやすい社会につながるよう、ロボット事業提供も進めていきたいです。
認定を受けた健康経営優良法人・ブライト500も維持していきたいですし、社内の取り組み意欲も自然と強くなっています。
心身が健康だといろいろなことにチャレンジしたくなり、人生が豊かになると思います。ただいきなり大きいことは始められないので、まずは行動を起こすことが大切ではないでしょうか。
ぜひ皆さんにもスモールスタートで健康増進に取り組んでいただけたらと思っています。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社クツザワ
インタビュアー:青柳和香子