
株式会社富士通ゼネラルは、空調機、情報通信、電子デバイスの部門において、製品の開発、製造、販売を行なっている会社です。社員が生き生きと働ける職場環境を目指して、心理的安全性を確保するための取り組みを多数実施しています。
今回は同社で健康経営に取り組む、健康経営推進部長の佐藤光弘さんにお話を伺いました。
職場の雰囲気をよくするための取り組み

ーー御社の沿革や事業内容について教えてください。
佐藤さん(以下、佐藤):当社は、エアコン、情報通信、電子デバイスの製造や販売を行なっている会社です。当社では、2021年からサステナブル経営を推進しております。その3本柱の一つ、社員との共感における施策として、以前からの健康経営の取り組みを加速させています。
ーー健康経営を始められたきっかけを教えていただけますか?
佐藤:私は以前から、富士通株式会社で健康経営に取り組んでいました。企業文化をより良く変えていきたいという社長から、「富士通ゼネラルでも健康経営に取り組んでほしい」と声をかけられたのが、最初のきっかけでした。
健康経営と聞くと、メタボリックの方や喫煙者の人を少なくし、健康に不安のある方を改善するという考え方を多くの方が持っていますが、当社では職場の雰囲気を良くして、社員が生き生きと働ける職場を作っていきたいという気持ちが大きいですね。
そのベースとして心理的安全性を確保していきたいと考えています。当社の企業規模だと産業医が常勤する必要がありますよね。社員がいつでも相談できる場所があることは心理的安全性のベースになります。私が富士通ゼネラルに来たときは、産業医が常駐するスペースは気軽に訪れる場所ではなく、体調が悪くなったときに訪れる診療所のような場所でした。入ったこともない場所には相談しに行きたいと思わないので、産業保健スタッフが社員と接する機会を持ち、いつでも相談できるような体制を作らないといけないと感じました。
気軽に入れる場所にするために、まずは全社員健康面談を行ないました。健康に不安のある社員だけでなく、全社員と面談を行なうことで、どのような先生がいて、どのような場所なのかを知ってもらう機会。また、健康経営推進部を新設し、経験豊富な先生をお招きし、保健師の採用も行なうなど、少しずつ体制を整えてきました。全員の面談を行なうのに1年半ぐらいかかりました。その甲斐もあり、健康経営推進部への認知が広がってきた実感はありました。
ーー健康面談では、どのようなお話をされるのですか?
佐藤:自分の健康相談だけでなく、ご家族の健康のことや上司とのことについての相談をしてくれる社員もいました。特に健康に不安のない方は、5分でも良いです。まず来ていただいて、知ってもらえる機会になれば良いと思います。
ーー健康経営の取り組みを通して、社員の皆さんの健康状態について改善が必要だと感じた点はありますか?
佐藤:睡眠時間確保のために、残業時間を減らす必要があることは課題だと感じていました。これについては、やはり、パフォーマンスを出すには睡眠時間を確保するのが大切なので、コロナ禍前の働き方改革が注目されていた時期から、そこについては改善してきました。
例えば、イギリスでは睡眠時間を何時間確保しなくてはいけないという内容が制度化されています。日本は、残業100時間を超過してはいけないなどと言われていますが、それは裏を返せば睡眠時間を確保するためのものです。
社員やご家族だけでなく、地域の方の健康も考える

ーー具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか。
佐藤:運動セミナーの開催、新鮮な野菜を安く社員に提供して食に対する意識をあげるための取り組み「食育マルシェ」、健康保険組合とウォーキングイベントの共催も行ないました。ウォーキングイベントはチームで参加するイベントですが、海外にいる社員も参加してくれて、去年は500人ほど集まりましたね。コロナ禍のため、みんなで集まるイベントは開催できないので、毎日歩数報告を行なうレコーディング方式を取り入れ、アプリを自作して開催しました。
歩数のほかにも、「今日の気分は明るかったか、暗かったか」なども入力する項目があります。そうすると、良い結果を取るために「明るかった」の方を選びますよね。嘘をつくわけにはいかないので、明るさを意識して行動される姿も見受けられました。そのような一人ひとりの行動が、社内に良い空気として広がると良いと思います。
また、随時順位が見られるようになっているため、チームの中で「〇〇さん、もう少し頑張ってください!」などの声かけから、社員同士のコミュニケーションが生まれていることも良い傾向だと考えています。期間は3週間ほどで、優勝すると商品券などをもらうことができます。
また、来月には社員とご家族に向けて、「一年間ありがとうございました。みんなで楽しんでください」というメッセージを込め、社員の慰安会をよみうりランドで終日開催します。午後には室内ホールを貸切り、東京フィルハーモニー交響楽団にコンサートを行なっていただきます。コミュニケーションを取る機会にもなりますし、リフレッシュできる日にもなると良いです。
当社では、社員とご家族だけではなく、地域の皆さんの健康も考えるCSRの観点でも取り組みを行なっています。先日も、神奈川大学の学生とコラボレーションして、「女性の健康」というテーマで市民の皆さんにワークショップを行ないました。学生が受付や会場のセッティングを行ない、女性の心と体の健康や女性ホルモンについての講義、お茶会などを行ないました。
女性が健康で住みやすい街について、などのテーマでグループに分かれてディスカッションをしました。お菓子を食べながら、和やかな雰囲気のなか、コミュニケーションを取ることができ、よりいっそうお互いの考えが、テーマに対する理解を深めることができました。

勤務中のリフレッシュスペースとしても活躍

ーー健康経営の取り組みを行なうなかで、大変だったことはありましたか?
佐藤:やはり立ち上げのときですね。新しいことをやろうとすると、「これまでやっていないことなのになぜやるのか?」と疑問を持つ方もいます。今では、良いことをしてくれているのだ感じている人が少しずつ増えてきているのですが、それまでは辛い状況もありました。
健康デザインセンターは3年前に立てた新しい施設です。診療所ではなく、健康をデザインすることが目的ですので、卓球台やうんてい、エアロバイクなど運動ができるスペースになっています。裏を返せば、いかに運動ができなくなっているのかを感じるスペースでもありますね。
業務中でも10分ほどなら卓球をしても良いことになっています。リフレッシュするための時間も必要だと考えています。この施設に来てもらうことが大切なので、健康デザインセンターに来た社員にはポイントカードにスタンプを押し、3回来ると、サントリーの飲み物などをもらえるコインをプレゼントします。このイベントは登録制になっていて、今は全社員の3分の1である500人ほどが登録者している状況です。

ーー健康経営について、今後の計画や注力されていくことがありましたらお聞かせください。
佐藤:今の取り組みをもう一歩深く進めていきたいと考えています。社員のご家族や地域の方々への健康にも取り組む企業だということを世の中に伝え、健康経営という考え方を普及していくのが当社の使命だ、という視点で取り組んでいきたいですね。
また、喫煙者を減らしていく必要もあると思いますが、タバコを吸うことを禁止するのでなく、吸わないことが当たり前という文化を作っていくことが会社として必要だと思います。笑顔も広がるように、文化も広がっていきます。良い方向の広がりをさせていきたいでね。
地道に取り組むことが信頼関係をつくる

ーー健康に関心のある読者の方や健康経営に取り組まれている企業のご担当者の方に向けて、メッセージをお願いいたします。
佐藤:大切なことは、「社員やご家族、地域の方をどうやって健康にしていけるか」という課題に対して、地道に取り組むことだと思います。そうすることで、信頼関係や笑顔が生まれていくのではないでしょうか。一つ一つ、課題を見つけては解決するために取り組む、地道な取り組みの繰り返しが重要だと思いますので一緒に頑張っていきましょう。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社富士通ゼネラル
インタビュアー:塩野実莉