
警備業は、夜間の勤務も必要な365日24時間体制です。健全な職場環境を整えるには人材不足や夜勤スタッフの健康課題という課題に取り組む必要があります。
それらの課題にどのように取り組まれたのか、今回は株式会社セクテック代表取締役 古賀政男様にお話をお伺いしました。
「365日、24時間の警備体制」警備業ならではの健康課題
ーー本日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは御社の事業内容について教えてください。
古賀政男さん(以下、古賀):当社は平成9年11月に岐阜県で創業し、今年で25周年を迎えます。セキュリティシステム、防犯カメラシステム、機械警備サービス、AEDレンタルパッケージサービス、コール代行サービスと幅広い事業を行なっております。地元に密着した企業を目指し、岐阜県東濃地方から中部エリアまで営業エリアを拡大しながら現在では3,500社を超える企業様に導入いただいております。
地元に密着しているからこそできる高品質の防犯をご提供し、お客さまの安心と安全をお守りしています。
ーー健康経営優良法人、さらにはブライト500の認定を取得されていますが、健康経営を始められたきっかけを教えていただけますか?
古賀:ちょうど求人に苦労していた時に、知り合いの社労士さんから健康経営優良法人という認定制度があると教えていただきました。警備業は「365日24時間体制」なので、健全な労働環境のためにも、より多くのスタッフが必要です。
そんな時に、健康経営が求人にも効果があるとのお話を聞き、さらに前々から夜勤勤務スタッフの健康診断結果がよくないことも気になっていたので、健康経営に取り組むことにしました。
ーー夜勤の方の健康診断の結果が気になっていたとのことですが、具体的にはどのようなことを課題と感じておられましたか?
古賀:健康診断結果の数値は、運動不足と偏った食生活がその原因になっていると思いました。観察していると入社以降に、スタッフの体型が変わっていっていると感じることが多くありました。夜勤なので手軽にすませられるコンビニのお弁当やカップラーメンなどを食べることが多く、野菜不足の傾向にあり、なおかつ運動不足。生活習慣が不規則なのがその大きな要因だと思います。
ーー健康診断結果の数値では、どのような項目が気になりましたか?
古賀:大抵は肥満、血圧、脂質異常ですね。独身のスタッフも多いので、どうしても自分の好みのものしか食べないですし、あえて嫌いなものや野菜をとるという健康意識はありませんでした。
食習慣の改善のための福利厚生を充実させる
ーー食習慣や運動不足に対して、どのような取り組みをされていますか?
古賀:1年以上前からオフィスに冷蔵庫を設置し、野菜や健康的な食事が手軽にとれる置き型社食をはじめました。とにかく野菜をとってもらおうと、福利厚生で導入しました。コンビニのサラダのようなものや、健康バランスのよい惣菜などバリエーション豊富に購入できます。
商品の半額は会社が負担のため、スタッフの自己負担は50円や100円と安価で購入できる仕組みです。
また、多治見市の地元企業であるタニカ電器株式会社さんのヨーグルトメーカー「YOGURTIA」を使って、毎週手作りのヨーグルトを無料で提供しています。最初はあまり興味を持ってもらえませんでしたが、今では夜勤明けの朝、仕事が終わった後に食べているスタッフや、仕事前に食べているスタッフを見かけるようになりました。夏は喉越しがいいのかよく減りました。
ーー健康経営を始めてから、社内の変化を感じますか?
古賀:スタッフの意識が変わってきていると感じていますが、健康診断が11月なので、まだ目に見える数字での結果は出ていないのが現状です。
意識の変化という面では、ヨーグルトも甘くないから食べないという意見が最初は多かったのですが、最近では率先して食べてくれるようになりました。用意していた分がなくなると、「ないですよ」と総務担当者に声をかける光景を目にします。
そして、オフィスに設置した、置き型社食の注文が増えました。野菜もそうですし、煮魚といったメニューもあるので、温めるだけで手軽に食べられるのが好評のようです。
また玄関前に株式会社伊藤園様のウエルネス自動販売機を設置し、野菜ジュース・黒酢など健康に特化した商品を中心に安値で購入できるようにしました。
ーー健康チャレンジや女性のための健康チャレンジといった取り組みをされているようですが、具体的な内容を教えていただけますか?
古賀:健康チャレンジは健康経営において、重要なポイントになっています。それによる健康意識の向上もあったと感じています。担当者が毎月、健康についての話題を発信してくれています。さらに女性向けのものも別で発行してくれていて、当社の保健士のような働きをしてくれています。

古賀:最近では、夜勤のスタッフが勤務している管制室に行くと「なかなか体重減らないけど、どんな運動したら良いかな」という会話が出てくるようになりました。これは健康チャレンジ便りなど健康に関する便りを出すことによって、健康を少しでも気にする人が増えた証なのかなっと思い喜んでいます。
内容としては、なるべく食事や運動、健康診断で引っかかりそうなものをテーマに取り上げてもらっています。「こうゆうのを食べると良いよ、逆にこうゆうのを食べるとこうなっちゃうよ」というのをわかりやすく伝えるようにしてくれています。

「健康」というトピックは幅広くて奥が深いため、テーマにも限りがありません。だからといって細かすぎる内容はなかなか読んでもらうのが難しいと思うので、本当に基本的なことを取り上げるようにお願いしています。
女性向けのお便りでは女性特有の健康リスクについて紹介や、仕事と家庭を両立する上で、ストレスなく働けるよう手間を省けるところは省くためのアドバイスといった情報も発信しています。
特に、女性の病気は自分でおかしいなと思っても、なかなか聞けなかったり、病院に行くタイミングを逃してしまったりしがちです。症状が出てから大きな病気だったとわかることもあると思います。そうならないように、女性は女性特有の病気のことを学ぶ講習会を、年に1回開くようにしています。
ーーさまざまな取り組みをされる中で、大変だったこと、やりがいがあると感じられたエピソードを教えてください。
古賀:1番やっていて良かったと思ったのは、スタッフの病気を早期に発見できたことです。健康経営をやるにあたり、これまで一般健診しか実施していなかった健康診断を、生活習慣病予防検診という検査項目の多いものに変更しました。その際、女性特有の検診も会社負担で2年に1回受けられるようにするなどの検診内容を見直し、検査項目も追加したところ、自覚症状のなかったスタッフの病気を早期に発見できました。
早期だったため、2週間ほどの入院で元気に業務に復帰することができ、今も元気に活躍しています。
これから日本は少子化で働く人数がどんどん減ってくるので、高齢者と言われる方が元気で働き続けられることがとても大切になってくると思います。そのスタッフも70代ですが、病気を早期に発見できたことで、今も元気に活躍しているので、それは本当にやりがいを感じる出来事でした。
健康経営を行う上で苦労しているのは禁煙についてです。そもそも、タバコをやめようと思う気持ちにさせるのが難しいと感じています。
古賀:無理に禁煙を進めることで、逆にストレスになってしまうこともあるので、喫煙する代わりに運動をすると気分転換になる、といったことを伝えるようにお便りを出したりしています。まずは本数を減らすことが目標です。
禁煙までは難しいですが、紙タバコから電子タバコへの移行はほとんどできています。電子タバコに関する講習会を開催し、その時に実際に体験もさせてもらえて、「これなら」という感じで、移行できました。それに伴って受動喫煙はほとんどなくなりました。
離職率の低下までを見据えてのメンタルヘルスケア
ーーブライト500の認定取得後、社外からの反応はいかがですか?
古賀:多治見市で初めて健康経営の認定を受けた企業として、市長表敬訪問をしました。また、メディアにも多く取り上げていただいき、新聞も5社くらいが取材にきてくれました。そのため、営業の際も健康経営に関する話題から入ることができますし、お客さまも興味を持ってくださいます。
採用の面でも、効果を感じています。こういった取材を受けたりする中で、今の若い世代とその親は福利厚生の部分をすごく見ているということがわかりました。この認定を取るとハローワークなどの求人にも載せられます。いかにホワイト企業なのかということに注目している若い人材の目に留まりやすく、実際に若い社員が入社してくれているのは、ありがたいです。
ーー社内への良い影響だけでなく、社外へのアピールにもなっているのですね。
古賀:特に、地元に根付いた企業にしたいというのが社の強い想いですので、それにも貢献できたと感じています。働く人が元気になって、多治見市が元気になって、多治見市に人が集まるようになるという流れができると良いなと思っています。
ーー今後、健康経営について注力したい点はありますか?
古賀:社内でのストレスチェックのためにスマートパルスを導入し、毎月社員全員のストレスチェック行い、半年に1回結果と改善案を本人に渡しています。
また50人以下の企業は義務化されていない集団ストレスチェックも年に1回行っています。集団でのチェック結果を企業に提出して、集団としての結果を受け取るという形でした。それではなかなか改善には至らないと考え、地元の産業医にお願いし、個人としての結果を出してもらえるところを探しました。その結果をもとにPDCAをまわしています。
今はそこと契約して、責任者を置いて個人情報を取り扱えるようにし、個人へのメンタルヘルスケアを行える体制を整えるところまできました。今後、高ストレス者へのケアなどに力を入れていきたいと思っています。それが、より良い職場環境へとつながり、離職率を抑えられるのではないかと考えています。
ーー最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
古賀:企業ごとに健康に関する課題は違うと思うので、いっぺん通りではない、自社に合った取り組みをしていかれることがいいのではないかと思います。いろいろ項目や課題はありますが「うちの会社は無理」と思わず、いろいろ工夫して考えて、ぜひ前向きに取り組まれてください。
また、健康経営は人材採用にも効果を感じています。このような取り組みをすることで、新しい人材が集まるだけでなく、離職を減らせると思っています。これからは人材不足を課題としてもたれる企業も少なくないと思いますので、ぜひ取り組まれることをお勧めします。
ーー本日は、貴重なお話をありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社セクテック
インタビュアー:朝本麻衣子
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