
沖電気工業株式会社(OKI)は創業から140年以上の歴史があり、国産初の電話機など多くの先進的な製品・サービスを生み出してきた老舗企業です。
同社は「社会の大丈夫をつくっていく。」をキーメッセージに社会課題解決に取り組む企業として、グループで健康経営を推進するとともに、ヘルスケア分野の事業開発にも積極的に取り組んでいます。
ヘルスケア分野における取り組みと、「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」の認定につながった健康増進活動について、OKIプロサーブ 健康推進チームの三浦亜衣子さん、OKIイノベーション推進センターの武市梓佐さん、川端啓太さんにお話を伺いました。
行動変容を促す技術で社会課題解決に取り組むOKI

ーー本日はよろしくお願いします。まず御社の事業内容について教えてください。
三浦さん(以下、三浦):OKIは1881年に創業し、日本で初めて電話機を作った企業です。創業から140年以上の歴史があり、電話機やプリンター、ATMなどさまざまなものを扱っています。
今回は健康をテーマとした取材なので、OKIが取り組むヘルスケア分野についてご紹介します。OKIでは研究開発のテーマの中で「睡眠改善」と、働く人に健康や生産性の向上をもたらす「行動変容」を掲げています。
武市さん(以下、武市):私と川端はOKI イノベーション推進センターに所属し、社会課題を解決する技術やサービスの検討を行なっています。
睡眠改善のためのプロジェクトは京都大学とヘルステック研究所と共同で行なっているものです。「健康日記」という健康管理アプリに、SPA(Sleep Prompt Application)というシステムを搭載し、働いている方を対象に個人の状態に合わせて、睡眠をとりにくくする要因となっている日々の行動や睡眠習慣の改善をタイムリーにアドバイスすることで、睡眠の質が改善するかを検証する実験を行ないました。
OKIの研究開発メンバーで作っているのは、アプリに適切な提案メッセージを送る「行動変容エンジン」というもので、人の行動の習慣化をサポートする、行動科学に基づいた技術です。金銭的インセンティブに頼らずに習慣化する行動変容を目指していることが特徴です。
働いている方で睡眠に課題があると自覚している方にこの実験アプリを使っていただいたところ、使わなかった方と比べて有意な改善効果が確認できました。その結果は国際学術誌「Journal of Medical Internet Research」にも掲載され、記者発表もさせていただきました。
睡眠の改善を目的としたアプリは数多く開発され上市されていますが、科学的に有効性を証明したものはあまり多くないのが現状です。SPAの改善効果を検証できたことは当社にとって大きな進歩だと考えています。
川端さん(以下、川端):ヘルスケア分野でもう一つ、オフィスでの行動変容を促すアプリサービスの開発にも取り組んでいます。エレベーターを使わずに階段を利用するなど、働く場所も含めて体を動かすこと、歩くことの習慣化を促進するものです。
例えばオフィスのエレベーターが混雑しているとき、スマホに「階段を使いませんか?」といった階段利用のきっかけを与えるメッセージを表示させます。オフィスの位置情報ビーコンやセンサーカメラを利用してメッセージを適切なタイミングで送信する仕組みです。
OKI社内や、鹿島建設様と共同で実施した実証実験から、実際に利用者の行動変容ステージに改善が見られたことがわかりました。私たちはOKIグループ社員にもこのアプリ使用を呼びかけ、ICT活用による健康増進に取り組んでいます。
健康管理を支援するポータルサイト「MY HEALTH WEB」
ーー御社は「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に認定されています。お取り組みの内容について詳しくお聞かせください。
三浦:まず社員が自分自身で健康管理をするためのツールとして、健康保険組合が提供する「MY HEALTH WEB」というポータルサイトを無料で利用できます。
歩数や体重が記録できる、定期健康診断の経年結果とそれに対するアドバイス、医療費明細が参照できる、料理レシピや育児漫画、動画を楽しめるなど、健康と生活に関する情報がまとめて得られるポータルサイトです。
イベントから習慣化をねらう「健康チャレンジキャンペーン」

ーー「健康チャレンジキャンペーン」についても教えてください。
三浦:「MY HEALTH WEB」が自己管理のサポートをするサイトであるのに対し、「健康チャレンジキャンペーン」は実際に生活習慣の改善を目指す参加型のイベントです。
2018年から毎年秋に2カ月間実施していて、生活習慣改善を目指すミッションが20コース用意されています。例えば一日8,000歩以上歩く、睡眠改善のために夜はカフェインを摂らない、スマホを就寝前に見ないといったミッションです。
こうした気軽にできるものもあれば、スポーツへのチャレンジなどもあり、社員一人ひとりが2コース以上、最大5コースまで自由に選んで取り組み、達成を目指します。ねらいは、イベント終了後も継続して生活習慣改善に取り組んでいただくことです。
昨年までは個人参加のみでしたが、今年からはチーム参加もできるようにしました。ウォーキングコースではチームの平均歩数で順位付けして、上位のチームには賞品が贈られます。
ーーチーム意識があると、一人で歩くときでもよりがんばれそうですね。
三浦:コロナ禍で職場のイベントやみんなで集まる機会が少なくなっているので、こういった健康増進のイベントをコミュニケーションの機会として活用できればと考えています。
OKIグループのイントラネット上に各チームの平均歩数が掲載されており、週に一回更新されるのですが、「早起きをして走っているんじゃないか」と思うような歩数の方もいるんですよ(笑)。そんなランナー級の方がいるチームは特に歩数を伸ばしています。各チームのユニークなチーム名も楽しみなポイントの一つです。
社員の家族も参加できる「からだリフレッシュキャンペーン」
ーーほかにはどのようなお取り組みがありますでしょうか。
三浦:運動不足を改善するためのオンラインプログラム「からだリフレッシュキャンペーン」を2021年から新たに導入しています。
OKIグループでは社員の肥満を重点課題としてとらえており、運動習慣を身につけることが重要と考えています。それに向け、コロナ禍でも開催しやすい方法としてオンラインプログラムを採用しました。
このオンラインプログラムは社員の家族も一緒に楽しみながら運動不足を改善していくことも目的としており、今年6月~7月の開催時には家族の皆さんが積極的に参加してくださいました。
ーープログラムはどのような内容なのでしょうか?
三浦:トレーニング・エクササイズ事業を行なっている2社にご協力いただいて、筋力アップやヨガなど、毎週違うプログラムを設定しており、自分自身に合ったプログラムをいくつでも無料で申し込めます。
事後アンケートでは「やっぱり運動は大切だということをあらためて実感しました」「行動に移すきっかけになりました」といった、ねらい通りの声もいただいています。
グループ全体で健康経営に取り組む体制

ーー健康の自己管理、行動変容の両面を支援して健康増進に取り組まれているのですね。どのような推進体制で進められているのでしょうか。
三浦:代表取締役社長執行役員の森 孝廣による健康宣言のもと、全社的に健康経営に取り組んでいます。
私が所属するOKIプロサーブは産業医や看護職も在席する組織で、労働組合・健康保険組合と連携し、外部コンサルタントの意見も取り入れながらOKIグループの健康課題に取り組んでいます。
また、コロナ禍をきっかけに「スマート・ワークライフプロジェクト」という組織を超えたプロジェクトも立ち上がりました。「時間価値の最大化によるワークライフ・クオリティの圧倒的な向上」をコンセプトとして、制度の見直しや働き方DXを推進しています。

私と川端はこのスマート・ワークライフプロジェクトのメンバーでもあり、私は健康経営を推進する「健康ワーキング」に、川端は行動変容技術による健康、交流を促進する「ウェルビーイング向上支援ワーキング」というグループに属し、連携して取り組んでいます。
プロジェクトという場は情報発信力が優れていますので、その力を使って健康経営の企画内容をどんどんグループ全体に発信し、社員の行動につなげていく活動をしています。
さらに、ダイバーシティ推進などほかのプロジェクトにおいても健康は切り離せないものとしてプロジェクト間で連携しているのがOKIグループ健康経営の特徴です。
国内グループ会社すべてに「健康管理委員」を置いて、OKIだけでなくグループ全体に活動を広めて同じ動きをしていく体制となっています。
健康経営は社員が主役。実際のニーズに応えていきたい

ーー今後の展望がありましたらお聞かせください。
三浦:社員からすると「運動習慣を身につけましょう」「肥満を予防しましょう」と言われても、忙しい日々のなかで時間を見つけて運動を続けることはなかなか難しいと思います。
だからこそ、OKIの行動変容を促す技術が世の中の役に立つだろうと思いますし、社員の関心がある健康課題を旗振りテーマとしていきたいと考えています。
現在力を入れているテーマは、睡眠改善です。スマート・ワークライフプロジェクトの一環でアンケートを実施したところ、グループ社員の二人に一人が睡眠改善に関心を持っているとわかりました。
そこで「『睡眠改善のために必要な運動や食習慣』という切り口で取り組んだら、社員の行動変容につながるのではないか」という仮説を立て、今年度の企画に反映しています。
例えば自分の睡眠状態を知ることができる「パーソナルスリープチェック My Sleep」というサービスを新たに導入したところ、最大1,000人の想定に対して2,100人を超える社員の利用がありました。
今後も社員の関心が高い睡眠改善のための施策を通して、重点課題である生活習慣の改善・肥満率の低下につなげていく予定です。
そして健康経営の主役は社員ですので、実際の声、ニーズを拾い上げて応えながら今後も活動を継続していきたいですね。
武市:何かツールを使う際は、「簡単に使える」ことが重要だと思います。アプリをインストールする煩わしさやログインIDが思い出せないことで使わなくなってしまうサービスもありますよね。
そうした結果にならず「出社するだけで健康増進になる」といえるくらい簡単であることが必要なのだと思います。サービスを使ってもらいたい気持ちと使いたい気持ちの違いを意識し、どちら側の人とも話をしながら取り組んでいきたいですね。
川端:推進側である我々ですが、一従業員の立場としても社内の情報発信に日々触れているので、健康経営を身近に感じ、だんだんと当たり前のようになってきたと感じています。
私と武市はイノベーションの推進部門にいるわけですが、ヘルスケアに関しては特に部門を超えたつながり、連携があるメリットを日々感じています。
ーーそれでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
三浦:私生活の質にも仕事の質にも結び付くものですから、OKIグループでは「健康」という概念のボーダーレス化を図りたいと考えています。
行動を起こすタイミングが早ければ早いほど、その先得られる豊かさも深いものになると思うので、「今こそ」「今から」という意識で健康増進の行動につなげていくことを大事にしていきたいですね。読者の皆さまのご参考にもなれば幸いです。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:沖電気工業株式会社
インタビュアー:青柳和香子
サントリーウエルネスのおすすめ商品はこちら