
長野県駒ケ根市に本社を持ち、建設業やエンジニアリング業、そして不動産業などを営む株式会社ヤマウラは、「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に認定されています。
通常の定期健康診断に加えて、自社の社員に必要と考える専門的な検査を実施したり、スポーツジムと提携して生活習慣の改善・運動促進をサポートしたりとさまざまな取り組みをされている同社。
今回は管理本部 企画プロジェクトチームの石川 浩さんに、健康経営の取り組み内容と今後の展望についてお話を伺いました。
10年以上前から健康増進の取り組みを開始

ーー本日はよろしくお願いします。まず御社の事業内容について教えてください。
当社は長野県駒ケ根市に本社を構える建設事業者です。建設事業、エンジニアリング事業、開発事業を展開しており、首都圏では分譲マンション事業も手掛けています。
ーーありがとうございます。健康経営を始めようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。
本格的に取り組み始めたのは 2010年頃からです。病気を患った社員がいたり、世間一般的にも企業が従業員の健康により配慮する必要が高まってきたのを受けて、当社でも従業員に安心して働いてもらえるように健康経営に注力しようと考えました。
検査を充実させ、現在と将来の健康リスクをチェック
ーー御社では定期検査内容が充実していると伺っています。
従来、定期健康診断のほかに38歳以上の全社員が脳ドックを2年に1回受診していました。2019年からは、同じく38歳以上の全員が「Lox-index」という検査を受けています。
これは血管が詰まることによって脳や心臓に引き起こされる病気の罹患可能性を予測する検査です。この検査の結果、現時点で罹患可能性の低い人は脳ドックを3年に1回、可能性が高い人と定期健診での高血圧、高脂質異常といった項目で異常値が出た人は2年に1回、また大型車両運転手と脳ドックで所見のある場合は毎年行なうこととしています。
このLox-indexの結果により生活習慣の維持や改善を促して病気の発症を抑えるのがねらいで検査費用は全額会社が負担しています。
脳ドックでは実際に異常が見つかり、すぐに手術をして助かったという事例がいくつかありました。建設業は大型の車や重機を運転する仕事がありますので、第三者への被害を防ぐという意味でも、運転中に急に意識がなくなるということがないように、この検査を実施しています。
また、保健師による生活習慣病予防に関する保健指導を積極的に行い、全社員の4分の1以上の社員に保健指導を行なっています。それを受けた場合は、どのような生活習慣の見直しをできるかという改善計画を一人ひとり提出してもらっています。
保健師からの指導内容に沿って、例えばBMIが高い人は翌年の健診の時までに何キロ減量する、ウォーキングを習慣化するなどの計画を立てるものです。その他、性別特有の疾患検査なども実施しています。
生活習慣の改善を図る「ヘルスケアチャレンジ」
ーーその他、生活習慣改善に関するお取り組みはありますか?
昨年から「ヘルスケアチャレンジ」という企画を始めました。社員全員を対象にしており、自分が健康面で気を付けていくこと、目標と取り組み状況がわかるような仕組みを導入しております。
業種的な要因もありますが、建設現場で仕事をする社員は夕食時時間が遅くなるなど生活が不規則になりがちで、全国平均や県内平均と比べて肥満率が高い状態でした。
喫煙については20年ほど前から業務中禁止にしており、業界の中では低いほうだと思いますが、現場では喫煙習慣のある職人さんも少なくありませんので、もう少し禁煙を促進していきたいという考えもありました。
これらのような背景があってヘルスケアチャレンジを始めたのですが、大切にしているのは「楽しく改善していこう」という雰囲気をつくることです。会社が目標を立てて取り組ませ始めたものではありますが、今は楽しく取り組むことを目指して教育に取り組んでいます。
ヘルスケアチャレンジでまじめにやって成果を出した人は表彰もしています。今後は何らかのインセンティブも考えたいですね。
スポーツジムと提携。3カ月で7キロ落とした社員も

ーー運動習慣の面では、何か取り組みをされていますか?
会社で提携しているスポーツジムがありまして、肥満と判断された社員に活用してもらっています。初めて4カ月ぐらい経った時点で驚くほど効果が出ていまして、3カ月で約7キロ落とした社員もいるんです。
ーーどのくらいの頻度で通われているのでしょうか?
仕事が早く終わる日など、週に1回はトレーニングをしてもらっています。ジムのスタッフさんや専門の運動トレーナーさん、管理栄養士さん、保健師さんのご協力のもと個別対応プログラムを組んでもらっていて、食事も自分で食べたものを写真に撮って見てもらい指導されているようです。プログラムは、各社員の健診結果をもとに考えられています。
最初は「行かされている感」があった社員も通っているうちに楽しくなったと聞いていますし、一定の成果が出ているので、この取り組みは始めてよかったです。効果の表れ方は、体重が落ちたり、筋肉がついて脂肪が落ちたりと人それぞれですが、生活習慣改善や運動促進のきっかけづくりはできたと思います。
実はそのジムは私がもともと通っていたジムで、会社で健康経営の取り組みをしていること、運動習慣の促進について相談したところ、提携できることになりました。当社の例がモデルになり、今ではそのジムの商品ラインナップにも加わったようです。当社も一定の効果が期待できる取り組みだとわかったので、また別の社員にも活用してもらおうと思っています。
消灯時間を定め、残業を削減
ーー先ほど、仕事が早く終わる日などに社員の方がジムを活用されているとお話がありました。残業の規制などもされているのでしょうか?
働き方改革の一環で、また、建設業は残業が生じやすい業種だというイメージチェンジを図るねらいもあって7、8年前に消灯時間を定めました。
水曜日は基本的に残業なしとしており、通常の消灯時間は毎日19時、水曜日は18時に設定しています。残業が必要な場合は事前申請と管理者の承認が必要です。納期・工期がありますので難しいところではありますが、毎週の経営執行会議で残業時間のデータをチェックして、残業が多い社員がいればすぐに対応しています。
法定で残業が許されているのが月に45時間までなのですが、建設業は現在のところ猶予されており、2024年から適用されます。適用開始前にきちんと対応できるよう、不要不急の業務削減やDX推進など、早めに働き方改革に取り組んでいる状況です。
月2回の「ヤマウラ通信」で家族にも情報発信
ーー社内報「ヤマウラ通信」についてもご紹介ください。
ヤマウラ通信は月に2回発行しており、社内の出来事や、健診に関する情報など健康の啓蒙になるようなコンテンツを載せています。
社員に渡すのではなく家庭に郵送していまして、ご家族で読んでいただくことで食事に関することなどに関心を持ち、皆さんで気を付けていただくというねらいもあります。社員本人よりもご家族の方が読み込んでくれている場合もあるようです。
社員食堂ではスマートミールの導入も

ーー食事面でのお取り組みはありますでしょうか。
この3年ほど、社員食堂で「スマートミール」という認証を得て、栄養バランスのとれたメニューを出しています。きちんと管理栄養士がメニューを考えてくれている食事です。
社員は通常のメニューももちろん選べるのですが、スマートミールを出すようになってからは、以前はご飯を大盛りにしていた人が量を減らすなど、皆さん食事にも気を遣い始めたように思います。
「目に見えない健康リスク」への対処も考えていきたい

ーー健康経営を推進されて、社内の変化をどう感じていらっしゃいますか?
当社はトップからもことあるごとに話をしてくれるので取り組みを進めやすいですし、健康に関する社員の意識はだいぶ変わってきたかと思います。ヘルスケアチャレンジで各社員が書く目標からもその変化を感じますね。
今後の課題としては、「一見健康そうな人」「健診で特に異常がない人」でも急に倒れてしまう事例があり得ますので、それをどう防ぐかという点があります。
やはり全員を対象に生活習慣の見直しを進めていくのですが、引き続き私たち推進側も勉強し、各種検査も最新のものを取り入れていくなどしていきたいですね。
また、部門を問わず管理者たちへの教育にも力を入れ、それぞれの職場単位でしっかり社員の健康を見ていける体制を作っていく必要があると思います。
ーー最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
私自身、以前は自分の健康にあまり気を遣っていませんでした。しかし健診結果に変化があったり、太ってしまったなと気づいたりしたことがきっかけで、ジムでの運動を始めたんです。
運動の効果が出てきて体もすっきりしてくると「もっと健康になりたい」という気持ちが強くなり、日常のさまざまな場面で健康を意識するようになりました。服のサイズが変わったことで、今までとは違うファッションにも興味が出てきたんですよ。
若い時には気づきませんでしたが、「健康っていいな」という気持ちが芽生えたことによって気持ちが若返り、毎日が楽しくなっています。「今はまだ大丈夫」と思っていらっしゃる方も、できれば早めに、できることから健康な体づくりに取り組まれてはいかがでしょうか。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社ヤマウラ
インタビュアー:青柳和香子