
工業用ガスや産業機器の販売、冷媒フロンガスの販売・回収・処理などを行なう京立商事株式会社。健康診断の100%受診や再検査・要治療者への受診勧奨などを健康宣言として掲げ、2018年より健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定を受けています。また、2021年・2022年と2年続けて、健康経営の取り組みが評価され「ブライト500」にも選ばれています。
今回は同社 代表取締役 宮川靖史さまに、健康経営優良法人の認定に至った経緯や、健康経営の施策についてお伺いしました。
大阪で工業用高圧ガス販売を行なう企業として創業

ーーまず御社の沿革や事業内容について教えてください。
宮川さん(以下、宮川):弊社は創業以来、大阪市内に事業所を構え、工業用の高圧ガス販売・供給とフロンガス処理事業、それらに付随する業務を行なっております。昨年2021年度に会社設立から70年を迎えました。
さまざまな製造現場で必要とされる高圧ガスの販売からスタートし、現在では工場で使われる機械や消耗品、インフラ設備の販売もしています。また、フロンガスの取り扱いに関連して、エアコンや冷凍・冷蔵庫の販売、設置も行ないます。
相次ぐ従業員の不調により健康経営を意識
ーー健康経営を始められたきっかけを教えてください。
宮川:健康経営というものを知って、認定取得に向けて動き出したのは5年前です。
比較的、年齢の高い社員が多い会社でしたが、病気が発覚して入院・手術が相次ぐ時期があり、危機感を覚えました。退院して復帰しても、同じ人がまた違う問題が見つかり再度入院することもありましたね。
その頃、新聞や雑誌、テレビなどの媒体で「健康経営」というキーワードを見かけるようになり、自分も意識していたところ、保険会社の方が企業の健康経営の支援もしていると聞き、認定制度の詳細を知って取得を目指しました。
禁煙やウォーキングを推奨して生活習慣の改善に取り組む
ーー従業員の病気が相次ぎ、健康課題はどの辺りにあったと思われますか?
宮川:気になったのは、喫煙者とBMI数値が高い人が多かったことですね。入院・手術が必要になった原因は、生活習慣病の延長上にある病気がほとんどだったと思います。喫煙とBMI数値に加えて、血圧や運動不足、食生活も含め、生活習慣の改善が必要かなと感じました。
ーーそういった課題に対して、取り組まれてきたことはありますか?
宮川:喫煙者の多さは前々から気になっており、喫煙ルールも緩い状態だったので、喫煙場所を決め、少しずつ止めてもらえるように取り組みました。また、非喫煙者に対して年1回、手当を支給するようにもしました。ただ、この手当が目的で自発的に禁煙したのはまだ1人だけで、あとは病気が原因で喫煙を止めた者が数名いる状況です。
運動不足の解消については、歩くのが手軽ですぐにできる方法かと思います。そこで、従業員に万歩計を配布して歩数報告してもらいウォーキングコンテストを実施しています。結果を集計し、順位によって賞金や商品を出すことで、運動習慣につながればと思います。
もちろん、健康診断は全員に受けてもらい、結果を確認しています。有所見となった人は個別に面談して、再検査や精密検査を促すようにしてきました。
ウォーキングでは各自のペースに合わせた評価方法を採用

ーー健康経営を意識されるようになり、ここ最近で取り組まれている施策はありますか?
宮川:健康経営の要件のなかに、食生活の支援も項目があるのですが、少しでも従業員の野菜不足を補えればと、冷蔵庫に紙パックの野菜ジュースを常備しています。
会社周辺には飲食店が少なく、近くのコンビニや毎日配達してくれているお弁当屋さんで昼食を調達する社員が多い状態です。昼食の内容を見ると野菜が少ないようで、野菜ジュースで少しでも補えればと、1本50円で飲めるようにしました。
野菜ジュースは社員35人に対して、月200本程度消費している状況で、それなりに役立っているのではないかと思います。
万歩計を配布してのウォーキングコンテストも続けていますが、歩く人・歩かない人の差が大きく、表彰対象の上位者が固定される問題がありました。それぞれの生活パターンや仕事内容によって、歩く頻度は違います。単純に歩数の多さだけで順位付けするのは違うかなとも思い、評価方法を変えました。
現在は、各自のこれまでの歩数データから基準となる歩数を決め、それよりも多く歩けているかで評価しています。歩数の基準が5,000歩の人がいたとして、基準よりも一日の歩数が1割アップしたら1ポイント、2割アップしたら2ポイントというように加点されます。獲得したポイント数によって、パスタソースなどの景品から選ぶことができます。
このやり方に変えてまだ1期目が終わったところですが、今後もこの方法で実施し、従業員がそれぞれのペースで歩数を増やせたらと思います。
取り組みが感染症予防にも効果を発揮
ーー取り組まれたことで得られた効果や、従業員からの反響はいかがでしたか?
宮川:健康経営優良法人には感染症予防についての項目もありましたが、弊社は以前から予防や感染を広げないことを意識していたため、新型コロナウイルスが最初に話題になったときも、スムーズに対応できていたと感じています。広がりだした初期に、社内からの感染者を出さずにいられたのは、健康経営に取り組んで、従業員の意識が高まっていたからだと思います。
反響としては、会社として何かを始めると、良い内容・大変な内容にかかわらず、みんな話題にしてくれるようです。会社が取り組んでいることとして、みんな認識してくれているのでしょう。
また、タバコを吸い続けている従業員に対して「もう止めたら」と言ってくれる従業員も現れました。これも取り組みの効果・反響だと思います。
生活習慣を見直して従業員の肥満を減らしたい

ーー健康経営について、今後の計画や注力されていくことがありましたらお聞かせください。
宮川:今後の注力したい事柄としては、BMI25.0を超える、いわゆる肥満とされる従業員を減らすことです。これは目標として掲げており、1人でも減らせるよう会社として働きかけていきたいと考えています。
具体的には、運動の増進と食生活の改善が重要です。ここを軸にして考え、各自の健康体重に近づけるようにしていきたいのですが、実際にどういうやり方が良いかは検討中です。
自分自身は糖質制限に取り組んだところ、理想値とされるBMI22.0前後になり、体重もピーク時から10キロぐらい減りました。こうした事例を身近な成功例として、社内に伝えられたらと思います。
従業員の健康はその家族の生活にも影響するもの
ーー健康に関心のある読者や、企業の健康経営の担当者に向けたメッセージをお願いします。
宮川:健康の維持は、自分のためだけではないと感じています。
実は昨年、私の妻が病気で倒れ、手術に入院、リハビリと、自宅に戻れるまで7カ月くらいかかりました。その間、入院の準備や妻の身の回りのことで、自分の仕事にも影響が出ました。幸い、ひどい麻痺が残ることはなく、リハビリを終えた妻は、自分のことは自分でできる状態で戻ってきました。しかし、場合によっては車椅子生活や、つきっきりで世話が必要になっていたかもしれません。
このことから、誰か健康を害せば、本人だけでなくその家族の生活にも大きな影響を与えるのだと強く実感しました。健康は何ものにも代え難い、誰にとっても大事なものです。健康でなければ、仕事について考えられなくなります。
企業や経営者は、従業員の健康はメンタル面を含め、しっかり見ていく必要があると思います。そして、従業員の家族も含めて健康に過ごせるように、健康経営は大切な取り組みであると考えます。
また、会社は従業員に健康診断を受けさせる義務がありますが、費用と時間をかけている以上、その結果は最大限活用しましょう。弊社では健康診断の受診率100%は当たり前と思っていますし、その結果は経営者自身で全員分をしっかり確認して、再受診もフォローしています。
診断結果で引っかかることがあれば、それは貴重なアラームです。診断結果をチェックしない、フォローしないでは、費用の無駄遣いではないでしょうか。健康診断で見つかったことを最大限活用し、従業員の健康に役立ててください。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:京立商事株式会社
インタビュアー:塩野実莉