
フィットネスをはじめとする運動施設を運営し、アプリを使ったオンライントレーニングも展開している株式会社東急スポーツオアシス。人々の健やかな生活を経営理念に掲げ、企業向けの健康経営のコンサル事業も行なっています。また、心と体の健康を育む企業として、2017年度から6年連続で健康経営優良法人の認定も取得しました。
今回は同社にて健康経営に取り組む清水さまに、施策内容や課題に感じていることなどをお伺いしました。
フィットネスクラブやアプリ、オンライントレーニングなどを展開

ーーまずは御社の沿革や、おもな事業内容について教えてください。
清水さん(以下、清水):弊社は創業から35年以上、フィットネスクラブを運営しており、アプリやICTを用いた最先端の総合型フィットネスクラブを展開する企業です。現在、首都圏・近畿圏内に約40の施設があります。
ここ数年はその他の事業も精力的に取り組み、キッズスクールや高齢者向けの地域密着型コミュニケーションクラブの運営、自宅で使えるトレーニンググッズの販売、オンラインパーソナルトレーニングなど幅広く事業を展開しています。
健康を提供する企業としての使命や課題
ーー健康経営を始められたきっかけや、どのように推進されてきたかを教えてください。
清水:弊社は健康経営に関連する商品を、BtoB事業として販売しています。そのような健康を提供する会社として、従業員の健康を考え、大切にしていくのは優先すべきことです。こういった背景から健康経営に取り組みはじめ、2017年度より健康経営優良法人の認定をいただいております。
当初は「そもそも健康経営とは何か」を考えるところから始まり、上長や経営層とも相談してグループ内の福利厚生会社を紹介してもらうなど、情報収集からスタートしました。
そして、まずはトップからの健康宣言を実施し、従業員や社外に向けての発信を行ないました。会社として従業員を思いやる姿勢を打ち出し、一人ひとりの健康が大切であるという点を従業員に意識してもらうためです。
ーー取り組まれていくなかで、従業員の健康について、課題に感じていた部分はありますか?
清水:弊社は健康を提供する会社であり、「健康」というキーワードに対して社内の感度は非常に高い状態です。しかし、そのような立場でありながら喫煙や運動不足といった、不健康な要素を持っている従業員がいるのも事実です。そのため、会社主導で従業員の意識や行動の変化を促す、きっかけ作りが必要ではないかと感じていました。
ランチタイムを使った気軽な社内セミナーで従業員が学ぶ機会に

ーー実際に取り組まれている施策を教えてください。
清水:具体的な施策としては、ランチタイムに開催するオンラインセミナーや、万歩計を使った「歩こうイベント」があります。
オンラインセミナーでは、喫煙の弊害と禁煙の効果や女性特有の心身の問題、シニア世代における定年退職後の人生設計などさまざまなテーマを取り上げています。また、社内に管理栄養士もおりますので、栄養や食事についてのセミナーも行ないました。
ランチタイムを使った、食事をしながら気軽に参加できるセミナーだったこともあり、参加者も多かったです。経営層も参加し、社内で一定の評価を得られたかと思います。
「歩こうイベント」は1カ月間の歩数を社内で競い合うもので、グループ内の福利厚生会社ともタイアップし、順位によって賞金が出るようにしました。イベントとして盛り上がるよう、途中経過の報告を入れ、楽しんでもらえるよう工夫しながら実施しています。こちらも経営層を含めて参加者が多く、社内でも注目されています。
それから、禁煙のきっかけ作りになればと、弊社の「東急」にちなんで毎月19日(とう・きゅう)を禁煙デーに設定しています。また、1カ月間の禁煙イベントも実施しました。禁煙イベントではタバコの代わりになるようガムを配布し、1カ月間挑戦してもらうようにしたのですが、周知徹底できていなかったからか、あまり参加申し込みがなかったのは次回に活かせる反省点だと感じています。
通常業務と並行しながら健康経営を推進する大変さ

ーー健康経営に取り組まれるなかで、大変だったことはありますか?
清水:健康経営の重要性は社内でも認識されているものの、それに特化した専門部署がない状態です。そのため、担当者は本来の業務と並行して取り組まなければならず、片手間なやり方にならないようにするのは大変でした。
施策を検討したり周知したりといった活動に使える時間をいかにして捻出するか、効率よく推進できるかは、担当者として課題に感じています。
ランチタイムのセミナーでも、従業員の興味を引くテーマを用意し、スケジューリングして継続的に開催していくのは苦労したところです。
健康経営を推進していくうえでは、なるべく多くの従業員に関わってもらう必要があると思います。それには、上司や経営層も巻き込んでいく必要があり、経営会議の場でも健康経営の取り組みを発表する時間を設け、重要性を伝えてきました。
ーーこれまでの取り組みに対する、従業員からの反響はいかがでしょうか?
清水:弊社事業にも関わるテーマであり、健康について意識してくれている土壌はあるものの、スタートしたばかりの頃は反応が薄かったかもしれません。経営会議で発信して経営層に周知し、社内掲示板にも情報を掲載したことで、少しずつ認知が広がったように感じます。
フィットネスなどの店舗にいるスタッフは普段から健康を気にしていますが、本社スタッフは感度が違うこともあり、ランチタイムのオンラインセミナーが健康について学ぶ良い機会になったようです。
ーー健康経営に取り組まれてきたなかで、一番盛り上がったことは何ですか?
清水:健康経営優良法人の大規模法人部門で、優れた企業に与えられる「ホワイト500」を目指そうとしたときは、社内で健康経営チームを立ち上げ、チームメンバーで盛り上がっていました。総務部とも連携してこまめにミーティングを実施し、現在はどの段階にあるのか、目標までに何が必要かを考え、1年間段階的に取り組んでいきました。
BtoB事業を活性化して前向きな健康経営をお手伝い

ーー健康経営について、今後の計画や目標がありましたら教えてください。
清水:従業員の健康が企業の健康となりますので、社内の取り組みは今後も大切にしていきたいと思います。
そして、健康経営についてのBtoB事業を、もっと活性化させる必要性も感じています。多くの方々に、前向きで積極的な健康経営を実践してもらえるよう、事業の認知を図ってサービスを展開させていきたいです。社内の取り組みにおける試行錯誤が、より良いサービスの提供にもつながると思っています。
また、女性に見られる更年期障害やPMS(月経前症候群)といった健康課題に焦点を当てた施策も考えています。具体的な内容は検討段階ですが、チームを立ち上げて積極的に取り組み、将来的にはビジネスとしても展開できるよう目指しています。
ーー健康に関心のある読者や企業で健康経営を担当されている方へのメッセージをお願いします。
清水:心と体の健康が満たされてこそ、人生は豊かになるものだと信じています。そして、健康寿命を延ばして、豊かな人生を送ってほしいと思いますので、弊社は多くの方に「健康」というキーワードを注目してもらえるよう、今後も取り組んで参ります。そうした健康に対して前向きに、積極的に取り組むことが、企業の健康につながっていければと思います。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社東急スポーツオアシス
インタビュアー:塩野実莉