
自動車、航空・宇宙、FA・ロボティクス分野をはじめ、さまざまな分野で最先端技術を開発、提供する株式会社タマディック。2017年には「株式会社タマディック健康宣言」を制定し、健康経営にも注力してきました。「健康経営優良法人2022」では優良な上位企業として「ブライト500」の認定も受けています。
今回は同社 代表取締役社長 森實敏彦さまに、健康経営の取り組みやユニークな施策として多方面から注目を集めている自社ビル内のサウナ設置などについて、お話をお伺いしました。
事業のSDGs化も進める設計エンジニアリング会社
ーーまずは御社の事業内容や沿革について教えてください。
森實さん(以下、森實):弊社は1959年設立の、設計エンジニアリング会社です。航空機の設計から始まり、現在は自動車、航空機、宇宙、ロボット、電気、精密機器など、さまざまな製造分野のメーカーに技術提供しています。会社規模は従業員数が1,000名を超え、業界のなかでは歴史ある企業として、信頼、品質ともに高く評価されていると自負しています。
最近は事業内容のSDGs化も進めており、持続可能な社会に貢献できる企業を目指しています。具体的には事業方針を転換させるべく、カーボンニュートラル関連事業の比率を上げる目標を掲げました。2021年のカーボンニュートラル関連事業は、全体比率の60%を超えたところです。2030年までには、これを75%へ引き上げるよう目指しています。
ーー御社は「健康経営優良法人」の認定を受け「ブライト500」にもなっていますが、取得を目指した経緯や背景にはどういったものがありましたか?
森實:従業員が健康に働き、安心して生活できるようにするのは、会社の使命であると弊社は考えてきました。それが会社にとって重要な資産にもなると認識しています。
会社の成長とともに従業員の生活向上を大きなテーマとし、従業員が安全に、健康に暮らせる施策に以前から取り組んできました。現在はこのテーマも進化させ、残業時間の削減や有給消化率の向上、男性の育児休暇の取得強化にも力を入れています。
安全衛生活動も行なってきましたし、2013年には労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格「OHSAS 18001」(現在はISO 45001)も取得しています。こうした経緯からそれまでに取り組んできた事柄が評価され、「健康経営優良法人」の認定に至り、「ブライト500」も取得できました。
禁煙・ダイエット・運動の要素を絡めた健康チャレンジ

ーー実際に行なわれている施策について教えてください。
森實:まず、従業員の自発的な健康づくりのため、楽しく前向きに取り組める「健康チャレンジ! ~健康活動サポート~」(以下「健康チャレンジ!」)を実施しています。
以前は、禁煙外来費用などを会社が負担し、禁煙に成功すると5万円もらえる「禁煙サポート制度」を実施していました。これにより、社内の喫煙者率は25%から10%台にまで下がっています。しかし、「禁煙サポート制度」では喫煙者しか参加できず、そのほかの従業員にメリットがありません。そこで社内のチームや保健師さんと一緒になって考えた結果、ダイエットや運動習慣の要素を取り入れ、全員が何らかの形で参加できる内容に変えたものが「健康チャレンジ!」です。
「健康チャレンジ!」では体重100g減につき100円、ウエスト1cm減につき1,000円の賞金が出ます。毎日歩く目標の達成者や禁煙達成者にも賞金を出し、従業員全員が参加できるようにしています。昨年の参加率は20%、今年は30%と参加人数も増えている状態です。自主的に健康を意識した活動をしている社員が3人に1人いる状態になれば、良い影響が広がっていくと考えています。
私自身も「健康チャレンジ!」に参加しており、昨年は体重とウエストの両方で3万円ほど賞金を獲得しました。社内SNSでダイエットの進捗状況も発表し、従業員への周知・啓発に活用しています。

この社内SNSは総務や保健師さんにも協力してもらい、「健康チャレンジ!」意外でも健康啓発に利用しています。社内報では、私の健康活動を紹介してもらったり、社内の取り組みを特集したりと、さまざまな形で従業員への周知にも取り組んでいます。
数年前になりますが、事務所内のゴミ箱を見ると、糖度やカフェインの多い飲料のペットボトルゴミが目立ちました。設計は頭を使う仕事ですし、疲れたら糖分が欲しくなるのもわかりますが、習慣化しているのではと感じました。
習慣を改めるきっかけとなるよう、自社ビルを建築する際に自動販売機をなくし、質の良いコーヒーをブラックで飲めるようにコーヒーサーバーと上質な豆を設置し、また水やノンカフェインのお茶なども無料で飲めるようにしています。従業員もこの状態に慣れてきているようで、水筒を持参する社員も増えましたし、ペットボトルのゴミも減らせました。
また、来年4月からは1,000人以上を雇用する事業主には、育児休暇取得率の公表義務があります。弊社の女性従業員は100%取得し、出産を理由に退職する人はほぼいません。
男性従業員も取得期間はさまざまですが、ほとんどが育児休暇を取得しており、対象者にはしっかりと制度説明をして、上司も「そんなに短くていいのか、ちゃんと必要な期間休め」と言う環境になっています。昔なら男は仕事一筋で家庭を顧みない、という時代もありましたが、今はそうではありません。生産性の高い、良い仕事をしているなら、家庭も大事にする従業員であってほしいですし、従業員を大切にできる企業でありたいですね。
自社ビルにフィンランド式の本格サウナを設置

ーー御社は従業員の健康促進を目的に、サウナを設置されているそうですが、どういった経緯で設置されたのでしょうか?
森實:私自身が、とある漫画でサウナの魅力に目覚め、サウナのことを学びはじめたことがきっかけです。サウナに入ってみたところ、疲れが取れて、とても快適に効率よく動けるようになったと感じました。この5年くらいはサウナが習慣になり、健康診断結果も向上しています。もちろん、サウナの効果だけではないと思いますが、生活の一部に取り入れたのが良い影響を与えたと思っています。
だから、従業員にもサウナの有用性を知ってほしいし、健康づくりに役立ててもらいたいと思ったのですが、毎回サウナ施設に連れて行くわけにもいきません。従業員が日常的にサウナに入る生活をしてもらう方法として考えた結果、社内に設置することを決めました。
お酒を飲んでストレスを発散するのも一つの方法ですが、お金もかかりますし、酔うと話したことを忘れてしまうこともあるでしょう。サウナなら正しく入ればマイナス要素はないと思いますし、入りながら従業員同士のコミュニケーションの場にもなります。
ーーサウナ設置に対して、従業員の反応はいかがでしたか?
森實:喜ぶ社員もいましたが、一部取締役も含め、必要性を感じないという人もいました。これは私自身の説明不足もありますが、やはり体験しないとサウナの良さは理解しづらいものです。事前にみんなを巻き込んで、サウナに入ってからその話を出せば良かったと後悔しているところです。
ーー従業員の皆さんは、サウナをどのようにして利用されていますか?
森實:仕事終わりにサウナに入って帰る従業員が多いです。弊社はフレックスタイム制を導入しており、10時から15時をコアタイムとして設定しています。コアタイムが終わる15時以降でしたら、予約してサウナに入れます。
サウナは基本的に予約制で運用し、曜日によって男女を分けています。月水金は男性、火木は女性といった具合です。
職場仲間数人で集まって利用するほか、社内の部活動帰りにみんなでサウナに入って、テラスで軽い懇親会をして帰るケースもあります。新人の歓迎会を兼ねて一緒に入り、リラックスしながらコミュニケーションを取る場にもなっています。
こうしたサウナの使い方は、フィンランドで取り入れられており、良い企業ほど自社にサウナを持っています。実際にフィンランドの企業を見学して、現地のサウナを学んできました。ビルの竣工式には駐日フィンランド大使に祝辞をいただき、公認サウナになっています。
ーーサウナ設置により、従業員の健康状態の変化や反響はありましたか?
森實:サウナは今年1月に設置したばかりで、まだ健康状態に変化が見られる段階ではありません。しかし、穏やかなコミュニケーションの場として機能しているようで、サウナに入ってから帰る習慣ができている社員もいます。
水曜日はノー残業デーにしており、終業後にサウナに入って、普段接点のない他部署の従業員同士が交流するきっかけにもなっているようです。こうしたつながりが生まれることで、精神的な安定につながっていると感じます。
反響としては、社員はもちろん他社の方もサウナ設置に興味を持っていただいているようで、見学したいとのお問い合せもいただいています。サウナが社員の健康を意識した会社方針や、社内コミュニケーションを重視した会社であることの象徴になるのではと思っています。
「ブライト500」に選ばれた際はサウナがない状態でしたので、次の認定では健康啓発や外部への発信に関連付けて評価されるポイントになればとも思います。
再受診率の対象者を減らしたい
ーー健康経営に取り組むなかで、何か大変だったことはありますか?
森實:健康を意識しない従業員が、どうすれば関心を持って行動してくれるようになるかは課題に感じるところです。会社から働きかけなくても、意識のある人は自然と健康を考えた食事を取り、運動もしてくれます。健康への意識は、家庭環境や交友関係の影響もあり、そうした意識が低い人の行動を変えていくのは一番難しいところです。
「健康チャレンジ!」に取り組んだ結果、喫煙率は下がりましたが、それでもまだ10数%の社員はタバコを吸っています。自販機を撤去したことで食生活を見直すきっかけになった人もいると思いますが、コンビニで適当に食事を買って済ませる人もいます。そういったことをあらためてもらうには、本人の意識を変えてもらうしかないですし、強制できませんから、難しいですね。
ーー健康経営について、今後の計画や目標、注力されていくことがありましたらお聞かせください。
森實:現在取り組んでいる活動は継続し、内容を強化できればと思います。「健康チャレンジ!」の参加率は今年30%でしたが、来年は40%を目指したいですね。
そして、将来的には二次健診の対象となる従業員を減らし、健康な従業員の比率を上げることを大きな目標とし、これからも取り組みたいと考えています。
健康診断後の再受診率を70%以上にと目標を掲げていますが、そもそもその対象となる人を減らす、二次健診に行く前の段階を目指したいと思っています。健康を害してしまった従業員へのサポートもしていきますが、その前に病気予防、健康でいることも大切です。健康でいることが最大の予防策であり、それは従業員の幸せや、会社の生産性・持続性の面でも重要なことです。
健康経営は一時的な活動ではなく事業の一部として

ーーこれから健康経営に取り組む企業や、健康に関心のある読者へのメッセージをお願いします。
森實:魅力ある企業になるには、3つの軸が重要だと考えています。1つは事業の成長性を上げていくこと。これは、企業活動をするうえで当然のことでしょう。もう1つは、企業として環境や社会に対する責任を果たすこと。そして、最後の1つは従業員にとって、働きやすい企業であり続けることです。人生にはさまざまな転機が訪れ、生活が変化するときもあります。そのような場合も従業員が健康で働き続けられる職場環境を整えるのも企業として大切です。
個人的な意見になりますが、健康経営は一つの活動ではなく、事業の軸に組み込むことで、会社の成長につながります。自然と働きたいといってくれる人が集まる、良い会社にしていけるのではないでしょうか。
また、自社にサウナを作ろうと考える企業さまがいらっしゃいましたら、ぜひ弊社までお越しください。資料を読み込んで検討するよりも、一度弊社のサウナを利用いただいて、効果を実感してもらうのが早いと思います。できる限り、私自らご案内しますので、お早めにご連絡ください。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社タマディック
インタビュアー:朝本麻衣子