株式会社坂口製作所は、新幹線の部品など工業用の各種アルミステンレス製品の設計から製造、加工、販売まで行なう企業です。
2018年に健康経営優良法人の認定を取得し、2021年から2年連続で健康経営優良法人の上位500社にしか与えられないブライト500の認定も受けています。
今回は同社の代表取締役 坂口清信さんにお話を伺いました。
他社からの誘いをきっかけに取り組みを開始、2018年に認定取得
ーーまずは御社の事業内容や沿革について教えてください。
坂口さん(以下、坂口):弊社は、工業用の各種アルミステンレス製品の設計、製造、加工、販売をしている会社です。新幹線の部品から高速道路の電光表示板、消防車のタンク、選挙の投票箱など、幅広い産業分野にさまざまな製品を納めています。1951年に私の祖父が大阪で開業し、昨年で創業70周年を迎えることができました。現在社員数は、大阪本社が12名、工場が70名となっています。
ーー健康経営を始められたきっかけを教えてください。
坂口:中小企業経営者が集まる大坂府中小企業家同友会に所属しているのですが、会員さんに健康経営優良法人を一緒に取りませんかとお誘いいただいたのがきっかけです。当時は、健康経営という言葉も健康経営優良法人の制度も知らない状態でした。2017年にお誘いいただいた会社さんと弊社ともう1社の3社で勉強会を立ち上げて申請書の書き方などを一緒に勉強し、2018年に認定を取得したのがスタートになります。
ーー健康経営を始めるにあたり、改善が必要だと感じていた点はありますか?
坂口:長時間残業が常態化していて、何とかしないといけないと思っていました。業務量の多さや人手不足もありましたが、本来必要でない残業も多くありました。せっかく健康経営に取り組むのであれば、残業の改善にも注力していこうと考えていました。
また、高齢の社員も多く腰痛などに悩んでいる声もあり、改善が必要だと感じていましたね。
既存の課題を一つずつ解決
ーー具体的な施策を教えてください。
坂口:残業時間を減らすために従来のタイムカードを、指紋認証式のものに変更しました。リアルタイムで誰がどれくらい残業を生んでいるかわかるようになり、残業時間が増えてきている方に対して仕事を別の人に回して残業はあまりしないようにと的確に指示できるようになったのは大きいと思います。
腰痛などの問題に対しては、作業負荷の改善を進めています。無理のない作業姿勢で作業できるように作業用の治具を自社で作るなど、作業がしやすくなるように考えて取り組んでいます。例えば、目が疲れるという声があり、作業の負担を減らし見やすくするために小さなスタンドライトをつけました。シンプルなことですが、細かな改善をしています。
サークル活動でコミュニケーションが活発に
ーー2018年に健康経営優良法人の認定を受けてから継続的に健康経営に取り組まれていますが、初年度から取り組みに変化はありますか?
坂口:社員同士のコミュニケーションを活性化させるため、今年の4月からサークル活動を始めました。自主的に5人集まったらサークルとして認めていて、活動に対して補助もだしています。あとは、年間の休業日数も徐々に増やしていますし、禁煙対策として自社で分煙ブースを作り本社と工場に設置しました。
ーーサークル活動をスタートして、社内の変化は感じますか?
坂口:そうですね。社員さんが結構サークル制度を活用してくれていて、今はウォーキングサークルや釣りサークル、バイクと自転車のサークルが立ち上がっています。ウォーキングサークルは奈良へウォーキングに行ったそうで、コミュニケーションが活性化している気がします。
アプリの活用で離れていても社員一体となった取り組みが可能に
ーー他には何か取り組まれていることはありますか?
坂口:アプリを使って他社と競い合う、ウォーキングラリーに参加しました。弊社は本社が大阪、工場が和歌山にあり、社員みんなで取り組めるイベントが簡単に実施しにくい状況です。でも、アプリを使うことで本社の社員と工場の社員でチームをつくり、みんなで一体となって取り組めました。
参加している全員の歩数が毎日でるのですが、私は最初チームの足を引っ張っている状態でした。悪いなと思い毎日会社に歩いてきたり休みの日にも歩き回ったりしていると、社員も社長にだけは負けたくないと頑張って、どんどん全体の歩数が上がっていきましたね。その結果、会社としても上位に入り、とても盛り上がりましたね。
ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったと感じる点はありますか?
坂口:本社と工場が分かれていることで、一体感をだすのが難しいです。アプリなども活用しながら、会社全体として取り組めるように頑張っています。
さまざまな形で健康経営がプラスに働いている
ーー健康経営に取り組んで、良かったと思うことやメリットと感じることはありますか?
坂口:良かったのは、社員同士のコミュニケーションが活性化したこと、生産性が上がったことです。問題となっていた残業時間も減ってきました。
それから、就職説明会で健康経営に取り組んでいることをPRしているのですが、学生さんにすごく興味を持ってもらえます。学生さんの話を聞いていると、給料などだけではなく働き方も含めて会社を評価されていると感じますね。 健康経営は採用活動においても、すごく大きなPRになると感じています。
ーー健康経営について、今後の目標や展望がありましたらお聞かせください。
坂口:自社のレベルアップはもちろんのこと、中小企業全体に健康経営を広げていきたいです。実際にホームページを通して発信を行なっているほか、所属する中小企業家同友会のなかでもセミナーを開き自社の取り組みについて紹介させていただいています。
中小企業はブラック企業というイメージを持たれることも多いのですが、健康経営の取り組みを広めることで良いイメージが広がっていけばいいなと思っています。
ーー健康経営に興味はあるものの、取り組みを始めるのにハードルを感じている企業もいらっしゃるのでしょうか?
坂口:健康経営優良法人と聞くだけで、すごくハードルが高いと思っている会社はすごく多いです。ですが、健康経営優良法人の申請はかなり簡素化されていて、実はハードルは高くありません。コストもほとんどかからないですし、何か認定取得に取り組むのであれば最初の取り組みとして健康経営は本当におすすめです。
ーー健康に関心のある読者や、健康経営に取り組む企業の担当者へメッセージをお願いします。
坂口:社員が健康になると、生産性が上がり社員の定着率も上がります。健康経営は採用活動でもすごくPRポイントになりますし、すぐに始めることをおすすめします。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社坂口製作所
インタビュアー:朝本麻衣子
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