
サイショウ・エクスプレス株式会社は東京都江東区に本社を構え、関東圏を中心に運送業を営む会社です。2017年から健康経営をスタートさせ、2022年度の「ブライト500」にも認定されています。
今回は、健康経営の取り組みについてサイショウ・エクスプレス株式会社の代表取締役社長である齋藤 敦士さんにお話をお伺いしました。
物流業界の新しい3Kを目指す「サイショウ・エクスプレス株式会社」

ーー本日はよろしくお願いします。まずは、御社の沿革やおもな事業内容などを教えてください。
齋藤:弊社は昭和30年(1955年)に創業し、一般貨物運送と倉庫業を営む会社です。取引先はイベント関係と建設関係のお客様が半々ぐらいです。関東圏を中心に31台で配送しており、現在(2022年11月時点)の従業員は29名になります。
弊社では「きれい・健康・かっこいい」という物流業界の新3Kを掲げておりまして、従業員が健康的に気持ちよく働ける環境づくりを行ない、従業員の家族も安心してもらえる企業を目指しています。
ーー御社はブライト500の認定を受けていると思うのですが、健康経営を始められたきっかけを教えてください。
齋藤:健康経営への取り組みは2017年1月からスタートしているのですが、きっかけは大きく分けて二つあります。
まず一つ目は従業員の病気で、毎年のように大きな病気に罹る従業員が出ていて、気になっていたことがあります。
二つ目は、私自身の話になるのですが、私の母と義理の母が立て続けに亡くなったということです。私の母は弊社で経理や健康管理をやっていまして、そんな母が亡くなり、会社を守っていかないといけないという責任を強く感じました。
健康に対していろいろな思いが積み重なっていた時期に、新聞で健康経営というものを知り、そこからセミナーなどで私なりに知見を深めていきました。
ーー健康状態に対して感じていた課題などはあるのでしょうか?
齋藤:健康状態ということではないのですが、業界全体として健康に対する意識が遅れていることに課題を感じていました。
私は会社を引き継ぐ前に大手運送会社で勤めていたのですが、当時は上司から「プロドライバーは健康管理が大事」ということを指導されていました。
しかし、その上司もタバコを吸っていましたし、私も当時は若かったので、そこまで健康に対する意識があまりありませんでした。2年半後くらいに弊社に入社してドライバーから始めましたが、やはり当時はまだ健康に対する意識の甘さというのがあったと思います。
今では安全運転と健康の関係って当たり前かもしれませんが、当時は安全運転をするために健康が大切だとわかっていながらも、業界全体がすごく疎いというか遅れているという感覚がありましたね。
弊社としても安全運転と健康の関係性を理解していながら、健康への取り組みに着手できていなかったことは課題に感じていました。
従業員の健康を医療面でサポートする「SAISHO健康改善プロジェクト」

ーー実際の施策について詳しく教えてください。
齋藤:1年目はウォーキング活動や健康志向のものを社内に設置するなど、私一人で取り組みをしていたのですが、始めてから7、8カ月くらいで限界を感じました。
健康経営の取り組みをするのであれば医療面からのアプローチをしなくてはいけないと感じていたところ、紹介で健康管理士と出会い、その方と2人で「SAISHO健康改善プロジェクト」というのを作りました。
現在は私が旗振りになって、健康サブリーダー2名と健康管理士を加え、管理栄養士、産業医を専任して健康プロジェクトチームを作り、医療面で従業員の健康をサポートできる体制を整えています。
ーー健康管理士などの専門家が加わったことで変わったことはありますか?
齋藤:健康診断の受診はもちろんですが、再検査の受診率も100%を目指して取り組みを行なっています。健康診断からデータを拾い、スクリーニングして再検査の方には必ず、メールを送っています。本当にしつこいくらい通知を送っているので、現在は再検率も100%が続いている状態です。
また定期的な健康面談を健康管理士や管理栄養士に行なってもらっています。現在はオンラインでも面談ができるようになったので、必要な方は年2回実施しています。健康経営の取り組みについては大きく前進したと実感していますね。
同業4社と協力して健康経営に取り組む「合同安全衛生委員会」

ーーほかにも実施している取り組みがあれば教えてください。
齋藤:健康プロジェクトチームの取り組みとして、同業4社で合同安全衛生委員会というのを組織して、毎月行なっています。
弊社のような中小企業だと、1社で産業医を選任するのはコスト的に難しくなってしまうので、弊社を含めた同業4社でシェアして産業医による職場巡視を実施するほか、同業者で勉強会も実施していますね。
同業者との勉強会や健康診断の結果、健康面談から業界として抱えている健康の課題を抽出できるようになったので、いろいろな展開ができるようになったのも大きいと感じています。
例えば、ドライバーであれば腰痛の悩みが多いので、腰痛予防の専門家による勉強会を実施しています。また、運輸業は食環境が厳しくなるので、管理栄養士によるコンビニ食の選び方の講習なども実施しています。
ーー合同で取り組むメリットや、他社との違いを感じたことなどあれば教えてください。
齋藤:会社の規模は違っても、抱えている悩みは同じということがわかったのはメリットだと感じています。例えばドライバーは糖尿病や高血圧、腰痛の悩みを持っている方が多いのですが、こういった問題は弊社だけではないということがわかったので、課題が明確になりましたね。
また、違いという点では、弊社のように人数が少ないからこそ従業員一人ひとりに手厚く対処できるということを感じています。
やはり規模の大きな会社ほど課題が多いなと……。ただ、会社の規模に関係なく、健康経営に対するトップの判断や意志が大切だと考えています。明確に判断できなければ進まないので、この点はどこの会社でも同じだと思います。
ーー取り組みによる効果、従業員の皆さまからの反響はいかがでしょうか?
齋藤:健康面談時に、「健康プロジェクトはどうか」と聞いているのですが、6年目にしてほとんどのドライバーと従業員から理解を得られました。最初は「何で私の健康を?」というようなマイナスな意見も多かったのですが、コツコツやってきた結果が実を結んだと感じています。
あと、弊社ではホームページのほかに、ブログやSNSで健康経営の取り組みを発信しているのですが、入社してくる方も健康志向であったり弊社の方針に共感してくれたりする方が増えてきたと感じています。
例えば、今まで応募がなかった医療業界やホテル業界の方もいたりします。弊社も労働時間は長くなってしまうのですが、厳しい環境で働いてきた方は魅力を感じてくれているのかなと思います。
健康経営を軸に安全運転・働き方改革にも取り組んでいきたい

ーー新しい「3K」ということを掲げていると思いますが、働き方などでも力を入れているところはありますか?
齋藤:基本的に弊社は健康経営を軸にしていろいろな取り組みを行なっています。働き方とは違うかもしれませんが、健康経営と安全運転をつなげた新しい形の取り組みも始めていまして、たとえば「ウォーキング+整備講習会」などですね。
人の健康はもちろんですが、私たちの仕事は車も健康でなくてはいけないということで、安全と健康をつなげながら取り組みを進めています。
従業員にとっては新しいことになるので、最初は抵抗があったようですが、今では新しいことに対する免疫になっていると思います。何が起こるかわからない時代なので、新しい試みに恐怖心がなく、すぐに対応・変化できる体制というのは弊社の強みになっていると考えています。
ーー健康経営について、今後の計画や注力されていくことがありましたらお聞かせください。
齋藤:健康経営の取り組みのなかで、弊社の最後の課題と感じているのが時間外労働です。そこに関係するのですが、業界内で2024年問題と呼ばれているものに、現在着手している状況です。
同業他社との価格競争やガソリン代の高騰、人件費の増加などの経営面の問題であったり、デジタル化に対応した従業員教育であったり、今までもいろいろなことを変えながらやってきました。
今年は社労士の方の力も借りて、2024年問題に向けた生産性の向上を課題に、労働時間を削減しながら現在の給料を維持、または上げていくことを目指しています。
業界的にドライバーの募集も非常に厳しい状況なので、現在の従業員が魅力を感じてくれるような環境づくりに取り組んでいるところです。
ーー健康に関心のある読者へのメッセージをお願いします。
齋藤:私自身もそうですが、健康経営初心者の方は、取り組みを進めていく過程で行き詰まることがあると思います。
弊社はブライト500を取得している他社と勉強会を実施して、一緒に健康経営を進めているのですが、何か困ったときに相談できる場があるといいと思います。
また、健康経営はトップの取り組みに対する強い意志がないと難しく、トップから健康経営をただ任された方は、行き詰まることが多いと感じています。
やはりブライト500を取得している会社の話を聞くと、トップが直接関わっていたり、トップと担当者のラインがしっかり組まれていて、意思の疎通が取れていたりします。
会社を持続する、継続するために健康経営は必要だと思うので、まだ取り組んでいない会社はぜひ取り組みをスタートしてほしいです。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:サイショウ・エクスプレス株式会社
インタビュアー:朝本麻衣子
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