
菊地光学精工株式会社は、光学部品を自社で一貫して製造できる技術を持つ有数の企業です。
長きにわたり積極的に健康への取り組みを実施してきました。2021年に健康宣言を行ない、2022年には初の申請にして健康経営優良法人のなかでも上位500社にしか与えられないブライト500の認定を受けました。
今回は同社の代表取締役社長 菊地さん、総務部 内田さん、東田さんにお話を伺いました。
健康への取り組みを続けていくなかで、健康経営の存在を知り「健康宣言」を実施

ーー本日はよろしくお願いします。まずは、御社の事業内容と沿革についてお聞かせください。
菊地さん(以下、菊地):弊社は光学部品の製造が一貫して行なえる、数少ない企業です。もともとは私の祖父がレンズを作っていて、現在は医療機器、測定機器といった装置のなかに組まれる光学レンズ、プリズム、フィルターといったガラス部品を製造しています。従業員は60名ほどです。
ーーブライト500の認定も取得されていますが、健康経営を始められたのは何かきっかけがあったのでしょうか?
菊地:この大野芝工場は昭和52年に竣工し、数年後の1980年頃から会社として毎朝ストレッチ体操を始め、現在も続けています。健康への取り組みを続けるなかで、2020年、21年とコロナウイルスの感染拡大が起こりました。コロナ対策をするなかで商工会議所を通じて健康経営を知り、2021年の夏に健康宣言を出したことが経緯になります。
ーー取り組みを始めるにあたり、従業員の方の健康について課題を感じていた部分はありますか?
菊地:会社で健康診断をしていますが、再検査が必要な方が毎年何人かいます。特に若い人に多いのですが、自分の体に自信があるのか、なかなか再検査を受けない人が多い点が気になっていました。会社としても必ず再検査を受けるようにはしておらず、何もしないまま次年度の検査になる状況が続いていました。
健康緒経営を支える「推進委員」
ーー具体的な取り組みについて教えてください。
菊地:再検査を受けない人が多くいたため、健康診断で指摘を受けた人に対しては総務から再検査を受けるように促しています。再検査を受けるには時間的な問題もでてくるため、会社で補助も行なっています。
内田さん(以下、内田):保健士さんにも協力いただいて、健康に関してお話いただく機会を昨年から設けました。健康診断が終わったあとに健康診断の問診票と指摘表を全員が持って、一つひとつの項目について説明いただいています。今までは健康診断を実施して終わりでしたが、診断後も健康についてのコミュニケーションをとれるようにしています。
菊地:あとは、健康経営の推進委員を従業員のなかから選び、取り組みを進めています。特に女性に関しては特有の疾患もありますし、多くの女性従業員に推進員になってもらいました。
東田さん(以下、東田):若い女性は、婦人科検診をなかなか受けにくいところもあったみたいです。しかし、若い女性従業員から検診を受けるように伝えていき、保健所からのお話もあって、健康についての意識も変わってきているように感じます。今年はたくさんの方から「女性特有疾患の検診を受けます」と連絡がきています。
ーー推進委員がいることで、より効果的な取り組みができているのですね。
内田:女性特有の病気に関しては、男性からは言いにくいこともあります。女性から啓発してお声がけいただけて、すごく役立っています。一部の病気の検診は保健センターでも、無料で受けられるものがいろいろあります。しかし、なかなか浸透していかない状況もあり、積極的にお知らせするようにもしています。
あとは、昨年度から大阪府で行なっているフレイルチェックについても、家族に高齢者がいる方はチェックしていきましょうと呼びかけています。健康経営の申請書にもフレイルチェックの項目がありましたし、力を入れていきたいと思っています。
健康的な食生活に向け、LINEでカロリー情報を発信

ーーLINEを活用した取り組みも実施されているそうですね。
内田:工場で仕事をしていて、お昼は仕出し弁当を取る従業員もいます。給食屋さんにも協力いただいてヘルシーランチを提供している他、LINEを使って1週間のお弁当メニューとカロリー情報の発信もしています。
ーー従業員のみなさまからの反響はいかがですか?
内田:今までカップラーメンやサンドイッチを持って来る人が多かったのですが、カロリーを気にしてお弁当を取る方もでてきました。
ストレスなく働ける労働環境が整っている
ーー労働環境については以前から働きやすい環境が整っていたそうですが、従業員のみなさまに良い効果が生まれていると感じられますか?
菊地:弊社は製造業でありながら、残業がものすごく少ないです。コロナ禍で若干仕事量が減ったのもありますが、昨年は残業0でした。3交代をやっているわけでもなく、8時から17時までの間で仕事をこなしています。
内田:残業が少ないことによって、従業員はオンとオフの切り替えができていると思います。健康経営を始める前からのことではありますが、ストレスチェックでもなかなか有所見者はでてきません。残業が少ないことが、ストレスなく働けている一つの要因であると感じています。
東田:体調面に関してもしっかりケアができるように、朝の出勤時と帰る際に健康チェック表を従業員につけていただいています。不調を感じている人がいれば、翌日「体調はどうですか」と声かけをしてケアに努めています。
より多くの従業員が健康増進に目を向けてくれるように取り組んでいく

ーー健康経営の取り組みをするなかで、大変だったことはありますか?
菊地:喫煙対策ですね。私も過去にはタバコを吸っていましたが、やめて健康の大切さを実感しています。従業員にも先々になっていろんな症状が出てくる可能性あるしタバコはやめたほうがいいと話をしていますが、なかなか浸透しません。
以前は社内にもタバコの煙を吸引する装置を置いて喫煙場所を設けていましたが、現在は社屋の中は全面禁煙にしています。会社の外に喫煙場所を設けましたが反発もあり、禁煙を推奨するなかで非常に抵抗もある状況です。
それでも何度も話をして、休憩時間に屋外でしか喫煙できないことは理解してもらえました。しかし、さらにタバコをやめたらどうでしょうかという話をしても、なかなか禁煙は広まっていない状況です。
ーー今後の計画や目標、注力される取り組みがありましたらお聞かせください。
内田:昨年は健康診断において有所見者となった方の、再検査率が53%でした。2025年ぐらいまでには再検査の受診率を80%ぐらいまで上げていきたいです。喫煙率も38%から今年は36%と若干減ってはいますが、同じく2025年ぐらいまでには30%ぐらいには減らしていく目標を掲げています。
従業員の年齢が上がると、どうしても高血圧の問題もでてきます。こちらも減らす方向で、社内に血圧計を設置して毎日測定できるようにしています。
ーー社内にフィットネスルームを設置する計画もあるそうですね。
内田:弊社には若い従業員から70代まで、幅広い世代の人がいます。しっかり体を鍛えるようなフィットネス器具を置くというよりは、ぶら下がり健康器などみんなが使えるようなものをアンケートも取りながら置いていきたいと考えています。
ーー最後に、健康経営に取り組まれる企業の担当者や、健康に関心のある読者へメッセージをお願いします。
菊地:従業員がずっと健康で過ごすには、予防に重点をおくことが大事だと考えています。10年20年先の健康状態を、考えていかないとダメです。喫煙の問題についても根気よく話をしていき、一人でも禁煙者が増えてくれることを望んでいます。
内田:もちろん禁煙は大事ですが、メンタル面の健康を考えると無理やり禁煙を強いるのはよくないのかなとも思います。もちろん受動喫煙が起こるようではダメですが、いろいろ加味しながら健康経営を進めていけたらと思います。
東田:健康経営チームの一員として活動するなかで、高齢化社会もありフレイルチェックの重要性を感じました。運動機能をはじめ異変に早く気付くタイミングを、従業員やご家族のみなさんに伝えられてよかったと思います。従業員からうれしい声がいただけたのも、よかったです。身近なところからみんなで取り組んでいけば、会社の雰囲気もすごくよくなっていくと思いました。
ーー本日は、貴重なお話をありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:菊地光学精工株式会社
インタビュアー:朝本麻衣子
サントリーウエルネスのおすすめ商品はこちら