
三重県松阪市にある株式会社ミツイバウ・マテリアルは、金属系外装建築資材の製造や、環境商品・住宅設備機器・その他建材などを販売している会社です。ペレットストーブをはじめとした、環境に優しい製品の販売にも力を入れています。
今回は健康経営優良法人、中小規模法人部門の上位500社が認定されるブライト500を受賞した、同社の代表取締役社長 三井さんにお話を伺いました。
社員の高齢化が進むなかで始めた健康経営

ーー御社の沿革や事業内容について教えてください。
三井さん(以下、三井):弊社は1951年に創業し、はじめは金物屋として鍋・やかんの販売を行なっていました。その後、私の父が会社を継いだタイミングで、鉄製品の加工を行なう鉄鋼2次製品の開発・販売を始めました。そういった製造を進めながら、1980年からは施工工事も請け負うようになりました。現在も、施工工事と鉄鋼2次製品の販売がメインの事業体制となっています。
また、最近はペレットストーブというバイオマスを燃料としたイタリア製のエコストーブの販売を行なっており、当社が日本の総輸入元を担当しています。
ーー健康経営を始めたきっかけについて教えてください。
三井:当社は社員の高齢化が進み、病気にかかる人や生活習慣病を抱える社員が多くいる状況でした。健康でないと、仕事のパフォーマンスは落ちてしまいますよね。100%の能力を発揮するには健康が第一です。会社が、健康で働ける環境を作っていくべきだと考えるようになりました。
ーー最初はどのような取り組みから始めたのでしょうか?
三井:健康診断は毎年取り組んでいましたが、要再検査・要精密検査となった方に対して、特に声かけなどは行なっていない状況でした。そこで、必ず病院に行き、検査や治療をしてもらうように声かけを行なったことが取り組みの始まりです。そのことから、健康を意識する社員が増え、自ら健康に対する取り組みを行なう姿も見受けられましたね。
100円で購入できる栄養のあるお惣菜
ーー健康経営の取り組みを進めていくなかで、社員の方の健康課題はどのようなところにありましたか?
三井:仕事から帰宅する時間が遅いため、ご飯を食べる時間が遅くなってしまうなど、生活リズムが整えられていないことが課題だと考え、働き方改革に取り組みました。
また、社員自身の健康意識が低く、喫煙者の割合が高いこと、暴飲暴食なども問題があると感じていました。弊社のオフィスがある場所は街から離れているので、お弁当を持ってきている社員もいますが、コンビニ弁当などを食べる社員も多数います。そこで社食補助という取り組みを始めました。これは、会社に100円で購入できるお惣菜を用意する施策ですが、添加物を使用していないので、妊婦さんでも食べられるような栄養を考えた健康食です。
ーー働き方改革としてはどのような取り組みを行なったのでしょうか?
三井:まずは意識改革から取り組みを始めました。各部署から社員を集め、社内で「ワーク・ライフ・バランス委員会」というものを立ち上げて、「どうしたら、売上を落とさずに社員が早く帰れるようになるのか」を話し合いました。当時、アナログな方法で業務を行なっていることも多かったので、ペーパーレス化などのIT化を進めることで業務効率向上を図り、残業時間は半分以下になりました。
定型業務をシステムが行ない、今まで手書きだった書類が電子化されたことで、手作業で探していたものが検索で探せるようになるなど、IT化を進めたことは残業時間の減少に大きく貢献しました。
病気を早期発見し、すぐに治療できる仕組みづくり

ーーその他にはどのような取り組みを行なったのでしょうか?
三井:予防の面では、健康診断のときにオプションで診断することができる検査を、35歳以上の社員には会社負担で行なうようにしました。また、病気にかかったときには100万円が支給される保険を会社負担で全社員分加入しているため、健康診断で病気が見つかったときに、すぐに治療を始められる仕組みを整えています。
また、婦人科検診については、2年に一度は国から補助が出るので、出ない年については会社が負担して検診を受けてもらっています。
ほかにも、有給休暇を使いやすくするために、時間単位で取得できるようにしたことで、病院の受診や治療を受けやすい体制を整えることができました。そのおかげもあり、平均有給取得日数が8日まで上がりましたね。
ーーいろいろな健康経営の取り組みを行なっていますが、進めていくなかで大変だったことはありましたか?
三井:社員のなかで健康経営の取り組みを喜んでくれる社員は、健康に対する意識がもとから高い人で、若い社員など、健康に対して関心のない社員には喜ばれている実感が少ないところですね。温度差が生じてしまっています。
取り組みを進めていくなかで健康への意識は少しずつ上がってきているように思いますが、新型コロナウイルスは若い社員がかかる割合が高かったので、会社で加入している医療保険に触れる機会があり、ありがたみを感じてくれたようです。
社員の声から、運動する社員への補助金を検討している
ーー健康経営の取り組みを進めるなかで、社員の方からの反響はいかがですか?
三井:栄養面を考えたお惣菜を100円で購入できる施策に関しては、女性社員からの反響が大きかったです。共働きの社員はお弁当を作るのも大変ですし、お米だけ持参すればおかずは用意されているので、栄養も摂れて良いと言っていただいていますね。
鯖の煮物・ハンバーグなど、メニューも決まっているので、みんなが飽きてきたのではないかと思い、一度この施策をやめようかと考えた時期もあったのですが、「なかったら困る」という声があり、現在も続けています。
ーー健康経営の今後の計画について教えてください。
三井:今年、健康経営優良法人のブライト500の認定を受けました。中小企業で上位500社に与えられるものですので、今後もブライト500の認定を継続して受けられるよう取り組んでいきます。
施策を進めていくなかで福利厚生についてのアンケートを実施すると、「ジムに行きたい」という声が多くあり、ゴルフを始める社員も増えてきました。来季からは運動をする社員に対して補助金を支給する「健康サポート補助金」という施策を始めようと考えています。今後は、社員たちで使えるジムを社内に作り、運動のサポートもしていきたいと計画中です。
ーー健康に関心のある読者に向けてメッセージをお願いいたします。
三井:健康でないと仕事のパフォーマンスは落ちていくと思うので、まずは意識から変えていくことが必要だと思います。しかし、そういうところは実際に病気になってはじめて気が付くことも多いですよね。食生活など地道なところではありますが、少しずつ気にかけて、取り組んでいくことが大切だと思います。
ーー本日はお話いただきありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社ミツイバウ・マテリアル
インタビュアー:塩野実莉