
株式会社パーソナルベストは、保険代理店業を営む北海道に本社を置く企業です。
健康経営については、「できることから始める」姿勢でラジオ体操などの取り組みを始め、2018年からは健康経営優良法人の認定を受けました。今回は、会社経営の柱として、従業員の「心と身体の健康維持・増進」するための取り組みを続ける、同社の有田さんと石橋さんに健康経営についてお話を伺いました。
顧問社労士からの勧めでワークライフバランスを軸とした健康経営がスタート

ーー貴社の沿革やおもな事業内容について教えてください。
有田さん(以下、有田):昭和41年に父親が起こした会社を引き継ぎ、平成13年に法人化しました。当初は有限会社でしたが平成21年に株式会社化し、令和4年3月に合併をして株式会社パーソナルベストが誕生しました。現在は取締役会長を務めています。
事業内容としては、損害保険や生命保険の代理店です。北海道の旭川市に本社がありますが、札幌にも支店を出しており、起業時からずっと北海道で事業を営んでいます。
ーー健康経営をはじめたきっかけについてお聞かせください。
有田:当社の顧問社労士から「健康経営を始めないか?」という助言をいただいたことがきっかけです。そのときに初めて「健康経営」という言葉を知りました。
その頃を思い返すと、従業員の定着率もあまりよくなかったですね。そうした背景もあり、平成29年に健康経営の活動に力を入れ、認定に向けて準備を始めました。その後、平成30年に健康経営優良法人の認定に至りました。
石橋さん(以下、石橋):当社の健康経営の中心になっているものは「ワークライフバランス」です。仕事も家庭生活もうまくいくようにするには、体と心の健康が大事だと考えています。
ーー従業員の健康状態で、改善が必要だと感じていた点はありますか?
有田:今年もすでに、従業員14名中9名が健康診断を受けていますが、血圧や尿酸値が高いと指摘された従業員もいます。生活習慣病に関わる項目で指導が必要になる従業員もいるので、そこは改善が必要だと感じていました。
できることから取り組んだ健康経営

ーー実際の施策について詳しく教えてください。
有田:できることからやっていくというスタンスで、まずはラジオ体操から取り組みを始めました。健康診断は健康経営を始める前から全員受診していましたが、結果をファイリングして終わりという状態でした。
健康経営をスタートしてからは結果を一人ひとりチェックし、誰がどのような健康状態にあるのかということをすべて把握できるようにしました。そして、次年度に改善できているかということも比較できるようにしています。
また、通常の検診項目以外に、勤続年数に応じて脳ドックや肺ドックといったオプション検査の費用補助も実施しています。
ーー給与体系にも健康に関する評価項目を入れているそうですね。
有田:給与体系には、健康に関する手当を組み込んでいます。例えば、タバコを吸っていない社員には月々インセンティブが発生します。また、BMI、血圧、血液検査、尿検査、この4つのうち3つに問題がない従業員もインセンティブの対象にしています。
ーー歯の健康にも注力されていると伺いました。詳しく教えていただけますか?
有田:歯科検診の費用補助を行なっています。大きな虫歯や歯茎のトラブルになる前に、検診で予防してもらうことが目的です。
1年に1回、協会けんぽの保健師さんが勉強会を開催してくれますが、そのなかで「歯の健康が大事」という話が印象に残り、実施を検討しました。そのあと、役員会を開き、歯科検診の費用補助が満場一致で決まり、取り組みが開始しましたね。
ーーワークライフバランスに関わる施策はどのようなことを行なっているのですか?
石橋:月に1回、金曜日に午前中まで仕事をして、午後からは休みを取れる制度を実施しています。もちろん、有給です。この日の午後は、運動不足の解消に使ってもいいですし、心を休めてリフレッシュするために使ってもいい、当社にはそのような休暇制度があります。
農家に協力してもらいながら食生活の改善に取り組む
ーー健康経営を実践するうえで大変だったことはありますか?
有田:健康経営自体を意識してもらうまでに、結構な時間がかかったことですね。従業員も最初は「何をやっているんだ」という感じで、関心すらもってもらえていなかったと思います。健康経営は会社経営そのものだと考え、継続していくうちに、少しずつ従業員にも理解してもらえましたが、そこまでが苦労しました。
また、当社には社員食堂もなく、会社主導で食生活改善に向けた取り組みを行なうことも難しく感じています。少しでも野菜を食べる機会があればと思い、地元の農家の方に旬の野菜を用意してもらい、会社負担で従業員に提供しています。
ーー取り組みによる効果や従業員のみなさまからの反響はいかがでしょうか?
有田:社員へのアンケートの回答としては、野菜配布の取り組みに関して「食卓が季節の野菜で賑やかになった」「家族と、会社の取り組みに感謝するという内容の会話をした」「金曜日午後の休みには、明るいうちに散歩やジョギングしたり、ビデオを見たりして過ごせている」といった言葉をもらいました。良い反応が返ってきていると思います。
石橋:普段、野菜を買って食べるということは個人的にはあまりしませんでしたが、無料で会社から野菜を支給してもらえるので、手元にあれば調理して食べます。とてもありがたい機会です。
有田:その他、冬の間にお風呂で体を温めてリラックスしてもらいたいという意味で入浴剤を配布しています。それに対しては「入浴剤は体も温まり、リラックスできて快適です」という声もいただいていますね。
メンタルヘルス対策やコミュニケーション改善でより働きやすい職場へ

ーー健康経営についての今後の計画や展望を教えてください。
有田:メンタルヘルスに関して、事前対応と事後対応をまとめているところです。現在のところメンタルヘルスの不調を訴えている社員はいませんが、事後対応についても勉強が必要だと感じています。
石橋:メンタルヘルスにも関係しますが、コミュニケーションの促進も重要だと考えています。コミュニケーションが良好なら防げるトラブルもあると思うからです。例えば、社員間のトラブルですね。ハラスメントが起こると、メンタルヘルスへの影響もあります。もし、コミュニケーションが良好であればそうしたトラブルも起こりにくくなると思います。
有田:また、喫煙対策として給与のインセンティブを行なっていますが、これについてはあまり効果が見られないので、見直しが必要かもしれないですね。インセンティブがあっても実際に禁煙してくれる人がいないと意味がなく、別の方向からの働きかけを考えなければいけないと感じています。
評価項目は「点」ではなく「線」でつながっている
ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。
有田:健康経営の取り組みは、健康経営優良法人の認定をもらうこと自体が目標になってしまうとうまくいかないのではないかと思います。
評価項目の一つひとつは「点」に見えるかもしれませんが、実は「線」でつながっています。どのようにつながっているかは企業ごとにとらえ方が違うと思いますが、当社は、ワークライフバランスを中心に置き、ほかの評価項目と関連づけて取り組みました。
大変なことも多いですが、取り組めば必ず良い結果が出ると思います。健康経営に取り組む会社がどんどん増えてくれたらうれしいですね。
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社パーソナルベスト
インタビュアー:塩野実莉