
株式会社安成工務店は山口県下関市に本社を構え、「住宅事業」「建築事業」「商業開発」の3つの柱で事業展開をしている企業です。
健康志向の住宅を提供していることが一つのきっかけとなって、社員の健康増進にも力をいれるようになりました。健康経営優良法人のなかでも上位500社にしか与えられない、ブライト500にも認定されています。
今回は代表取締役 安成信次さんと、経営企画室 鷲頭由香さんにお話を伺いました。
自然素材で健康志向の住宅を提供

ーーまずは御社の事業内容や沿革について教えてください。
安成さん(以下、安成):安成工務店は、昭和26年1月10日に創業しました。本社は山口県下関市にあり、山口、宇部、周南、北九州、福岡に支店を構えています。グループ企業は12社あり、住宅と建設事業を展開しています。弊社では、「住宅事業」「建築事業」「商業開発」の3本の柱で事業展開をしています。社員数は181名で、うち57名が女性社員です。平均年齢は42歳となっています。
ーーブライト500の認定も取得されていますが、どのようなきっかけで健康経営を始められたのでしょうか?
安成:健康経営については以前から知っていたものの、取り組みに至ってはいませんでした。そのなかで、幹部社員が病気を患い、ほぼ同じ年に総務部長やグループ会社の取締役も入院をともなう病気になってしまったことがありました。それから、会社として、本格的に社員の健康を啓蒙するような取り組みを考えるようになりました。
また、弊社の特徴として、性能の高い天然乾燥の木材を使用し、自然素材で健康志向の住宅を提供しています。大学と共同研究を行ない、自然素材を使った住宅が健康にどのような効果をもたらすかを検証しています。自然素材を使った住宅はリラックス効果が高くて睡眠の質も良く、ウイルスの殺菌力も非常に高いといった、さまざまな効果があることがわかってきました。
健康志向の住宅を追求していくうえで、社員にも健康を意識してほしいという思いから、健康経営に取り組んでいます。
禁煙の姿勢を示すことに意味がある

ーー従業員のみなさんの健康状態について課題に感じていた点はありますか?
安成:喫煙率を下げたいと思っていました。あとは、健康診断で再検査になっても忙しくて行けない、今は体の調子が悪くないから行かないといった理由で受診しない方が何人かいることが気になっていました。健康診断を実施していても、フォローまではできていないことは課題に感じていました。
ーー業界として建設業は喫煙者が多い傾向にあるのでしょうか?
鷲頭さん(以下、鷲頭):建設業は男性社員が多くて、自然と喫煙率も高くなってしまうところはあります。弊社の喫煙率は20%程度で、一般的な建設業の喫煙率に比べると若干低くはなっています。しかし、ヘビースモーカーの社員もいますし仕事を途中で抜けて喫煙室に行く習慣が根付いていて、改善が必要だと感じていました。
ーー喫煙に対しては、どのような施策をされたのですか?
鷲頭:禁煙外来へ行く費用のサポートをしています。会社として禁煙に取り組みたいという姿勢を示したことで、自主的に禁煙に取り組む社員も増え、喫煙率は9.5%まで下がりました。しかし、喫煙習慣が戻ってしまう社員もいて、現在は喫煙率がやや上がってしまったので、引き続き禁煙に取り組めるサポートをしていきたいです。
気軽に相談ができる環境を整えている

ーー健康経営で特に力を入れて取り組んでいる施策はありますか?
鷲頭:特に力を入れている取り組みは、大きく分けて3つあります。1つ目は、健康診断で再検査や精密検査の必要がある方へのサポートです。再検査や精密検査が必要と診断された方には、定額の費用補助を行なっています。それから、総務から従業員に向けて、特定保健指導の受診勧奨も行なっています。
2つ目は、女性社員に向けた取り組みです。婦人科検診に対して自己負担がなくても受けられるように、会社から費用の補助をだしています。また、女性従業員向けに、無料でオンライン診療や保健師の相談が受けられるアプリを導入しています。
例えば、生理痛や生理にともなう貧血、そしてPMSに悩む従業員が、痛みや症状を軽減するために低用量ピルの購入ができるようになっていて、アプリで購入した場合は会社が半額費用補助をだしています。
3つ目は、産業医との連携です。弊社は拠点が山口県と福岡県に分散していることもあり産業医をおく必要がある従業員数の基準には達していない状態だったのですが、産業医と提携してメンタルヘルスや体の不調についての悩みなどを相談できる体制を整えています。従業員も、なかなか社内では相談しづらい部分もあると思います。窓口としては産業医に限らず、社労士とも話ができるような体制づくりをしています。相談したい場合は総務へ希望を出してもらい、オンラインで相談窓口につなげられる環境に整えています。
ーー女性特有の問題も、しっかりカバーできる態勢ができているのですね。
鷲頭:最近は仕事内容に男女差がなくなってきています。女性従業員も現場に行き、場合によっては足場に上ることもあります。現場の業務中に、貧血で倒れそうになったというようなことが起こると、怪我にもつながります。体調に心配や不安がある従業員には、試しにアプリを使ってみてほしいと考えています。
工夫を凝らし拠点が分かれていても全社員が取り組める施策を
ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことや苦労したことがあれば教えてください。
鷲頭:大変だと感じたのは拠点が分散していることです。検討した施策がなかなか実行できないことが多々ありました。例えば、一つのビルにほぼ全社員がいる状況であれば、健康に配慮した社食でサポートするといったことができます。しかし、拠点が分散していると、全従業員に公平な取り組みはなかなか難しい部分がありました。
ーー拠点が分散していて一体となった取り組みが難しいなかで、健康経営に取り組むコツがあれば教えてください。
鷲頭:私どもも試行錯誤中ではあるのですが、コロナ禍で在宅ワークも普及して健康経営に関するさまざまなサービスを提供する企業さんもたくさん出てきました。例えば、弊社は社食の導入は難しかったのですが、何か健康食品を導入することができないかと考えて野菜のスムージーを取り入れることにしました。賞味期限が長いパウチタイプのものを各拠点に配布しています。
自分にあった施策を取捨できる環境をつくり、粘り強く健康増進に取り組む

ーー取り組みによる効果や、従業員のみなさんからの反響はいかがですか?
鷲頭:喫煙率を下げることができ、婦人科検診の補助を行なったことにより受診率を上げることができました。数字として、取り組みの効果を実感しています。また、「取り組みを始めてくれてありがとうございます」というお電話をいただくこともあり、喜んでくれる方がいるのはうれしいですね。健康経営で全従業員が喜ぶ取り組みは、意外と少ないという実感があります。喜ぶ人もいれば興味がない人もいて、ネガティブな感情をもつ人もいるかもしれません。
ですが、取り組みを行なうことで、ピンポイントで助かったと思ってくれる人もいることも感じました。全従業員が喜ぶものや取り組みやすい施策の実施はなかなか難しい面もあるのですが、従業員が自分にあったものを選べるという前提で施策をアップデートしていきたいと思っています。
ーー今後の目標や展望がありましたらお聞かせください。
鷲頭:一つは、従業員それぞれが個人に合った取り組みができる環境をつくることです。もう一つは、先の話になるかもしれませんが、健康経営が仕事のパフォーマンスにどれだけ効果があるか検証できる体制をつくっていきたいです。
健康経営の取り組みを仕事の成果につなげることが、経産省が進めている健康経営の大きなゴールにもなっていると思います。従業員の健康やモチベーション以外にも仕事の効率化に健康経営が活かせていると実感できれば、会社として健康経営にどのように取り組んでいくべきかさらに見えてくると思います。
安成:昨年ブライト500の認定をいただいたばかりのレベルですから、課題の解決を少しずつ進めていくことが大切だと思っています。例えば、喫煙にしても一度減ってからリバウンドしてしまったので、何回も仕切り直しをしながら継続していかなければいけないと思っています。また、何か新たなキャンペーンをしていこうと思います。
ーー健康に関心のある読者や、健康経営に取り組む企業の担当者へメッセージをお願いします。
安成:健康はすべての源泉だと思います。体の健康は心の健康にも影響します。そして、注意することによって健康は獲得できると思います。健康について、若いときはあまり考えないかもしれませんが、年齢が上がれば上がるほど切実に考えるものです。私も年を重ねて、最近健康は大切だなとつくづく感じています。
健康を意識している、いないに関わらず、会社の仕組みのなかで健康になれる方向に進めなければならないと思っています。体の健康が心の健康をつくり、仕事のやりがいを生みだします。
鷲頭:なかなか最初から、すべてを網羅した取り組みの実施は難しいと思います。各会社によっておそらく必要としていることや状況は違うと思いますので、まずは糸口だけ見つけてみてください。あとは途切れ途切れでもすべてにつながるものでなくてもいいと思うので、少しずつ何かを進めていけば最終的に自社としてベストな形の取り組みが整っていくと思います。まずは、少しずつやってみるところから始めていただければいいかなと思います。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社安成工務店
インタビュアー:朝本麻衣子
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