
株式会社日吉は滋賀県近江八幡市に本社を構え、社会インフラを守る環境トータルサービスプロバイダです。2022年3月には「ブライト500」にも認定されており、健康経営にも注力しています。
今回は健康経営の取り組みについて、株式会社日吉の総務部に在籍する大角次長と林さんにお話を伺いました。
環境保全のスペシャリスト「株式会社日吉」

ーー本日はよろしくお願いします。まずは、御社の沿革やおもな事業内容を教えてください。
林さん(以下、林):弊社は昭和30年に創業して、今年3月に67周年を迎えました。従業員は346人になります。おもな事業内容は大きく分けて4つあります。
水や大気など環境試料の分析検査業務、浄水場や排水処理施設など水をきれいにする施設の維持管理業務、工業薬品の販売や薬剤の提案販売、そして、創業時からの事業である廃棄物の収集運搬業務や各種清掃など多岐に渡ります。
弊社は、環境に関して幅広く事業を展開している環境トータルサポート企業になります。
ーー2022年にブライト500を取得されていますが、健康経営を始められたきっかけを教えてください。
大角次長(以下、大角):弊社はいわゆる社会インフラを守る大切な業務を担っています。昨今のコロナ禍で話題になったエッセンシャルワーカーとしての仕事も多くありますが、これらの社会インフラを守る、基盤を守る基本は「従業員が元気で健康に働ける環境」だと思っています。
従業員のなかでも特にインフラ業務に携わるメンバーへの健康的なアプローチは、健康経営優良法人の認定取得以前から取り組んでいました。
また、弊社の社是として「社会立社・技術立社」を掲げています。会社は社会に貢献しなければ存続できない、技術を持った従業員がいかに社会に還元し活躍するのか、できるのかというのはやはり健康があってこそだと思っています。
ですので、健康経営が世間でいわれる前から、健康に対する取り組みに重きを置き、社会インフラを担う責務から、自然に取り組みを推進してきた背景があります。
ーー従業員の健康についての課題や改善が必要だと感じていたところはありますか?
林:弊社でも生活習慣病のリスクは課題だと感じていました。実際に健康診断を受けて精密検査が必要だったり、保健指導の対象になったりという従業員がたくさんいました。
それらの原因となるのがタバコや生活習慣、ストレスなどではないかと考え、そのあたりを変えていく必要性を感じていました。
ーー生活習慣病リスクのなかでも特に顕著にあらわれている御社での傾向はありましたか?
大角:弊社の平均年齢は40歳を超えてきています。高齢化も進んでいるので高血圧や高脂血症など増加傾向にあります。命にも関わるので危機感を感じていますね。
そのなかで、世代交代を進めるにあたって、健康リテラシーをいかに若い世代に定着させていくかも課題の一つだと思っています。
インフラを支えている従業員の健康を守る施策

ーー実際に健康経営でどのような施策を行なっていますか?
林:先ほどタバコの話をしましたが、受動喫煙対策には特に注力をして対策を講じました。今までも喫煙スペースはありましたが、きちんと分離したものではなかったので、近くを通ったり、煙が広範囲に広がったりしてしまうことで受動喫煙のリスクがありました。そういった社員からの声も高まり、分煙に配慮した喫煙スペースを社屋から少し離れた場所に設けました。
その他、インフルエンザやコロナのワクチン接種も、社内で集団接種を受けられるようにし、感染症対策にも力を入れています。
大角:社会インフラを支えているという業務上、一人がインフルエンザになると、感染が広がって業務が遂行できなくなるのは問題です。そこを回避するためにワクチンの予防接種については早期導入をしています。
また、職務上、下水などに触れることも多い社員には破傷風であったり、海外事業の対象者には、A型肝炎や狂犬病だったりの予防接種を受けられるようにしています。業務に応じたリスクマネジメントですね。
大角:インフルエンザについてはインフラ業務に携わる者は会社負担で接種をしてもらっています。海外向けや破傷風についても同様にすべて会社が費用を負担しています。
新たな施策として、下水中の新型コロナウイルス検査を開始しました。弊社が廃棄物収集業務などを担っておりそこからの感染を懸念し、従業員の安全性を確保する目的で検査を始めました。検査対象が施設ごとのため、個人検査よりも感染症の早期発見・感染防止に貢献しています。
ーーコロナ禍での感染症対策は、大変だったのではないでしょうか。
大角:コロナの最初の時期は本当に大変でした。まず仕事を止めることができないので、どの部署も2部制にして代わりがきくような体制をとりました。特にインフラ業務に携わる部署では通常と同じ人員でそのような体制をとっていたので、相当な苦労がありました。
また当時はマスクも手に入らず、今では考えられない価格帯のマスクを会社で購入して従業員に配っていました。ほかには、消毒液やうがい薬や非接触体温計など感染予防対策に必要な物はすべて会社で提供していたので、物品手配の労力も相当なものがありました……。
特に、初期はコロナについての情報も少なく、感染者がでたとなれば、どうすればいいのか判断や行動指針も定まっておらず、濃厚接触者と考えられる従業員全員を自社負担でPCR検査するなど、今では考えられないような対応もしていましたね。
従業員の心身の健康を守る風土

ーー健診やコミュニケーションの充実という点でなにか取り組みはありますか?
大角:健康診断には、いわゆる一般健診以上の項目を取り入れています。というのも、産業医さんがとても熱心な方で、「糖尿病にはHbA1cを必ず取り入れなさい」とか「この業務においてはこの項目を取り入れなさい」というように、本当に手厚くご指導いただき、弊社の従業員に関しては十分な健診を受けることができています。
ーー体の健康以外のところで、メンタルやコミュニケーションが活性化するような取り組みはありますか?
大角:産業カウンセラーによるカウンセリングを数年前から始めており、いち早く従業員の心のケアに対応できるようにしています。
社内のコミュニケーションというところでは、社名の「日吉」から「ひよしコミュニケーション、略して“ひよこみ”」と活動名をつけて、全社で食事会やボウリングなどのイベントを行なっています。
ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことはありますか?
林:タバコの話に戻りますが、やはりタバコが苦手な人にしてみると、臭いや煙たさは嫌なものですが、愛煙家の方にとっては安心感などを与える効果もあります。受動喫煙対策は本人の趣向を阻害するような行為に該当するので、そこを理解してもらうことや、過去の習慣や文化を払拭する必要があったという点は苦労したところだと思います。
また、先ほど健康診断の項目がありましたが、特殊な有機溶剤や薬品を使っている部署もあり、法律の改正にともなって情報収集をしなくてはいけないのも大変ですね。
例えば「この薬剤を使っている人はこの項目を受けてください」というように、どんどん変わっていきます。それを実際に現場に反映させて、取り入れていかなければならないことが、苦労するところではあります。
ーー取り組みを進めるなかで、従業員の反響や社内の変化があれば教えてください。
林:エッセンシャルワーカーに該当するというなかで、例えば今回の新型コロナウィルスでは、感染リスクを不安に感じる方がたくさんいました。
そんななか、会社での順次ワクチン接種であったり、マスクや消毒液などの必要物資の提供だったりは、従業員とその家族も対象だったので安心感を覚えていただけたのではと思います。実際にそういった感謝の声もありました。
従業員だけでなく家族も大切にするということを、会社が実践してくれたのは大きかったと思います。
より深く従業員の健康へのアプローチと数値化にも取り組んでいく

ーー健康経営について今後の目標や展望があれば教えてください。
林:生活習慣病の改善が必要だとお話ししましたが、従業員の食生活や運動量を訴求するようなイベントなど、個人の生活に重きを置く施策については、まだまだ踏み込みが浅いという印象があります。
ですので、今後は従業員へのヘルスリテラシーの向上につながるようなアプローチを増やしていければと思っています。
大角:あとは目標設定や数値化というところにも課題を感じています。施策の実行はできているのですが、それを取り入れたあとの状況に対して、数値の把握などがまだできていないところがあります。
対策を講じるための現状把握や数値化という点も進めていかなければと思っています。
ーー最後に健康に関心のある読者へのメッセージがあればお願いします。
林:弊社は、従業員を財産だと思っています。従業員を大切に思うことは、円滑で継続的な経営につながります。安心して健康に働けることで、自身のモチベーションアップや業務の質の向上にもつながりますので、会社としても継続的な経営に良い影響をもたらすと考えています。
そこはSDGsにもつながると思っているので、従業員の状況やニーズなども確認しながら取り組んでいきたいと思います。
大角:私も、林と同じく、人は会社の財産だと思っています。そこがなくては会社の繁栄はありません。SDGsの実践ということも含めて、ぜひ読者の皆さんとも一緒にアイデアの情報交換をしながら取り組みを進めていければと思います。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社日吉
インタビュアー:朝本麻衣子