
株式会社新日本技術コンサルタントは、鹿児島県にある建設コンサルティングを行なう企業です。2017年から健康経営優良法人の認定を受け、2021年からは上位500社が認定を受けるブライト500に選ばれています。健康経営という概念が世の中に出始める前から「健康」に留意してきたからこそ、常に一歩先の取り組みを実施されています。
今回は、同社総務部長の児玉史彦さんと総務部の佐藤立樹さんにお話を伺いました。
創業間もない頃からスタートした「3つの誓い」

ーー御社の沿革やおもな事業内容について教えてください。
佐藤さん(以下、佐藤):1973年2月に創業した会社で、2023年2月でちょうど50周年を迎えます。事業内容としては、建設コンサルタント業務です。国、県、市町村などを中心に、暮らしに深く結びついている道路や橋梁、河川といった社会資本に関する業務に携わっています。測量調査、設計、点検などが業務の中心です。
本社は鹿児島県鹿児島市にあり、社員数は全体で96名です。福岡県や長崎県、熊本県、宮崎県、山口県にも支社や営業所を展開しており、幅広い地域で取引しています。
ーー健康経営をはじめたきっかけについてお聞かせください。
児玉さん(以下、児玉):弊社では「健康経営」という概念を世の中で耳にするようになる前から、会社のなかで「健康に留意する」ことを大切にしてきました。創業者が1976年5月5日に「3つの誓い」というものをつくっていますが、そのうちの一つに「私共は絶えず健康に留意し、交通の諸規則を守り、交通事故などを絶対に起こさないようにすることを誓います。」と記されています。
創業間もない頃から会社が大切にしてきた誓いの一つということもあり、2017年に健康経営優良法人認定がスタートしたときから申請を行なっています。
元気に長く働ける会社にするために残業を減らす

ーー健康経営を始める前に改善が必要だと感じていた点はありますか?
児玉:働き方については改善が必要だと感じました。測量設計は、経験と知恵がものをいう仕事です。80代でも働いている社員がいますし、長年の経験や知恵こそが会社としても必要だと考えます。そのため、社員には少しでも長く、元気に働いてもらいたいと思っています。
働く人にとって無理が出ないよう、時間外労働を減らさなければならない意識はありました。ただ、残業時間が減ると、残業代が減ることでお給料も減ってしまいます。そこをどう対応するかが課題でした。
当社では、まず「残業時間を減らすためには、生産性を上げて残業を減らす必要がある」ことを社員に理解してもらい、そのうえで残業が減ることで減った給料については、賞与で還元することで課題の解決を目指しました。
佐藤:残業時間を減らせた理由としては、トンネルの点検を行なう機械など、積極的に機械を導入して効率化を図れたことが大きく影響しています。
対象者が出る前に制度をつくる先手の施策
ーーほかの施策について詳しくお聞かせください。
児玉:喫煙率が高いということも課題でした。喫煙率を下げるための取り組みとして、健康手当を支給しています。タバコを吸っていない社員には月額5,000円を支給するというものです。また、タバコを吸っている社員は「3カ月間タバコをやめる」と宣言し、本当にやめることができたら4カ月目から支給しています。その結果、喫煙率が26%から12%まで減少しました。
ーー御社では、先手の制度づくりをされているようですが、詳しく教えていただけますか?
児玉:先手で制度をつくるのは、みんなが安心して働ける会社をつくるためです。対象者が出たあとに制度をつくると、その人が特別扱いされているように思われてしまいますよね。そうなると、対象となる社員が肩身の狭い思いをするかもしれません。
対象者が出る前に制度をつくっておけば、既存の制度を利用するだけなので、対象者が特別扱いされているという見え方になりませんし、当事者の社員も利用しやすいですよね。
ーー対象者が出る前につくった制度にはどのようなものがありますか?
児玉:まずは、仕事と治療の両立支援です。この制度は、対象者が出る前に制度をつくったということで厚生労働省に取り上げてもらいました。
ほかには「積立有給」といって、2年以上経過した有給は失効することなく50日まで積立てられるようになっています。もし、病気などで仕事を長期間休むことになっても数カ月は有給で対処できる安心感があると思います。
また、子育てをしている人の出勤時間や退勤時間を1時間遅らせたり早めたりできる制度も整えています。保育園などにお子さまを送ってから出勤したい人は1時間出勤時間を遅らせられます。反対に、子どもを迎えに行きたい人は1時間早く出勤することで、退勤時間を1時間早めることもできます。また、弊社では育児期間を就学までではなく中学校入学までとしています。
現場との意識の違いがハードルに

ーー健康経営を実践するうえで大変だったことはありますか?
佐藤:こちらで考えていることと、現場の社員が考えていることで食い違うことがあります。その都度、意見をすり合わせて納得していただける制度にしていくことは大変ですね。
児玉:制度の趣旨を理解してもらえなかったこともありました。熱中症対策の一環として、現場で購入した飲み物の費用を領収書精算する施策を行なったときには、コーラやカフェオレといった嗜好品の飲料を購入された方もいて、ただ飲み物代を負担する制度としてとらえられてしまいました。
熱中症対策で実施している制度なので、水やお茶、経口補水液といった体のことを考えた飲料を購入してほしかったので、趣旨を伝えるのは大変だと感じましたね。
ーー取り組みによる効果や社員の皆さんからの反響はいかがでしょうか?
児玉:積立有給やタバコを吸わない人への健康手当は社員からの人気が高いです。ただ、健康経営に取り組んだからといって、会社として大きくかじ取りが変わったという感じはしません。三つの誓いを毎日唱和していて、創業間もない頃から「健康に気をつける」ことが会社のなかで当たり前になっていたからだと思います。
今後はメンタルケアに注力して離職率ゼロを目指す

ーー健康経営について今後の計画や注力していく取り組みがありましたらお聞かせください。
児玉:当社ではストレスチェックを行なっていますが、高ストレスの方が多い状況です。設計は非常に細かい仕事で、皆さんが想像されている以上に緊張度の高い仕事です。そのため、メンタル面のケアに注力して、高ストレス状態になる方を少なくしたいですね。最終的には、離職率ゼロを目指していきたいと思います。
ーー最後に、健康に関心のある読者の方へのメッセージをお願いします。
児玉:「予防に勝る治療なし」という言葉があるように、先読みして準備することが大事だと思います。
健康経営優良法人の認定が始まった2017年当初は、200~300社ほどが認定を受けていたと思いますが、2020年には認定を受けている企業が1万社を超えています。そのため、健康経営に取り組むというのは、もはや当たり前になってきているのではないでしょうか。
国が求めているレベル以上の健康経営をしている証が、健康経営優良法人認定なのではないかと個人的には考えています。企業には健康経営に取り組む責任があり、それが当たり前の世の中になっていくのではないでしょうか。
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社新日本技術コンサルタント
インタビュアー:塩野実莉
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