
愛知県の津島市に本社を構える株式会社服部商会は、「健康経営優良法人」認定制度の中小規模法人部門で上位500社に与えられる「ブライト500」を2021年、2022年と2年連続で取得しています。
今回は同社の健康経営の取り組みについて、常務取締役で「健康経営エキスパートアドバイザー」の資格も取得されているヒューター嘉緒里さんにお話を伺いました。
NC工作機械・工具の総合総社「株式会社服部商会」

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の事業内容や沿革などを教えてください。
ヒューター:弊社は1976年に創業し、今年(2022年)で創業46年になるNC工作機械・工具総合総社です。本社は愛知県の津島市となりますが、春日井市に営業所も構えています。
取扱い商品は工作機械や切削工具、工作機補要工具のほか、空油圧機器、環境機器など幅広く、さまざまな業界のお客様と取引をさせていただいています。
主要事業はNC工作機械・工具の販売ですが、工具のメンテナンスや、エアコンに設置するだけで99.99%除菌できる空間除菌スマルトクリアの販売、健康経営支援コンサルティングといった事業も行なっています。
ーー御社は「ブライト500」を取得されています。健康経営のきっかけを教えてください。
ヒューター:健康経営を始めたきっかけは、全国健康保険協会から「健康宣言チャレンジ事業所」の認定案内が届いたことです。当時は中小企業の採用が困難な時代で、弊社も採用に苦労していたので、まずは新しい取り組みとして健康宣言チャレンジ事業所の認定を受けました。
取得後に社労士の先生の事務所を訪れたのですが、同じ健康宣言チャレンジ事業所の認定書が飾ってあり、そのお話の流れから健康経営優良法人という認定制度もあるということを知ったんです。
それが2017年10月頃で、1年間の取り組み後に申請するものだということがわかったので、2018年から本格的に取り組みをスタートしました。
ーー実際に取り組まれてみて、すでに基準を満たしていたことや課題と感じた部分はありましたか?
健康診断や定期診断の受診率100%はすでに満たしていましたが、それ以外は新しく取り組みを進めました。
例えば社員同士のコミュニケーションや社会勉強の目的で社員旅行を実施していましたが、健康増進という視点で考えたときにやるべきことはたくさんありましたね。
アドバイザーとエキスパートアドバイザーによるPDCAサイクルを回す健康経営

ーー健康経営の施策について教えてください。
ヒューター:当初は、健康経営優良法人の認定を受けることを目的とした内容でした。例えば毎月1日を健康の意識を高める「ヘルシーデー」にして、野菜ジュースや青汁、健康に関する情報誌を社員に配って家族と共有していただいたり、有機野菜・豆や良質なチーズ、海藻、高タンパク資源などを使った「30品目意識改革ランチ」を提供したりといった内容です。
受動喫煙対策として禁煙報奨金1万円を支給したり、ウォーキングラリーを実施したりといった取り組みも始めましたね。
ただ、健康経営の取り組みは少なからず経費がかかりますし、推進側と社員とで温度差もあって、推進側のモチベーションが揺らいでしまった時期がありました。そんなとき、「健康経営アドバイザー」「健康経営エキスパートアドバイザー」という資格があることを知ったんです。
現在は、私が健康経営エキスパートアドバイザー資格を保有していて、その他に本社と春日井営業所に1名ずつ健康経営アドバイザーが在籍しています。
資格を取得すると健康経営の重要性に対する確信が強まり、推進側のモチベーションアップにつながりました。「この取り組みをすれば将来こういう風に変わっていく」というビジョンが明確になったことで、意識が変わったと感じています。資格取得後はPDCAサイクルを回すようにして、本格的な取り組みをスタートさせました。
ーー本格的にスタートしてからはどのような施策を行なっているのでしょうか。
ヒューター:どの会社でもアブセンティーイズム(健康問題による欠勤が生じている状態)とプレゼンティーイズム(健康問題を抱えながら業務に従事している状態)があると思います。
弊社の場合は、全額会社負担によるインフルエンザの予防接種や風邪・感染予防などの初期の取り組みでアブセンティーイズムは解消できていましたが、プレゼンティーイズムは解消できていなかったため、PDCAサイクルのなかでも特に課題としました。
その取り組みの一つとして、オフィス環境の整備があります。初期の取り組みは食や運動、受動喫煙対策など、変化がわかりにくいものが多かったのですが、社員にも取り組みによる変化を感じてほしいと思ったので、視覚的にわかりやすい取り組みとして実施しています。
例えばパーテーションを取り外してオープンな空間を作ったり、社員同士のコミュニケーション向上のためにフリーアドレスのスペースを設置したりしました。テーブルも昇降テーブルを取り入れて、健康リスクのある長時間の座位を防げるようにしています。
また、ゴミを捨てるときに立って歩かなければいけない状況を作るために、それまで20個あったゴミ箱を1個に減らしました。それまでは社員のデスクの近くに1つずつゴミ箱があったので分別せずに捨てる方も多かったのですが、歩いて捨てに行くようになってからは、リサイクルに回せるものをリサイクルボックスにきちんと入れてくれる方が増えましたね。
全体のゴミが70%ほど減ってリサイクル品の分別もできたので、環境にも良かったと感じています。
あとは外部の専門家との連携、ボランティア団体との協働など社外リソースも活用しています。津島市のボランティアの方に依頼して、年に1~2回はストレッチを教えてもらっているんですよ。その他、生命保険会社さんによるヘルスリテラシー向上セミナーも実施しています。
より達成しやすい状況や環境をつくることで変化が生まれた
ーー以前からの取り組みについて、何か変更されたことはありますか?
ヒューター:健康診断について、再検査の時間を確保したり報告書を書いてもらったりといったことは以前から実施していましたが、ある程度の年齢の方には人間ドックも受診してほしいと思っていました。
そこで、人間ドックを半額会社負担で受診できるようにしています。30代の社員のうち80%程度は受診してくれるようになりましたね。
ウォーキングラリーも以前から行なっていましたが、現在は歩数を計測できるようなスマートウォッチや万歩計を支給し、チーム対抗戦で実施しています。優勝チームには賞金やクオカードなどの賞品をプレゼントして、盛り上がれる工夫もしています。
ウォーキングラリーの実施期間は弊社の展示会がある時期に合わせているので、以前は休憩していた時間帯に社員が会場内を歩き回るようになり、商品知識を高めて業績アップにもつながりました。
単にウォーキングラリーをするのではなく、達成しやすい状況や社員が楽しめる環境をつくったことで変化が生まれたのだと感じています。
その他、女性の健康保持・増進や長時間労働の予防対策、受動喫煙対策なども毎年行なっています。
健康経営の対外発信・普及にも力を入れたい
ーー今後の展望をお聞かせください。
ヒューター:ブライト500の認定を受けたことで、新聞などへの掲載依頼が増えて、社外評価が高くなったと感じています。特に新卒者のエントリーは大きく変化していますね。健康経営の取り組みを始める前はエントリー者数80人ほどだったのですが、現在は300人くらいのエントリーがあるので、毎年安定して新入社員を採用できています。
また、お客様や仕入れ先などからも弊社の健康経営の取り組みに興味を持っていただけて「服部商会にはどうしてそんなに新入社員が入ってくるようになったの?」「ブライト500を取得してから雰囲気が変わったと聞いたよ」「話を聞かせてほしい」といったお声がけをいただくことが増えています。今後は、健康経営を対外的に発信・普及していくことにも積極的に取り組んでいきたいです。
ーー最後に読者の方へメッセージをお願いします。
ヒューター:健康経営を知らない時代と現在では弊社内の変化がすごく大きいので、まだ健康経営に取り組んでいない、あるいは、取り組みを検討されている企業にはぜひスタートしていただきたいです。
また、私自身もそうでしたが、健康経営を担当する方はもともとの業務がありますし、健康経営に対する社員との意識の違いに苦労されることもあると思います。弊社では健康経営の知識・経験を活かして応援ができると感じましたので、健康経営支援コンサルティング事業をスタートさせました。
取り組みについて提案できることもあると思いますので、お困りごとがあればぜひ相談していただけたらと思います。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社 服部商会
インタビュアー:青柳和香子
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