
大阪に本社を構える三和建設株式会社は、2018年から5年連続で「健康経営優良法人」の認定を受けています。また2021年からは、同認定制度の中小規模法人部門で上位500社に与えられる「ブライト500」も2年連続で取得しています。
今回は健康経営の取り組みについて、三和建設株式会社の執行役員でアシスト本部長の森本育宏さんと、社長室広報の北纓真弓さんにお話を伺いました。
「つくるひとをつくる」。従業員のケアを重視する三和建設株式会社

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の事業について教えてください。
森本さん(以下、森本):創立は1947年で、ちょうど今年(2022年)で75周年を迎えた総合建設業の会社です。
本社は大阪で、東京本店と京都支店を合わせた全国3拠点となっています。現在の社員数は約160名で、女性の割合が業界平均10%程度といわれるなか、当社は各部門に女性がいて、全体で約30%が女性となっています。
事業はおもに生産・物流施設の建築、設計、施工が中心ですが、近年は飲料や食品を扱う衛生面が担保されるような工場の建設、危険物倉庫の建設などにも注力しています。非住宅で民間の仕事をお受けすることが多いですね。
ーーありがとうございます。健康経営を開始されたのには何かきっかけがあったのでしょうか。
森本:建設業は夜間や早朝の業務があり、勤務時間が不規則になることが多いため、当社でも現場監督の健康状態が不安定な時代が続いていました。
しかし創業100周年という遠くない未来を見据えたときに、会社を「継続」するというよりも「永続」することが大切と考え、従業員の健康は必要不可欠だと感じてさまざまな取り組みを実施しています。
また、当社は「つくるひとをつくる®」という理念を掲げています。ひとづくりが会社の根本であるという前提もあり、従業員の健康をケアする仕組みづくりを始めました。
そして2017年に健康経営優良法人の認定制度があることを知り、これまで実施してきた取り組み内容が該当すると考えて2018年に初めて申請を行ないました。健康経営に取り組むことが採用活動においてプラスになると感じたのも健康経営を始めたきっかけの一つです。
ーー従業員の皆さんの健康について課題だと感じたことはありましたか?
森本:まずは食習慣です。どうしても食事のタイミングが不規則になってしまうので、改善が必要だと感じていました。
また、建設にはいろいろな手法・技法があるので、議論をはじめると時間が長くなってしまいます。外部との打ち合わせによっては夜の10時や11時までかかることもあり、時間外労働の長さも課題でした。
あとは15年ほど前から過重労働によってメンタルのバランスを崩してしまう従業員が少しずつ出てきましたので、メンタルヘルスケアの必要性も感じていました。
毎朝のヒアリングで残業時間を削減

ーー実際の取り組みについて教えてください。
森本:従業員の半数以上は各建築現場に直行直帰するので、労働状況の把握ができず管理が難しい状況でした。
そこで、本社・本店に勤務する従業員が毎朝、現場の従業員一人ひとりに電話をして、簡単なコミュニケーションを取りながら健康状態や残業状態のヒアリングを始めました。
ヒアリングの情報をもとに、マネージャーが本人や作業所の所長に確認を行ない、時間外労働の平均化・削減ができるようになりました。それに付随して作業所での面談も行なっています。この取り組みを始めて5年強で、時間外労働が10時間ほど削減されました。
翌日に持ち越しても問題のない業務、余剰業務を抑えるために、20時以降のパソコン利用を制限するという取り組みも行なっています。
20時以降も利用する場合は上長に申請が必要ですが、日頃からコミュニケーションが取れているので、必要であれば申請しやすい体制になっていると思います。結果として、売上を減らさずに残業時間を削減できました。
従業員の取り組み意欲を高める制度づくり
ーーほかにはどのような取り組みをされていますか?
森本:当社が加盟している健康保険組合では他業種に比べて胃カメラ、バリュームといった項目が充実しており、健康状態がデータとして明確に示されます。A~Eの判定に沿って健康指導も行なっています。
前年度と比べて健康状態が改善された社員は、報奨金を受け取れる制度も設けました。年間5人~10人の申請があるので、効果が出ているのではないでしょうか。健診結果と向き合ったことで健康志向に目覚める社員も多く、メタボリックシンドロームを改善した社員もいます。
メンタルヘルスに関しては提携クリニックがありますので、メンタルダウンの予備軍に該当する社員も含めて、本人の意思と必要に応じて利用してもらっています。通院後に復職した者もいますので、こうしたケア体制は機能していると思います。
社員寮での食事も生活習慣の改善に貢献

ーー現在注力されている取り組みを教えてください。
森本:現場作業所の近くのお弁当屋さんと提携して、健康に配慮したお弁当を食べられるようにしています。
また、当社に入社すると1年目は必ず本社近くの社員寮に入るのですが、3カ月ほど経つとコンビニ弁当やカップ麺を買う社員が増えてしまい、生活習慣病のきっかけになっているのではないかという懸念がありました。
そこで、企業主導型保育園と連携して食事のサポートをしています。保育園常駐の調理師は夕方に手が空く時間がありますので、週に1回当社の社員寮で食事の作り置きをしていただいています。新入社員が帰寮すると、栄養のある食事をとることができます。
ーー健康経営の取り組みをはじめて、社内の健康意識に変化はありましたか?
北纓:喫煙者も減りましたし、少しずつ変化してきたと思います。また、当社では仕事の成果とプライベートの充実感が等しくあって欲しいという思いからワークライフバランスを意識した制度を積極的に取り入れています。時間外労働が減り、離職率が低い状態を保てているのも、取り組みに対する社員の理解がリンクしているからではないでしょうか。
健康経営優良法人の認定を受けてから取材依頼が増えているので、社外からの評価も上がったと感じています。同業他社が健康経営優良法人認定を申請したという声も聞きますので、当社の取り組みが周囲に広がっている実感があります。
時代に合わせて取り組みをチューニングしていきたい

ーー今後の展望をお聞かせください。
森本:喫煙率が低くなったとはいえ、他業種と比較するとまだ高いと感じるため禁煙の推進はしていきたいです。
マラソンをしたりスポーツジムに通ったりといったサークル活動や、レクリエーションの機会を増やしていきたいと思っています。社員がコミュニケーションを取れる環境をつくって、健康意識を自然と持ち続けられるような体制を整えていきたいですね。
北纓:当社では、高度医療費や不妊治療費を補助するなど福利厚生が充実していますので、この点も社外にアピールしていきたいと思っています。健康経営優良法人の認定取得と同様に、当社がアピールすることで他社も福利厚生が充実し、業界全体が良くなればと思っています。
森本:創業100周年に向けて、現在の取り組みを時代に合わせてチューニングしながら変えていきたいです。
ーー最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
森本:健康増進は本人に付随するものなので、最終的に会社が強制できることではないと思っています。まずはコミュニケーションによって健康意識を大切にする組織風土が形成されれば、効果的な取り組みにつながっていくはずです。
今回のような取材から建設業界に興味を持つ方が増えたり、業界内に健康経営が普及して取り組みを始める会社が増えたりすれば、人手不足の課題も解消されていくのではないかと考えています。
ーー本日はお話いただきありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:三和建設株式会社
インタビュアー:青柳和香子
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