
株式会社リビングライフは、東京都に本社を構え、不動産の仲介、分譲、マンション・木造住宅の設計・施工などを行なう総合不動産ディベロッパーです。
健康経営については、社員の食生活改善に力を入れて取り組み、2022年に健康経営優良法人の認定を受けたときには、中小規模法人部門上位500社が認定されるブライト500を取得しました。今回は同社の取締役本部長 石川正さん、次長 中里泰孝さん、杉原樹さんにお話を伺いました。
健康経営を進めていくなかでの目標として、健康経営優良法人の認定を目指した
ーー本日はよろしくお願いします。御社の沿革や事業内容について教えてください。
石川さん(以下、石川):当社は、1990年7月に創業し不動産売買仲介事業からスタートしました。現在では新築マンションの企画・販売、リノベーション、コインパーキング事業などを総合的に行なっています。
少し遅れて新築戸建て販売を行なう東横建設が事業を開始し、1996年3月には賃貸専門のリビングセンター、その後はマンション管理業に特化したリビングコミュニティ、木造住宅建築とリフォーム専門のリビング建設が創業しました。賃貸マンション建築と管理業の朝日建設をグループに加え、リビングライフグループはこの6社で形成されています。
創業の精神として、「住まいから始まる幸せの生活設計を提案します」を掲げ、経営理念には、お客様に感動していただきたいという思いを込めて、「ホスピタリティを大切にし、豊かな人生の実現をサポートします」を掲げています。
総合不動産を業としている当社としては、お客様の暮らしにおいて、さまざまなサポートができる企業であり続けることを大切にしています。
ーー健康経営を始められたきっかけについて教えていただけますか?
石川:2017年から健康経営を始めましたが、20年以上前から当社代表の炭谷は健康について強く意識していました。20年前は、オフィスで喫煙することが一般的であり、喫煙率は高いものでした。そこで、代表の「タバコをやめましょう」という声かけが健康経営への始まりとなり、分煙を進めていきました。現在では、オフィス内全面禁煙となり、喫煙率は大きく低下しています。
さらに、健康経営を具現化するために、目標を「健康優良企業認定の取得」と定め、第一歩として「銀」の認定を受けること、将来的には「金」の認定を受けることを目指しました。併せて、経済産業省が推進している「健康経営優良法人」認定の取得に向けても動き出しました。
生活習慣病につながる食生活の改善に取り組む

ーー健康経営の取り組みを行なうなかで見つかった、社員の健康課題はありますか?
中里さん(以下、中里):「お客さまとの約束で食事を摂る時間がない」という声を耳にしたことから、いつでも社内で食事ができるような食生活のサポートが必要だと感じました。若い社員は「少しくらい食生活が乱れても大丈夫」という考えがあるようですが、悪習慣を継続することで、生活習慣病にかかる可能性が高くなると言われています。予防をいかに進められるかが課題といえますね。
ーーどのような施策を行なってきたのでしょうか?
中里:「忙しくてお弁当を買いに行けない」「外にランチに行けない」というときでも、社内でご飯が食べられるように、各フロア、支店、販売センターなどに炊飯器と電子レンジ、IHコンロを設置しました。お米とさまざまなレトルト商品、缶詰類なども用意しています。さらに、週に1~2回全社員にバナナを配っています。これらは、すべて代表の提案であり、社員の費用負担はありません。
また、大田区が主催している「おおた健康経営事業所」ゴールドの認定を受けたことをきっかけに、大田区から社員の健康推進を目的とした「スポーツ指導者派遣プロジェクト」でコラボレーションしましょうとのお誘いをいただきました。このプロジェクトでは、ヨガや太極拳などの指導を複数回実施していただきました。今年もお誘いしていただき、スポーツ指導者派遣プロジェクトの実施を予定しています。
大田区からは「ランチKAIZENプロジェクト」のお誘いをしていただき、東邦医大と3者で社員の食生活調査に参加しています。社員がアンケートに回答し、結果は個別にいただけるため、一人ひとりの食生活の改善方法をアドバイスしていただけることになっています。社内の傾向については企画総務部にもいただけるので、その結果をもとに、フロアに用意するおかずについてもできるだけ反映していきたいと思っています。

ーー運動不足改善に関する取り組みについて教えてください。
中里:本店、蒲田支店にはエレベータがありますが、生活習慣病予防として階段の利用を推進しています。階段の段差1段毎に消費カロリーやスローガンを貼ることで、健康を意識してもらえるような工夫を行なっています。
正直、取り組み始めた頃はエレベータを使用する社員が多かったのですが、防災衛生委員会、企画総務部からの呼びかけ、代表や役員が自ら階段を使用することで、現在ではほとんどの社員がエレベータを使わずに階段を利用するようになりました。社員の健康への意識も高まってきたと思います。
杉原さん(以下、杉原):私自身、事務所がある5階フロアまで階段の上り下りをしていますが、最初の頃は疲れて息切れしていました。一日に複数回行き来しますが、現在は息切れもなく心肺能力が向上していることを実感しています。

社員の健康意識向上を目指して

ーーいろいろな健康経営の取り組みを行なっていますが、大変だったことはありましたか?
中里:取り組みを始めた頃は、「健康」に対して意識する社員が少なかったことです。若くて健康であり、現在病気になっている社員はいないわけですから当然のことだと思います。
そこで、防災衛生委員会の活動や企画総務部が他部署の朝礼へ参加、社内ネットワークを利用した発信、役員会での健康推進に関する決議など、さまざまな取り組みから状況が少しずつ変化していき、社員の健康意識の向上を実感しています。
さらには、2022年3月に「ブライト500」に認定され名刺などに記載したことから、お客様や他社の方との間で健康経営の取り組みが話題になる機会も増え、社員の健康意識がより高くなっているように思います。
ーー健康経営の取り組みを進めるなかで、社員の方からの反響はいかがですか?
杉原:昨年から実施を始めた、健康セミナーへの参加率は90%以上、ランチKAIZENプロジェクトのアンケートの回収率は80%と高いことが、社員からの反響としてとらえています。
当社では、毎月の防災衛生委員会に産業医の方にも参加していただき、季節ごとのトピックスをテーマに会議をします。その結果について、役員会と共有のうえで健康経営を進めていることが、良い結果につながっていると感じています。
健康経営の効果測定は会社の雰囲気が明るくなっているかで判断する

ーー健康経営の今後の展望について教えてください。
中里:目標としては、継続して「ブライト500」の認定をいただくことを考えています。認定を受けることは、健康経営として取り組んでいる内容に間違いがないとわかる一つの指標となるので、これからも各項目について取り組んでいきます。また、今後は「仕事とプライベートの両立」についても注力していきたいと考えています。
ーー健康に関心のある読者の方や、企業の健康経営担当者の方に向けてメッセージをお願いします。
中里:健康は、仕事やプライベートなどすべての生活の源です。健康に関心を持ち、意識していくことから始めることが大切だと思います。
石川:健康経営は効果測定することが難しいです。例えば、喫煙者が減少したことは数値として見えますが、果たしてそれだけで健康なのかというと難しいですよね。「会社のなかの空気が明るくなって笑顔が増えた」「感謝している人が増えた」ことは、みんなが健康だからというとらえ方をするようにしています。
そのように考えないと、担当者の方もどこに進んだらいいのかわからなくなってしまいます。終わりのない取り組みですので、ほかの企業の方とも情報を共有して取り組みを続けられたらと思います。
ーー本日はお話いただきありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社リビングライフ
インタビュアー:塩野実莉