
愛知県碧南市の株式会社アイ・ステージは、「全員参加」をキーフレーズに、楽しく健康増進を目指す会社です。「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」に4年連続で認定されている同社は、2021年からは上位500社の「ブライト500」にも選出されています。
アットホームな事業所ならではの健康経営について、株式会社アイ・ステージの飛松久留実専務と桃澤美穂さんに具体的な取り組み内容をお伺いしました。
「集う人の満足と幸せ」を追求した健康経営

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の事業内容について教えてください。
飛松専務(以下、飛松):弊社は愛知県碧南市にあり、損害保険と生命保険を扱っている保険代理店です。昭和37年に先代が碧南磯貝代理店という保険の代理店を起業しました。現在の社長が事業を継承し、子代理店との合流を経て、平成25年に株式会社アイ・ステージへ社名変更をしています。
弊社は「集う人の満足と幸せを追求し、地域と社会に貢献します」を経営理念としています。この経営理念を支える3本の柱が「経営品質・健康経営・BCP(事業継続計画)」です。これらは別々に存在するのではなく、経営品質と健康経営が重なり、さらにその2つに重なるようにBCPがあり、3つが重なる部分が経営理念だと考えています。
ここでいう「集う人」とは、社員とその家族・お客さま・地域の方々など弊社を取り巻くすべての人を指します。
この集う人の笑顔と幸せのために会社としてどうあるべきかを社員全員で共有して行動・評価・改善をし、また新たな目標を設定し直すPDCAサイクルが弊社の基盤にあります。
ーーありがとうございます。健康経営を始められたきっかけについてもお聞かせください。
飛松:2017年に「社員とその家族の健康増進に積極的に取り組みます」という健康宣言を出したあと、健康経営の認定制度があることを知りました。健康経営が弊社の経営理念と目指すべき方向が一致していましたので、2018年4月から認定に向けて取り組みをはじめました。
仕出し弁当や手作り野菜を活かした健康づくり

ーー具体的な取り組みについて教えてください。
飛松:一番課題だったのは食生活です。特に、昼食をコンビニ弁当や栄養が偏った外食ですませている社員が多かったこと、いつも片手に缶コーヒーや炭酸系の清涼飲料水を持って帰ってくる姿が気になっていました。
また社員の年齢層が比較的高く、子育てが終わった方もいらっしゃるので、自分のためだけだと食事を簡単にすませてしまう傾向があったんです。
そこで一日一食は健康的な食事をしてほしいと思い、業者さんの仕出し弁当を頼むことにしました。がっつりとした食事を好む人には物足りない内容かもしれないですが、健康的なメニューだと思います。
地元産のしらすや納豆、卵、豆腐、減塩味噌汁なども一緒に提供して自由に食べられるようにしています。炊飯器も購入したので、毎日温かいご飯を提供しています。
ーー昼食の内容が大きく変化して、社員の皆さまからの反響はいかがでしたか?
飛松:とても喜ばれており、いつもみんな残さずきれいに食べてくれています。20〜30代の若い社員にも、やはり親心として一日一食は栄養バランスの良い食事をしてほしいのでうれしいですね。
ーー家庭菜園があるそうですが、収穫した野菜も昼食に使っていらっしゃるのでしょうか。
飛松:会社敷地内の空いた土地を耕して菜園を作りました。初めはゴーヤのカーテンを作りたいと考えたのですが、敷地に余裕があるため他の野菜も植えています。収穫した野菜はサラダや浅漬けにして提供し、残りは社員に持ち帰ってもらっています。
おいしい野菜を育てることができているのですが、今後は全員参加で手入れを楽しむことができるように工夫したいと思っています。現在は一部の人のみで世話をしていますので、みんなで参加できるように働きかけていきたいですね。
「全員」をキーワードに、参加しやすい運動目標を設定

ーー運動面では、どのような取り組みをされていますか?
桃澤さん(以下、桃澤):老若男女問わず参加しやすいように、ウォーキングの習慣化を推進しています。共通の歩数記録アプリを入れてもらって、それぞれの社員が毎日、毎月どれくらい歩いているかを記録しています。
ただ、歩く人は毎日たくさん歩きますが、歩かない人は全然歩かないという差がどうしてもありました。そこで、社員の家族にもそのアプリを入れてもらい、家族で歩くことを推奨しています。経営理念の「集う人」には家族も含まれますので、社内だけでなく家族内でも刺激し合うのを期待してはじめました。
それでも全員参加はなかなか難しかったのですが、試行錯誤の末、今年8月に実施したキャンペーンでは一定の効果を得られました。
「月間12万歩」を理想のゴールとして掲げたのですが、このゴールでは半数程度の人が諦めてしまいます。そこで、今回は誰でも参加しやすいように、社員一人ひとりに個々の目標を定めました。
キャンペーン開始前の過去3カ月程度を対象として一人ひとりの平均歩数を出し、「平均の1.5倍歩いたらこの景品」「2倍歩いたらこの景品」と目標を複数設定したところ、ほとんどの社員が目標を達成して景品を手にすることができたんです。
ーー自分のレベルにあった目標でチャレンジできるようにされたのですね。そのほかにはどのような取り組みをされていますか?
桃澤:肥満は万病の元なので「なりたい自分への目標設定」をテーマとした取り組みも実施しています。今年度は自分のベスト体重を設定し、そこに近づくための目標を決めてもらいました。身長から適正体重と美容体重を計算して参考にしつつも、自分にとってのベストな体重を定めてもらうのがポイントです。
3カ月に1回ほど体重測定をし、目標体重と比較して現状がどのくらい近づいているのかをチーム対抗戦で競います。これを4月から半期に渡って行ないました。
社員の声を聞き、全員参加で楽しめる取り組みを

ーー健康増進の取り組みを進めてこられて、社内での反響はいかがですか?
飛松:先日アンケートを実施して、今まで実施した個々の取り組みについて、5段階の評価と感想を書いてもらいました。
昼食については「ありがたい」「助かっている」という声が多かったです。ウォーキングに関しても「家族とのコミュニケーションが取れて嬉しい」「ご褒美がもらえて嬉しい」「継続的に運動する意識づけができた」というポジティブな声を多くいただきました。
一方で、意外だったこともあります。私たちとしては「なりたい自分への目標設定」に一番力を入れていたのですが、「今後も続けてほしい取り組みは何ですか?」の設問でこの取り組みを選ぶ人が少なかったんです。
「体重の増減ばかりに注目する点がイマイチだった」という意見をいただいたので、もう少し改善の余地があると考えさせられました。
桃澤:また、これまでは企画をこちらで考えて提案するという一方通行の取り組みが多かったと感じています。「全員参加」のためには、今後も皆さんの意見を取り入れながら企画を考え、参加するモチベーションを上げていきたいですね。
ーー今後の展望をお聞かせください。
飛松:外部の保健師さんと相談をして、今年から社員一人ひとりとの面談をお願いするべく計画中です。
健康診断結果から保健指導対象となった方は保健指導を受けられますが、そうでない人でも何かしら不安に思っていることがあるのではないでしょうか。保健指導対象かどうかに関係なく個人面談をすることで、悩みを解決する糸口になればと思っています。
また、以前の社内アンケートで、実は禁煙したいと思っている喫煙者がいるとわかりました。面談をしていただく予定の保健師さんもかつては喫煙者だったとのことなので、ご自身の禁煙経験と医療面、両方から禁煙へのアドバイスをしていただくようお願いしています。
ーー最後に健康に関心のある方や、健康経営を目指す企業の方へメッセージをお願いします。
飛松:健康経営の取り組みは社員が「やらされている」と感じずに、社員全員で楽しめるのが理想だと思います。これは弊社の課題ですが、今後はもっと社員側からリクエストが上がってくるようにできたら良いですね。
桃澤:今回のアンケートの最後に「健康経営に参加してみるのはどうですか?」という設問を入れたところ、「単発なら」「お手伝い程度なら」という声がありました。徐々にでもより多くの社員が健康経営に関わることで、自分ごととして健康に向き合っていく人が増えるのではないでしょうか。
健康経営の推進はやってみると楽しいですし、取り組みに関わる方が増えると、より一層全社で取り組む健康経営になっていくかと思います。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社アイ・ステージ
インタビュアー:青柳和香子