
深澤電工株式会社は、富士山の麓である静岡県長泉町に本社を置く電子機器メーカーです。品質・改善・納期にこだわり、信頼される「ものづくり」を行なっています。
健康経営制度が始まる前から、全従業員が一緒に気持ちよく働ける職場を目指した取り組みを行なっており、昨年度は健康経営優良法人ブライト500の認定も受けました。
今回は健康経営への取り組みや今後の課題について、同社代表取締役社長の深澤好正さんと、常務取締役の深澤優子さんにお話を伺いました。
全従業員に健康でいて欲しいという思いが健康経営の取り組みへつながった

ーー本日はよろしくお願いいたします。まず御社の事業内容や沿革について教えてください。
深澤好正さん(以下、深澤好正):弊社は昭和37年に創業した静岡県駿東郡長泉町に本社をもつ会社で、来年創業60周年を迎えます。
業種はおもに電子機器の組立、製造および設計開発で、4年ほど前からは高いレベルの品質が求められる医療機器と福祉機器の製造・開発も行なっています。
ーー健康経営を始められたきっかけを教えてください。
深澤優子さん(以下、深澤優子): 弊社はもともと「従業員および家族を大切にし、安全で健康でいきいきとした」会社を目指すことを方針としています。
しかし近年、適応障害で休職したり、病気で入院したりする従業員がおりまして、健康の大切さをあらためて感じていました。
ちょうどその頃、協会けんぽや静岡県から「健康経営」という言葉を聞くようになり、弊社でも取り組むことになったんです。
今年度より対応窓口を増やし取り組みを強化

ーー具体的な施策について教えてください。
深澤優子:社内に取締役社長をトップとした健康経営推進プロジェクトを設置して、その下に衛生管理者・安全管理者を設けました。今年度はさらにメンタルヘルス、ハラスメント相談窓口や健康相談窓口、女性疾病相談窓口、感染症対応相談窓口を増やし、取り組みの強化を図っています。
またメンタルヘルス対策・感染症予防対策・健康診断および再検査完全実施・適正な働き方・健康活動取り組みを大まかに6つの「健康宣言」とし、期初に1年の取り組み内容と目標を設定して毎月管理を行なっています。
それから健康に関わる勉強会や健康情報の案内をして、ウオーキング、ラジオ体操、オンラインヨガなどの活動を行なった際には、ホームページとブログにて従業員や外部の企業、個人の方向けに活動の様子を発信もしているんですよ。
外部支援体制については産業医、管理栄養士、社会保険労務士、保険会社、銀行、中小企業診断士によって組織化されています。
深澤電工はいつまでも働き続けることができる会社

ーー御社には定年がないそうですが、それはなぜでしょうか?
深澤好正:弊社は健康で働きたいという意欲がある方であれば、何歳でも適材適所で働く場を設け、いつまでも働き続けることができる定年がない会社です。
現在、障がいのある方が5人働いてくれていて、高齢の方は83歳を筆頭に75歳、71歳と全従業員の約2割が65歳以上です。
長時間働くのは体力的に厳しいという方は、週3日勤務や1日5時間勤務と勤務体制を変えればいいだけのこと。雇用というのは、会社側と従業員が話し合いをして、お互いがよければ成立するものだと思っています。ですので、定年は設けていません。
ウオーキングで職場内のコミュニケーションが活性化

ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことはありますか?
深澤好正:いろいろと試行錯誤しながらも、健康への取り組み活動を行なっているのですが、参加率が低いことが課題ですね。また、健康な人のほうが参加する傾向にあると感じています。
本当は全従業員に参加して欲しいのですが、なかには「自分の時間だから」「やりたくない」という人もいて強制することはできません。
まだ取り組みを始めたばかりなので、全員がこちらを向いてくれるように取り組んでいきたいと思います。
ーー参加者からの反響はいかがでしょうか?
深澤優子:たしかに初年度の参加率は低く、半分いくかどうかでした。しかし今年度は、毎回7割ほどの方が参加してくれるようになりました。
弊社のすぐ隣には桜並木があって、天気の良い日にウオーキングをすると、じんわり汗をかいてとても気持ちがいいんですよ。
距離をあらかじめどこまでと決めてしまうと負担になってしまうので、参加者がそれぞれ快適に感じるところまでいって、帰ってくるということにしています。
私自身、常務取締役という立場上、普段の業務のなかでは、お話ができる方は限られてしまっています。しかし、ウオーキングで外へ行くと、皆さんとお話することができてうれしいです。
こうやって今まであまり話せなかった社員同士が世間話をしながらウオーキングをすることで、健康になるだけでなく、会社の生産性、品質性といったところにもつながっていくのかなと期待しています。
活動時間を工夫し全員が参加できる体制を整えたい

ーー健康経営について、今後の目標や注力されていることがありましたらお聞かせください。
深澤優子:現在オンラインヨガを行なっていますが、意外なことに男性社員が熱心に参加してくれているんですよ。評判も良いので、今後も続けていきたいですね。
今はこのオンラインヨガやウオーキングを昼休みや勤務終了後に行なっていますが、今後は就業時間内に行なうことができたら、参加率も増えるのかと思っています。
なるべく全員が参加できる条件をクリアして、幅広い人が参加できるように整えていきたいですね。
弊社のような中小企業ですと、お金がかかることを始めるのはなかなか大変です。実際、なるべくお金をかけないように、ラジオ体操やウオーキングから始めました。
しかし次年度に向けては、例えば万歩計を渡して、1日にどれくらい歩いているのかをグラフにしても良いのかなと思っています。
まだまだ課題はたくさんありますが、少しずつ前進していけたらいいですね。
ーー最後に、健康に関心のある読者へのメッセージをお願いします。
深澤:私自身、「健康経営」に取り組むまで、健康については特に意識していませんでした。ところが実際に体を動かしてみると、気持ちがいいですし、社員同士のコミュニケーション活性化にもつながりました。
健康経営を推進することにより、従業員一人ひとりが心身ともに健康で幸せな生活を送ることができると感じています。
本人の希望どおり働き続けられることも幸せの一つ。それが社員の幸せであり、会社の繁栄にもつながり、また地域社会の活性化にもつながっていくのではないでしょうか。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:深澤電工株式会社
インタビュアー:島田佳代子