
リライアンス・セキュリティー株式会社は、広島県に本社を構え、近畿・中国・九州地方にも事務所を置く警備会社です。多くの人が出入りする施設警備やイベント会場・駐車場などの雑踏警備を行なっています。
防犯功労団体としての表彰歴もあり、顧客の安全や地域の防犯に貢献するとともに、従業員の健康を考えた施策によって2022年度は「健康経営優良法人(中小規模法人部門)ブライト500」の認定も受けています。
今回は同社の有田さんに、健康経営の施策や取り組みによる効果などを伺いました。
お客さま主義を理念に、高品質な警備サービスを提供

ーーよろしくお願いします。まずは、御社の沿革やおもな事業内容について教えてください。
有田さん(以下、有田):弊社は施設警備や雑踏警備などの人的な警備を行なう警備会社で、2002年8月6日に設立し、今年で会社設立20周年を迎えました。
「リライアンス・セキュリティー株式会社とは、お客さま主義集団である。」という企業理念を掲げています。これは、一般に広く知られる顧客第一主義ではなく、他社の追随を許さない高品質な警備サービスを提供することで、お客さまに満足と感動を提供し、社員みんなで幸せになろうといった内容が込められています。そのため会社設立以来、一貫して社員教育に注力し、品質向上に努めてきました。
対面での仕事において従業員の健康は欠かせないこと
ーー健康経営を始められたきっかけや、健康経営優良法人の申請に至った経緯を教えてください。
有田:警備はお客さまと対面での仕事になるため、弊社では10年ほど前から夏場の熱中症対策や冬場の感染症対策などに力を入れ、従業員の健康を意識してきました。
近年、真夏に35度を超える日もあり、過去には現場で熱中症になって救急搬送された事例もあります。冬場はインフルエンザなどの感染症にかかるリスクがありますよね。感染症にかかったことで1週間ほど仕事を休むことになると、ほかの従業員に業務上の負担が増え、お客さまに迷惑をかけることになるかもしれません。
こういった問題への対策として、健康経営という言葉を知る以前からさまざまな取り組みを行なっており、従業員が心身ともに健康で働ける環境整備が、会社成長にも不可欠であると考えています。
健康経営優良法人の認定は、2022年の3月に初めて受けることができました。毎日、目にする週間行動実績に申請期限を貼り、常に意識しながら取り組みを進めた結果、これまでの弊社の活動が認められて「ブライト500」にも選んでいただくことができました。
日々の健康管理だけでなく再検査・治療も促進
ーー従業員の健康状態について改善が必要だと感じたことはありますか?
有田:以前、特に持病もなく、直前に体調不良を訴えていたわけでもないのに、突然連絡なしに欠勤した社員がいたのですが、確認したところ、自宅で亡くなっていたことが判明しました。大変ショックを受けた出来事です。
健康の大切さを痛感し、健康診断の受診や再検査および治療の促進を強化していく必要があると感じました。有所見者と診断されてもなかなか病院に行ってくれない人もいるため、そうした人たちに粘り強く声かけし、再検査や治療を促しているところです。
ーー健康診断の受診や再検査について声かけをするようになってから、受診率は向上しましたか?
有田:現在は、基本的に対象者が100%受診できている状態です。以前は何度声かけしても行ってくれない従業員がいましたが解消されました。
巡察により従業員の健康状態を直接確認する

ーー健康診断の声かけのほか、実際に行なわれている施策について教えてください。
有田:一昨年に新型コロナウイルス感染症が拡大してからは、「社員の健康と命を守る経営」を社内外に宣言し、対策を強化しました。アルコール消毒液やマスクの配布もいち早く実施し、2020年4月30日には全国の警備会社で初となる慰労一時金の支給もしています。外出機会を減らせるようにと、全従業員を対象にホテルで提供されるような「いなりずし」や「肉巻きおにぎり」などの冷凍食品の配布も行ないました。
また、弊社で一人暮らしをしているシニア従業員から「もしも自宅にいるときに倒れたら誰も119番通報をしてくれないから、そのまま亡くなってしまうのではないかという不安がある」と社長が相談を受けたことから、2021年3月より緊急通報装置を会社で手配し、希望者に配る取り組みを行なっています。
ーー御社は警備現場への巡察にも力を入れていると伺いました。詳しく教えていただけますか?
有田:従業員の警備現場への巡察の徹底は他社にはない大きな強みです。例えば7月の梅雨明けから8月末にかけての暑い時期は、熱中症対策巡察を実施しています。この巡察では塩タブレットやスポーツドリンク、凍らせた水の配布などを行ない、現場で直接熱中症への注意を呼びかけています。今年は塩タブレットを26kg、水分は1t以上を現場の警備員に配布しました。
現場での警備業務は、直行・直帰での勤務が基本です。そうすると普段は電話でしか本人と話すことができませんが、電話の声だけでは十分に健康状態の確認ができません。巡察時に直接会って話をすることによって、体調や睡眠時間、朝食を摂っているかなど細かなところまで確認することができ、現場での仕事ぶりを見ることもできます。従業員のささいな不調も見つけやすくなり、健康意識の向上と健康維持に寄与する、全国随一の取り組みができていると思います。
それから、冬は寒いなかで警備することもあるので風邪を引きやすくなります。寒さ対策として防寒用の上着は貸与していましたが、従業員の健康を重視するために昨年の冬からは防寒ズボンとベストも用意し、より暖かい格好で働いてもらえるようにしました。
会社として従業員を守る対策が生産性にもつながる
ーー健康経営に取り組まれるなかで、大変だったことはありますか?
有田:新型コロナウイルスの感染拡大を受け、従業員へのマスク配布をしようとした際に、なかなか購入できなかったのは大変でした。2020年の2月からアルコール消毒液の配布を始めましたが、マスクの購入先を見つけるのが大変で、ようやく入手できたのは4月に入ってからという状況でした。このとき3万枚を手配したものの、価格が高騰していたため、マスク代だけで200万円以上かかりました。
私たちの仕事は対面でしかできない仕事です。お客さまの安全を守る従業員は誰が守るのかといえば、それは会社にほかなりません。入手の困難さや費用面での大変さはありましたが、会社の責務として取り組みました。
ーー従業員の健康に対して取り組まれてきたことで、どのような反響がありましたか?
有田:新型コロナウイルス感染症が広がり、対面での仕事への恐怖から退職者が出ないか不安視していましたが、それを理由に辞めた従業員は一人もいませんでした。それは弊社の健康経営の施策や、以前から取り組んできた従業員の健康を守る取り組みによって、会社から大切にされていると感じられたからのようです。
こうした部分が従業員自身のリスクマネジメント強化や、働きがい、満足度につながり、生産性も向上していきました。その結果、新型コロナウイルス感染症が広がったあと、過去最高売上を3期続けて更新しています。
今後は従業員への個別サポートも検討
ーー健康経営について、今後の計画や目標についてお聞かせください。
有田:これまでは、従業員の健康と命を守るということに重点を置いてきました。今後はもう一歩踏み込んだ、一人ひとりの健康づくりや健康維持、増進についての取り組みをしていきたいと考えています。具体的には、健康管理アプリの導入や健康づくりにつながるイベントの実施などです。
現在、最高齢の従業員は男性が81歳、女性が71歳ですが、こうしたシニアの方が5年後も元気に働けることを目標として、今後も健康経営を推進していきます。
認定を受けることが従業員の働きがいにつながることもある
ーー健康に関心のある読者の方や、企業で健康経営に取り組む担当者の方へのメッセージをお願いします。
有田:健康は当たり前のものではありません。現代の生活習慣では健康維持することは難しいことだと思います。病気になれば病院で治せばいいという考えではなく、生活習慣や食事、睡眠など健康について見直し、日々積み重ねていくことが大切ですね。
健康経営を担当している方は、取り組んでみようと思ってもどのようなことから始めれば良いのかわからないといったこともあるでしょう。実際に弊社もそういった時期がありました。健康経営は「いろいろなことをしなければならない」というものではなく、「働く皆さんの健康のためになること」を行なうものです。自社でできることを一つずつ見つけて実践するところから始めてみてはいかがでしょうか。
健康経営優良法人の申請には費用もかかりますが、高額なものではありません。2023年度分はもう締め切られていますので、次回以降の申請を目指して要件を確認してみてください。どのような取り組みが該当するかなどの基準が書かれており、社内での取り組みを進めやすくなると思います。
また、健康経営優良法人に限らず、国や自治体によるさまざまな認定・登録制度があります。こういった取り組みの推進が従業員の働きがいや意識向上につながることもあると思います。ほかの企業さまもこういった制度を調べて、良いものがあれば取り組んでみてはいかがでしょうか。それが他社との差別化や、従業員がそこで働く意義になっていくかと思います。
ーー本日は、お話いただきありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:リライアンス・セキュリティー株式会社
インタビュアー:塩野実莉