
長野県松本市に本社を構えるルピナ中部工業株式会社は、上下水道や空調設備の施工や修理、リフォームなどを行なう会社です。「健康経営優良法人」の認定を5年連続で取得しており、2021年からは取り組み内容が優れた上位企業として「ブライト500」にも2年連続で選出されています。
また、同じ「ブライト500」に選ばれた他社との合同研究会に参加し、意見交換もしながら取り組みを推進している同社。
今回はルピナ中部工業株式会社の工事部の江畑晶さんにお話を伺いました。
一人の不調が会社に与える影響を痛感

ーーまず、御社の事業内容を教えてください。
弊社は上下水道設備、給排水衛生、空調設備に関する業務を展開する会社です。学校や博物館、公民館といった公共施設の設備工事やトイレなどの衛生器具のリフォームのほか、個人住宅の修理や保守点検を行なっています。
ーー御社は健康経営優良法人を5年連続で取得されています。健康経営を始められたきっかけについて教えてください。
健康経営を行なうきっかけとなったのは、2012年から2013年にかけてのインフルエンザの大流行です。
一人が体調を崩し休んだときは誰かがカバーをするのは当たり前ですが、小さな設備会社ではそのカバー業務がとても大変です。一人で複数の現場をかけ持ちせざるを得ない状況になってしまうと健康な人までもダウンしてしまいます。「従業員一人ひとりが健康で、インフルエンザにかからないような体づくり・体制づくりをしないと会社が立ち行かなくなる」と、社長もかなりの危機感を感じたと話していました。
そこで働く世代の健康を考え、ウォーキングやストレッチなどの簡単な取り組みから始め、松本市の支援を受けながらルピナ独自の「健康プログラム」を実施しています。
健康経営優良法人の認定は5年連続でいただいており、2021年からは2年連続で「ブライト500」にも選ばれました。
年代別で多種多様な健康づくり

ーー「健康プログラム」とはどのようなものですか?
松本市から派遣されている健康運動指導士や交流分析インストラクターの資格を持つアドバイザーの方々に運動の機会となるような企画の提案・協力をいただいて、月に一度、全従業員を対象にした運動の取り組みを実施しています。
町内の公民館やスタジオでストレッチ・ヨガやフラバールバレー、卓球・キックベース・バドミントンなどを実施してきました。また松本市の特徴でもあるアップダウンのある地形を利用し、会社近くにあるアルプス公園でウォーキング講座を開講、坂道を歩き汗を流しています。
今年4月からは従業員からの要望で、それぞれの運動能力に合わせたプログラムに取り組んでいます。20代と50代では体力も運動能力も違いますし、男女差もあります。どちらかのレベルに合わせた一律の内容だともう片方のレベルの人がついていけない、あるいは物足りないという声が挙がってきまして。
それを改善するために、ヨガやボクササイズ、ストレッチなどそれぞれ専門のインストラクターの先生方が内容を考えてくださり、「ヤング」「ミドル」「オールド」という3つの年代別チームに分かれて活動するようになりました。各チームの人数はそれぞれ10名ほどですね。
同じヨガでもヤングチームはアクティブなポーズを、オールドチームはソフトなものをという具合に、運動能力に合わせた内容で取り組めるようになり、いろいろな意味でほっとしています(笑)。
喫煙・間食の代わりに毎日2回のストレッチ

ーー運動以外ではどのような取り組みをされていますか?
2021年4月から敷地内禁煙とし、工事現場も含めて会社に関わる場所での喫煙を禁止しました。それと同時に業務時間中の間食も禁止にして、10時と15時は音楽に合わせて軽いストレッチをする時間にしました。これは「1015motion(イチゼロイチゴーモーション)」と呼んでいます。
ーー間食もなしにされたのはなぜでしょうか?
内勤の女性陣などは10時や15時に気分転換と称しておやつを食べることがよくありましたが、喫煙者だけに嗜好品をやめる努力を求めるのではなく、この際「ついつい食べてしまう」生活習慣を見直そう!という気運が高まり、間食もやめてみよう!となりました。なかなかつらいときもありますが……なんとか続いています。
健康プログラムで指導いただいているストレッチの先生にご相談したところ、従業員それぞれが抱える体の悩み(腰痛・肩こり・膝痛)に合わせた運動方法の資料も用意してくださいました。
有志4社による「健康経営ブライト500研究会」

ーーブライト500に選ばれた中小企業有志4社による合同研究会があるそうですね。
同じ長野県の高木建設さんと、東京の浅野製版所さん、サイショウ.エクスプレスさんとの4社で月に一度、健康経営に関して相談し合う場を設けています。弊社社長の柳沢が出席した講演会がきっかけでこの研究会が発足しました。
研究会に参加している健康経営担当の女性同士で話し合うこともあります。例えば高木建設さんから「生理カルタ」というものを紹介いただいたことがありました。「このお腹の痛み、誰もわかってくれない」「生理用ナプキンのおつかい、夫が買ってきたのは欲しかったやつじゃないけれどありがとうとしか言えない」など、生理中の女性にとって「あるある」の気持ちや出来事がカルタになっているんです。
共感度の高さとおもしろさが女性社員同士で女性の健康問題について話し合うきっかけになり、一人一枚「女性のお悩みカルタ」を作って発表するワークショップを4社合同で実施しました。
各社でテーマを出し合い、女性目線での職場でのもやもや感、PMSや更年期特有の症状の悩みなどを取り上げ集めたものを、イラストレーターの方が50枚すべてイラストを描き下ろしてくださって。
実はそのカルタ、11月末に完成したばかりなんです!参加した女性たちのアイデアがぎゅっと込められた素敵な仕上がりになっています。ぜひ社内でカルタ大会をして男性の方々にも自分の奥さんやお母さん、彼女さんがどのようなとき、どのようなことでもやもやしているのか、どのような体調不良と日々闘っているのか少しでもわかってもらえたらいいな、と思っています。
ーー4社合同の研究会で相談し合うことに、どのようなメリットを感じていらっしゃいますか?
地域を越えて他社さんと意見交換したり企画を実行できたりと、すごく大きな経験になりました。社内の課題や健康経営の進め方などに悩んでいるのは自分だけではないと共感できたのも良かったです。
実はご報告がありまして、この研究会で取り組んだ合同禁煙プロジェクトや女性の健康セミナー開催が厚生労働省主催の「第11回健康寿命をのばそう!アワード」で評価をいただき、生活習慣病予防分野で厚生労働大臣優秀賞を受賞しました。やっぱり評価をいただけるとものすごく励みになりますし、4社で取り組んだことが褒められて「よっしゃ、やった!」という気持ちになりました。
健康経営の施策がコミュニケーションのきっかけに
ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことはありますか?
現在は健康プログラムが定着しつつありますが、始めた頃は不満の声もよく寄せられたと社長から聞いています。
なかでも「仕事を切り上げて、わざわざ16時に集まりプログラムに参加するのが大変だ」といった声が多かったようです。公共施設の工事はさまざまな条件下で作業が制限されることもあるため、集中して進めたいときに会社で運動をするために現場を抜けることなどがかなり大変だったようです。
でも続けていくうちにだんだんと会社の習慣になっていき、今では良い効果が出る取り組みとして受け入れられてきています。私もそうですが体を動かす前は「なんだか面倒だなぁ」と思っていても汗を流すとすっきりしたり、苦手だと思っていた運動が意外とできたりといった発見がありますね。
同世代の従業員同士でも部署が違うと関わる場面が少ないのですが、年齢別のチームで行なう健康プログラムは交流する機会になります。団体競技では上司と部下という関係を超えて協力し合う場面も出てきますから、お互いを知る良いきっかけになって、コミュニケーション活性化につながっているように思います。
地域の良いものや、地域のなかでのつながりの魅力を発見したい
ーー健康経営について、今後の目標や注力されていくことがありましたらお聞かせください。
間食をなしにしましたが、「体に良いおやつ」を運動のご褒美として食べることにしてはどうかと、社長への提案を考えています。健康に良いものを紹介して、食への関心や体に良いものを選ぶ意識を持つきっかけにできないかと思っています。例えばナッツやくるみは脳に良いといわれていますよね。長野県はくるみの名産地なので、そうした情報も活用して提案に生かせればと思います。
社内の取り組みを実行するには、裏方でがんばってくれている人の協力も欠かせません。例えば健康プログラムは体育館を借りたり、社内に通達したりと、陰で取り組みを支えてくれている人たちがいます。企画をみんなで楽しむだけでなく、取り組みを続けるにはそういった目立たないがんばりがあることも社内に伝えていきたいですね。
また、健康経営ブライト500研究会でご一緒している高木建設さんは同じ長野県の企業さんなので、2社合同での企画もできたらと話し合っています。社外との交流によって新しいアイデアが生まれることもありますし、大人が真剣に遊べる企画ができれば良いなと思っています。
ーー健康に関心のある読者や、健康経営に取り組む企業のご担当者へのメッセージをお願いします。
メッセージというより弊社からの切実なお願いなのですが、禁煙したくなる言葉や禁煙できたきっかけについての体験談をお聞かせいただけたらと思っております。
弊社では敷地内禁煙を実施していますが、喫煙習慣のある人にとって禁煙は本当に難しいものです。社内で実施したアンケートによると、喫煙者側も健康に良くないとわかってはいるものの、実行できない様子が伺えます。
喫煙者がハッとさせられるような一言や、なるほどと思える体験談があれば、今後の取り組みに役立てたいと思います。皆さまのご意見をお聞かせいただき、ともに健康経営を推進していきたいです。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:ルピナ中部工業株式会社
インタビュアー:青柳和香子
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