
愛知県名古屋市にある日本ぱちんこ部品株式会社は、盤面の心臓部となるユニットを中心に、周辺機器の企画からデザイン、設計、製造販売までを手がける企業です。近年はパチスロ部品の開発・製造にも着手しています。
快適な職場環境のなかでこそ高い品質の製品が生まれるとし、従業員が働きやすい環境を整え、「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」の認定を取得しています。
今回は同社の管理部人事総務課 小室さんに、健康経営優良法人の認定に至った社内制度や取り組み内容についてお話を伺いました。
遊技機の部品製造を一貫して行なう「日本ぱちんこ部品株式会社」

ーーまず、御社の沿革やおもな事業内容について教えてください。
小室さん(以下、小室):弊社は社名のとおり、遊技機部品を製造している会社です。遊技機の顔ともいえる盤面ユニットを中心に、遊技機メーカーから依頼を受けて各種部品を企画から設計、試作、検証、製造までを一貫して行なっています。
1966年12月に設立し、その後1988年2月に現在の社名である日本ぱちんこ部品株式会社に変更しました。
社内制度の充実が認定取得につながる
ーー御社は健康経営優良法人の認定を取得されていますが、認定に至った経緯を教えてください。
小室:健康経営優良法人の認定を知ったのは、当社が加入している愛鉄連健保組合からのお知らせです。そこで内容を知り、要件を見ていると現状の社内制度や取り組み内容で取得できそうだったので申請に至りました。認定取得に向けて特別なことをしたわけではなく、すでに行なっていた社内の取り組みが評価されたという形になります。
弊社の職場環境や各種制度について、我々はそれがあたり前の状態になっており、特別優れていると感じていませんでしたが、健康経営優良法人の認定要件を見ていると、多くの項目を満たせていたのは意外な発見でした。
ーー従業員の健康状態について、気になる点や改善が必要と感じていた部分はありますか?
小室:製造業という職業柄もあってか、喫煙率が高いのは気になる点です。喫煙者の割合は4割以上にもなり、何らかの対策が必要ではないかと感じています。社内では以前より喫煙所を各フロアに設置し、分煙を徹底しています。
健康診断結果から見える課題としては、コレステロール値や中性脂肪の値が年々悪化している従業員が増えているようにも感じます。これは、社員の高齢化に起因するもので、当社は離職率が低く、平均年齢が毎年1歳ずつ上がっていく状態のため、このような結果になっているのかもしれません。
従業員自身も年齢とともに健康への意識が高まるようで、40代以降になると運動したり食生活に気を使ったりと、自発的に行動する様子が見られます。
柔軟な勤務を受け入れ、有休も取りやすい職場環境
ーーそれでは御社で行なっている施策について、具体的に教えてください。
小室:健康診断は巡回健診を実施しており、100%受診できるようにしています。また、45歳以上の従業員は巡回健診を人間ドックに替えて受診できます。巡回健診・人間ドックの費用は全額会社が負担し、受診時間は勤務時間として扱っています。巡回健診・人間ドックの費用については、加入している愛鉄連健保組合からの補助もあり、活用させてもらっています。再検査受診の促進も協力してもらえる体制があり、非常に助かっている部分です。
インフルエンザ予防接種は正社員や派遣社員といった雇用形態に関わらず、全員が会社負担で受けられるようにしています。それも社内で、職域接種という形で受けられるようにし勤務時間に実施します。
新型コロナウイルスワクチン接種でも、回数に関係なく接種当日とその翌日に特別有給休暇を付与し、通常の有給を消費せずに副反応に備えられるようにしています。また、罹患した場合もしっかり休んで感染を広げないために、特別有給休暇を付与しました。
病気治療や子どもの送り迎え、介護など、各自の都合に合わせた時短勤務も柔軟に認めています。
例えば、法律上、育児による時短勤務を認めるようにとされているのは、子どもが3歳になるまで。それ以降から小学校入学までの間、時短勤務を認めるかは企業の努力義務です。しかし、当社はそれを杓子定規にあてはめるのではなく、場合によっては子どもの小学校入学以降も時短勤務を認めています。
当社では有給休暇を取得しやすい社内文化があり、必要なときに気兼ねなく休めるのが、働きやすさにもつながり、離職者の少ない職場にできているのかもしれません。
ーー健康診断や予防接種、時短勤務などの手厚さが働きやすさにつながっているのですね。ほかにも福利厚生として取り組まれていることはありますか?
小室:最近は朝食を抜く人が多いため、就業前に少しでも体に良いものを朝食として選べるようにと、栄養補助食品の自販機を設置しました。ほかにもウォーターサーバーやドリンクサーバー、豆から挽くコーヒーメーカーも福利厚生の一環として以前から導入しています。
愛鉄連健保組合の力添えが健康経営をあと押し
ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことはありますか?
小室:正直、すでに実施していた内容を申請したら認定取得できましたし、大変と感じた部分は特にありません。当社が加入している愛鉄連健保組合とタイアップして進めていけば、ほとんどの要件を満たせるような状況でした。
社内制度についてはこちら側で対応しなければなりませんが、健康に関する情報共有や定期健診・再検査受診の促進も協力してくれて、とても助かっています。
強いて大変な点を挙げるとすると、コミュニケーション促進の部分でしょうか。健康経営優良法人の申請ではほとんどの項目をクリアできましたが、ここだけは取り組み不足との評価を受けました。
ただ、現状コロナ禍にあることを考えると、積極的に人を集めてのコミュニケーション機会はためらわれます。どのような方法で機会を設けるのか、悩ましいところです。
健康経営により女性の求職者も急増
ーー取り組みの結果、社内外からの反響はいかがでしょうか?
小室:健康経営優良法人の認定取得にあたって、特別な取り組みをしたわけではなく、これといった反応を社内から聞く機会は今のところありません。
ただ、育児や介護、病気治療との両立などが問題で辞める社員がおらず、離職率が低い状態にあるのは、働きやすい社内制度が整っているからだと思います。
健康診断の巡回健診や会社負担で受けられる人間ドックを活用してもらい、健康問題の早期発見・早期治療に役立てばと思っています。
また、健康経営を行なっていることで、求職者からの注目も非常に集まっています。当社は女性従業員が少ない傾向にありましたが、最近実施した就活生向けセミナーでは、女性の求職者が非常に多く集まり驚きました。
なぜ当社の話を聞きに来たのかと確認したところ、健康経営のマークがある点を挙げていて「社内制度が手厚く、結婚後・出産後も長く働ける会社なのでは?」と感じたそうです。こういったところへの反応がすごく敏感だと実感しました。
認定取得によって意識の変化や対外的な効果を実感
ーー健康経営について、今後の計画や目標、注力されていくことがありましたらお聞かせください。
小室:これまで自分自身の健康や会社の施策内容についてどう思っているか、従業員の反応を確認する機会がなかったので、社内アンケートを実施しようと考えています。
また、健康器具メーカーや医薬品メーカーから健康関連のセミナーをお誘いいただいており、いくつかやってみようと思っています。脂肪が付きにくい食事の順序とか、理想的な咀嚼回数についてのセミナーなど、一度計画もしたのですがコロナ禍もあって頓挫してしまいました。また仕切り直して、興味を引くテーマのものがあればやってみたいと思っています。
ーー健康に関心のある読者や、企業で健康経営に取り組まれる方へのメッセージをお願いします。
小室:健康経営優良法人の認定を取る以前は、書類を出すだけのものという認識でしたが、認定後は継続しなければ、維持しなければという意識が高まってきました。その結果、健康に関する話題が目に付くようになり、健康への感度が高くなったのは間違いなく良いことです。こうした変化が、一人ひとりの健康にもつながっていくのではないでしょうか。
また、健康経営を実践しているということは、対外的なアピールとしても有効であると実感しています。特に新卒採用では、健康経営のマークを見て応募してくるケースが増えています。学生自身が調べているだけでなく、大学の就職課でも会社が取得している認証について説明しているらしく、就職先選びの材料にされているようです。
健康経営は会社経営においても採用力強化や生産性向上につながり、非常に有効だと思います。加入している健保組合等の協力も得て、できることからやってみましょう。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:日本ぱちんこ部品株式会社
インタビュアー:朝本麻衣子