1946年創業の鳴海製陶株式会社は、今の本社がある鳴海の地に、1938年に名古屋製陶株式会社がドイツ式陶磁器工場を建設し、生産を始めたことがルーツにあります。終戦後に残されたわずかな設備から、鳴海製陶は良質な陶磁器生産に再挑戦しました。
その後1965年、当時は非常に困難とされていた高級磁器「ボーンチャイナ」の量産化に成功し、家庭用洋食器「ミラノ」は国内外に広く普及する存在となりました。
そして「人々の幸せこそが企業活動の源」を企業コンセプトに、健康保持・増進の取り組みも推進。2020年9月に健康経営宣言をし、2022年度には「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の認定も取得しています。
今回は同社の総務部 渡邉さんに健康経営の取り組みや認定取得に至った経緯を伺いました。
洋食器や耐熱ガラス部材を製造・販売
ーーよろしくお願いします。まずは、御社の沿革や事業内容について教えてください。
渡邉さん(以下、渡邉):弊社は愛知県名古屋市緑区に本社を構える窯業メーカーです。1946年創業で昨年75周年を迎え、現在100周年を目指して事業を行なっています。事業内容としては食器と産業器材の2つの事業を展開しています。
食器事業ではおもに百貨店や専門店を通じての販売とオンラインショップでの販売を行なうほか、有名ホテルのレストランや宴会場、航空会社で使われる機内食器の販売も展開しています。
産業器材事業では結晶化ガラスという超耐熱ガラスの特性を活かした、IHやガスコンロのトッププレート、耐熱ガラスの部材を製造・販売しています。
海外にも拠点があり海外駐在員を含めた従業員数は約260名、海外のローカルスタッフも含めると750名ほどになります。
健康保険組合とコラボしやすい環境から健康経営に注目
ーー2022年には「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の認定も取得されていますが、健康経営を始められたきっかけや認定の経緯を教えてください。
渡邉:健康経営を知ったきっかけは、2019年に私が人事総務課の課長になった際に健康保険組合からの紹介で「健康宣言から始める健康経営」というパンフレットをいただいたことです。
もともと会社単独の健康保険組合があり、コラボしやすい環境で、パンフレット内容を見ていると弊社の取り組みで要件に該当するものが多い印象を受けました。それで、現状の取り組みを健康経営に結びつけていけば認定取得できると考えたことがきっかけです。
また、その当時は従業員の離職につながる要因を少しでも改善、減らしたいと考えていた時期でもあります。従業員の幸せに寄与したいという会社の思いもあり、健康経営がそこにつながるのではないかとも思いました。
そうして2020年9月に健康経営宣言を行ない、2021年度の健康経営優良法人を申請したのですが、このときは要件に不足があり認定取得には至りませんでした。その後2022年度の申請に再挑戦し、認定をいただくことができ、2023年度は「ブライト500」を目指して申請しています。
ーー2021年度の認定を逃したとき、御社の取り組みの不足部分はどのような項目でしたか?
渡邉:不足としては、具体的な目標設定ができていなかったことです。申請への気持ちが先行して、健康経営の根本にある「従業員を大切にするための取り組み」について、十分に考えられていませんでした。
また、食生活の改善に向けた取り組みも実施できておらず、何らかの施策が必要であるとあらためて知ることになりました。
完全フレックスタイム制度の導入や再受診の勧奨を実施
ーー健康経営を始めるにあたり、改善が必要と感じたのはどのような点ですか?
渡邉:ここ数年は特に、従業員のメンタルケアに課題を感じていました。現場での労働負荷や従業員同士のコミュニケーションがうまくいかないこともあり、何らかの対策が必要だと考えていました。
工場では交代制の勤務となり、勤務時間が一定でなかったり、労働時間が長くなったりもします。勤務のローテーションがあるため、人員配置による人間関係の問題もあるでしょう。
また、本社工場には社員食堂を用意しているのですが、ボリュームや味付けなど食生活のバランスまで考慮できていなかったようにも思います。食堂運営のため、基本的には本社工場勤務の全従業員が食堂を利用するようルールを設けていたことも、健康面での課題につながっていた可能性があります。
定期健康診断では再受診率が低く、対象者のうち3割程度しか再受診に行っていなかったことも改善が必要な課題でした。
ーーそういった健康課題を踏まえて、どのような施策を実施したのでしょうか?
渡邉:時間外業務は少しでも減らしたいのですが、1カ月のルーティンを考えると繁忙期・閑散期はできてしまいます。そこで勤務時間を自分で決めて時間を調整できるよう、完全フレックスタイム制度を導入しました。その結果、仕事とプライベートの両立がしやすく、効率よく働く意識も芽生えたようです。部署により忙しさの差はありますが、時間外業務の削減ができました。ただ、工場ではこうした働き方ができず、現在は工場以外の部署に限定しています。
食生活の改善としては食堂運営を見直し、食事の自由化をしたことや、自販機飲料のカロリー表示や飲料に含まれる糖分の見える化を実施しました。担当者が飲み物の糖分を調べ社内の自販機周辺に掲示してくれたおかげで、従業員が自身の健康管理を意識できるようになっています。
再検査・精密検査の受診率については、メールや書面、対面ととにかくさまざまな方法で受診勧奨を行ないました。最初は自分ごととして受け止めてくれていないからか、なかなか再受診に行ってもらえませんでしたが、1カ月おきに3回の受診勧奨をするようにした結果、対象者の8割以上が再受診してくれるようになっています。
再受診してくれた人は意識向上も見られ、翌年の健康診断では再検査・精密検査の対象となる率が激減しました。
認定取得という目標が取り組みのモチベーションに
ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことはありますか?
渡邉:健康宣言を行なって最初の一歩を踏み出すのには苦労がありました。私が人事総務課長になって「やりたいね」と話してはいたものの、周りからは「継続していくのが大変」「やることにメリットはあるのか」といった意見もあり、なかなかすぐに動けませんでした。
認定を受けるメリットや、従業員を大切にするために必要だと説得して取り組み始めたところ認定取得もでき、担当者も乗り気になってくれたのを感じています。
ーー健康経営の効果やメリットはどのようなところにありますか?
渡邉:2020年に取り組みを開始しましたが、2021年度分の申請では不足があり、認定取得には至りませんでした。そこで次回は何とか取得したいという気持ちが芽生え、人事総務課メンバーの意識が変わったように感じています。健康経営宣言に込めた思いや従業員一人ひとりを大切にしたいという思いがメンバーに伝わり、2022年度の認定取得につながったのだと思います。
従業員が健康への意識を持つようになったかは、正直なところまだ実感できていません。ただ、取り組みのなかで会社制度が変わり、そのメリットは間違いなく享受しているでしょう。認定取得によって、従業員に対しても誇りを持って取り組み内容を伝えられるようになりましたし、それを評価してもらえるよう継続できればと思っています。
工場の勤務体制を見直し負荷の軽減を図りたい
ーー健康経営について、今後の計画や目標、注力されていくことがあればお聞かせください。
渡邉:工場は一部職場で三交代制勤務にしている関係で、現在フレックス制度を導入できていません。従業員の健康面とSDGsの観点から、その勤務体系を変えられないか、経営層にも検討いただいています。人材の採用・教育と平行して自動化も推進し、少しでも工場の業務負荷を軽減できるよう動いている最中です。
また、メンタルヘルス不調によるストレス疾患に対しては、予防と早期発見のため、今年10月からその分野に強い産業医と提携しています。産業医に工場を巡視してもらい、連携しながら職場改善にも取り組んでいます。
ーー健康に関心のある読者や健康経営に取り組む企業の担当者へ、メッセージをお願いします。
渡邉:弊社の企業コンセプト「人々の幸せこそが、企業活動の源」をもとに、これからも従業員とそのご家族の心と体の健康保持・増進に向けた取り組みを推進し、生き生きと働ける環境づくりに努めて参ります。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:鳴海製陶株式会社
インタビュアー:朝本麻衣子
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