
自分たちの仕事を「ものづくりの課題解決業」と定義づけ、時代の移り変わりとともに変化する顧客のニーズに応えるため進化し続ける三共精機株式会社。機械工具の専門商社です。
商社という特性から人材こそが宝と考え、社員に長く健康に働きがいを持って働いてもらうために、健康経営に取り組んできました。今回は総務部の松本美咲さんにお話を伺いました。
人材こそが会社の宝。社員が健康に働き続けられるための取り組み

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の沿革や事業内容を教えてください。
松本さん(以下、松本):弊社は1942年に創業し、今年で80周年を迎えた機械工具の専門商社です。おもなお客様はものづくりをされているメーカーや、大学の研究機関です。
私どもは自分たちの仕事を、ただ商品を売るだけではなく「ものづくりの課題解決業」と定義しています。切削工具・測定機器・工作機械などのあらゆる産業設備や生産財の販売・ソリューション活動を通じて、お客様ごとの課題解決に向けた提案をしております。
現在は本社を京都に置いており、営業所が滋賀と名古屋、岡山、出張所が明石にあるほか、マレーシアとフィリピンにも拠点があります。
お客様のご要望も時代とともに変化しており、それに合わせて、BCP施策支援や採用、教育支援、DX化支援業など、新しいソリューション事業にも挑戦しているところです。
ーー御社は健康経営優良法人に認定され、2022年はブライト500にも認定されていますが、健康経営を始められたきっかけを教えてください。
松本:何かきっかけがあって始めたわけではなく、以前から社員の健康に関する取り組みをしていました。社員からの「こういうのはどうでしょう」という声に積極的に対応する風土があったので、そういったところから少しずつ取り組みが始まっていたと思います。
社員の健康を守るのは、特に弊社のような商社にはメリットが大きいと感じています。会社として社員に長く健康的に働き続けてほしいのはもちろんのこと、社員が長く働いてくれることが会社として事業の優位性にもつながっています。
例えば、営業の人が営業活動を通じて、人脈を広げ、営業のノウハウを身につけていくには長年の経験の積み重ねが必要です。そして、それを次の世代に引き継ぐといった意味でも弊社で長く働いていただける環境づくりを大切にしています。そういった社員がアイデアを出しいきいきと活躍してくださるなかで取引先様とのご縁が深まったり、新しい事業を生み出すきっかけとなったり、企業の成長にもつながっています。
ーー健康経営優良法人認定を申請されたきっかけを教えてください。
松本:当時の総務部長から役員の方に「健康経営優良法人の認定制度というのがあるけど、中身を見てみたらうちの会社も取れそう」という提案があったことがきっかけです。それまでコツコツやってきた努力が公式な機関に認められるのは、すごく良い機会ではということで申請を始めました。
ーーこれまでさまざまな取り組みをされてきたと思いますが、社員の皆さまの健康課題はどういうところにありましたか?
松本:過去の話になりますが、「みなし残業」として給料に、残業20〜30時間がもともと入っていて、社員の残業が当然のものとなっていました。そこで、3年ほど前に制度自体を改革し、みなし残業分の賃金を基本給にプラスで組み込んだうえで、フレックス制度を導入しました。
制度の改革によって、個人で調整できる働き方に変わりました。例えば、これまで6時が定時で7時まで働いたら、その1時間が残業となっていたのが、忙しい日は7時まで働き、忙しくない日は5時で帰るという調整が可能になりました。月のなかで一人ひとり忙しい日と忙しくない日があるので、それに合わせて、柔軟に帰宅時間を管理することで、しっかり体調管理をするよう推奨しています。これにともなって残業も減少し、今では大体月2時間くらいになっています。
また、制度を変えていく段階で、それまで会社携帯を持っていなかった人にも一人ずつ会社携帯を支給するなど、備品の配備もして、効率的に仕事ができるようにしています。内勤も事務処理が多いので、ここ数年でRPAを導入して少しずつ処理の効率化を進めているところです。
健康面では、座り仕事をする人が多いため、運動不足を自覚している人や、肩こり・腰痛を気にしている人が多いと感じています。
時代の変化に合わせて進化するコミュニケーションツール

ーー運動不足の解決に向けてなにか取り組みをされていますか?
松本:少しでも運動の機会が持てるように、今年からラジオ体操を始めました。
弊社では健康づくり担当者を各拠点に設置し、そのメンバーと健康経営に関して今後どういう取り組みをしていくかの会議をしています。そのなかで運動不足を課題に感じている人が多いということで、ラジオ体操の時間を作ることになりました。
自由参加にするとどうしても参加する人が限られてくるので、就業時間内に含めてもらえないかと会社に相談し、朝礼が早く終わる毎週月曜日にラジオ体操の時間を設けることにしました。今は月曜日だけですが、社内でも毎日やりたいという人が出てきているので、実現に向けて相談しているところです。
ーー毎日やりたいという声が出るということは、皆さん良い効果を感じていらっしゃるのですね。ラジオ体操にはどのような効果があると感じていますか?
松本:体を伸ばしたりするのでスッキリするのと、体を動かすことでやる気スイッチが入るようです。
拠点によって人数が違うので、必要な拠点にはラジオ体操用にスピーカーを用意しています。ほかの体操も検討しましたが、みんなが知っていて全身伸ばせて、なおかつ時間がかからないものとなるとラジオ体操が効率的ということになりました。
ーーその他、注力している施策を教えていただけますか?
松本:昔からやっていて、弊社が最も大切にしているのが社内のコミュケーション促進です。役員室も社員の執務室と同じフロアにあり、役員と社員の距離が近いことも特徴の一つです。
年に3回の社員総会では全拠点の社員が集まり、総会の後はみんなで食事に行って親睦を深めることが恒例行事になっています。また年に3回、森林の保全活動として京都の美山で植樹や雑草狩りをして、そのあとにみんなでバーベキューをしたり、焼き芋をしたりと、アットホームな親睦を深めています。
コロナ禍の影響でそういったイベントができなくなってからは、Zoomを使って社員総会をしたり、夜にオンラインでコミュニケーションをとったりしていました。コロナ禍の少し前にTeamsを導入していたので、オンライン会議がしやすくなっていたり、忙しそうにしている人にも手が空いたときに見てもらえるよう、気軽にチャットを送れたりするのでコミュニケーションの促進に役立っています。
弊社の代表も何気ない雑談から良いアイデアが生まれたり、新しいビジネスを発見できたりするという考えなので、社内も仕事中のちょっとした雑談はかまわないという和やかな雰囲気です。
その一環で、オフィスもカフェ風に改装して、よりアイデアが生まれやすい環境づくりに力を入れています。おしゃれなオフィスで働くことで、社員が働きがいを感じ、自然とコミュニケーションが生まれて、さらにそこから良いアイデアが出てくることを狙っています。
ーー運動習慣の面での取り組みはありますか?
松本:バランスボールが各所に置いてあり、椅子代わりに使えるようにしています。もともとは総務のフロアと営業のフロアが違う階なので、気軽に総務のところにきてほしいという意図で始まりましたが、今では社内のいたるところに置いてあって、自由に使えるようにしています。
各拠点に健康づくり担当者を置くことで取り組みを全体に浸透させる

ーー健康経営に取り組むなかで、担当者として苦労されたことはありますか?
松本:最も苦労するのは社内に浸透させることです。制度の新設や、その準備をするのはもちろん大変なのですが、いざ始めたときに、拠点がいくつもあることも苦労した点の一つです。拠点によって、どうしても温度差があります。
そこで、各拠点に健康づくりの担当者を設けて、新しい制度について気軽に相談や確認ができるようにしました。数年前に勤怠管理システムを導入した際は、直接各拠点を回ってシステムの利用方法を説明し、スムーズに利用できるように活動したこともあります。
勤怠管理システムに関しては、導入するまでは勤怠表がExcelしかなかったのですが、外出する者も多いことから、きちんとシステム上管理するのが大事だと感じていました。加えて、フレックスが導入されてさらに勤怠の管理が複雑になり、Excelでの管理に限界を感じていたところもあります。
しかし、打刻する習慣のない人たちにシステム上での打刻を習慣づけるまでは大変でした。最初は問い合わせも多く、何回も説明して、マニュアルを作るなどの工夫が必要でした。
ーーブライト500を取得されて社内外からの反響はいかがですか?
松本:私は採用活動も担当していますが、そこで「ブライト500を取得しています」と言うと学生の安心感につながっていると感じます。いくら「働き方改革をしています」「お休みあります」と口で言っても、あまり説得力がありませんが、経済産業省から認められていて、しかもブライト500は上位500社なので、その認定があるのは説得力があると思います。また、名刺にも載せているので、社外の方にも興味を持っていただけますね。
社内でも「うちの会社って良い会社だな」という満足感につながっているのではないかと思います。採用活動の際に、ほかの社員に会社について話してもらうと、休みが取りやすい、プライベートも充実すると話してくれることが多いです。
ーー今後、注力していきたい取り組みはありますか?
松本:今後、注力していかなければならないと思っているのは、禁煙の推奨です。弊社の社員は少し喫煙率が高く、25%くらいです。
社内で禁煙に成功した方もいますが、長年の喫煙習慣がある方は、なかなか辞めるのは難しいのかなと感じています。社内を全部禁煙にするなどの取り組みはやっていますが、ただ「健康に悪いから禁煙しましょう」といっても響かないのかなと思います。
ーー具体的に計画している施策はありますか?
松本:まだアイデアを出している段階ですが、例えば、喫煙してない人にインセンティブを出すなどの非喫煙者にメリットがあるような施策を考えています。
社員の健康意識の向上が、働きやすさにつながる

ーーでは、最後に健康に関心のある読者にメッセージをお願いします。
松本:「健康」はないがしろにしやすいものです。健康なときは気にしませんが、病気になってからその大切さに気づくということもあると思います。
健康は働くうえでの土台になると思うので、その土台がしっかりすることで、気持ちが前向きになり、その前向きな気持ちが仕事に活かされます。見過ごされやすい部分かもしれませんが、社員の健康意識が上がることで会社の士気向上につながると思いますので、今後健康経営に取り組もうとお考えの会社の方はぜひ積極的に取り組んでみてください。
ーー本日はどうもありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:三共精機株式会社
インタビュアー:朝本麻衣子
サントリーウエルネスのおすすめ商品はこちら