
株式会社阪急阪神エクスプレスは大阪市に本社を構え、国内および世界各地に事業拠点を置いている総合物流企業です。
今回は、健康経営優良法人(大規模法人部門)に2年連続認定されている同社総務人事部の金子さんと小野さんにお話を伺いました。
世界各地に拠点を展開する総合物流企業
ーー本日はよろしくお願いします。まず、御社の沿革やおもな事業内容について教えてください。
金子さん(以下、金子):当社は大阪府大阪市に本社を構える総合物流企業です。国内および世界各地に拠点を展開し、国際輸送(航空・海上)、通関、ロジスティクス、国内輸送など、お客様の幅広いご要望に対して柔軟に対応できる、さまざまなサービスを提供しています。
ーーありがとうございます。御社は健康経営優良法人を取得されていますが、健康経営に取り組み始めたきっかけはどのようなことでしたか?
金子:阪急阪神ホールディングスグループで、健康経営度調査に回答することになったことがきっかけとなりました。健康経営度調査とは、会社の健康経営の取り組み状況を確認し、健康経営銘柄の認定に向けた基礎的な情報を集めるために実施されているものです。その後、健康経営に注力して取り組んできました。
喫煙率の低減や婦人科検診の受診率向上を目指す

ーー従業員の皆さんの健康状態について、改善が必要だと感じていた点はありますか?
金子:喫煙率の低減と婦人科検診の受診率上昇に向けて取り組む必要があると感じていました。また、健康経営の取り組みを進めていくなかで、まず従業員の健康に対する意識を高めていくことの必要性にも気付きました。
その他、食事・運動・睡眠などの生活習慣について、長時間労働やメンタルヘルスなどの働きやすい職場環境についても改善していく必要があります。
ーー喫煙率と婦人科検診の受診率について、どのような取り組みをされましたか?
金子:まず、「就業時間中の全面禁煙」のルールを設定し、阪急阪神健康保険組合で行なっている禁煙プログラムの受診奨励を、会社からも行ないました。婦人科検診の受診率上昇に関しては、検診を受けやすい環境を整えるために、就業時間内に検診を受けることを認めています。また、毎年一回受診状況をアンケートで確認し、より受診しやすい環境づくりができるよう体制を整えています。
産業保健師が新入社員全員と面談を行なう

ーー従業員の健康への意識を高めていくために、どのような取り組みをされたのでしょうか?
小野さん(以下、小野):今年から産業保健師を導入しました。まずは新入社員全員と面談してもらう機会を作り、適宜、健康やメンタルヘルスの相談に乗ってもらいます。基本的なことですが、「定期健康診断を必ず受けること」「再検査・精密検査をきちんと受診すること」「特定保健指導を受けること」の重要性を認識してもらうため、受診勧奨もしていただいています。
当社にはもともと産業医が複数名おり、おもに就業判定や職場巡視などをしていただいていましたが、昨年度から精神科の産業医にも定期的に訪問していただくことで社員のメンタルヘルス面についてもサポートしています。ほかには、オンラインの動画教材を活用してヘルスリテラシーの教育を行なっています。
スマートミールの認証を受けたお弁当の提供

ーー生活習慣の改善を目指して、取り組まれていることはありますか?
小野:生活習慣の改善については、一部の事務所で健康に配慮したお弁当の提供を行なっています。一食のなかで、主食・主菜・副菜がそろっており野菜もたくさん摂ることができ、食塩のとり過ぎにも配慮しているこのお弁当は、「スマートミール」という健康な食事・食環境に関する認証を取得しているものです。
また、健康保険組合が主催しているウォーキングイベントへの参加を会社として奨励すること、お昼休みや休憩中に気軽にストレッチができるグリップチューブのような運動器具を設置することなどに取り組んでいます。
国内の事業所が全国にあるため周知することに苦労した
ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことはありますか?
金子:「健康は個人の問題」という認識の従業員もいるため、健康経営の考え方を社内で伝えていくことが大変でした。研修や動画教材を活用して、少しずつ考え方を浸透できるように取り組んでいます。
また、当社の国内事業所は全国にあるため、取り組みを社内で周知して施策に対する参加率を上昇させることも一苦労ですね。各事業所の衛生委員会を活用したり、労働組合と連携したりして社内への周知活動を行なっています。
ーーお取り組みによる効果や従業員の皆さまからの反響はいかがでしょうか?
小野:健康経営の取り組みを進めることで、喫煙率の減少や婦人科検診の受診率も昨年より増加しているなど、少しずつ結果が出てきている状況です。スマートミール弁当については、活用している従業員から「忙しいときでもバランスの取れた食事ができるのでありがたい!」という声を聞くこともあり、欠食対策としても導入して良かったと感じています。
今年度から実施を始めた、産業保健師による新入社員全員との面談では、元気な様子をみることができれば安心できますし、少し元気がないときには継続してサポートすることで、メンタル不調を未然に防ぐことにつながっていると思います。今後もこのような取り組みを続けて、産業医とも連携し予防に努めていきます。
従業員の活力向上や業務の生産性向上につなげていきたい

ーー健康経営について、今後の計画や目標について教えてください。
金子:喫煙率の低減や婦人科検診の受診率向上について改善が見られていますが、最終目標数値の達成に向けて引き続き取り組み、PDCAサイクルをまわしながら改善を目指していきます。
今後の課題としては、実際に社員の健康状態が改善していき、それが従業員の活力向上や業務の生産性向上につながっていくことだと考えています。
ーー健康に関心のある読者の方や、企業で健康経営を担当されている方に向けてメッセージをお願いします。
金子:当社は「活力ある経営は個の尊重から」を経営方針としていますが、健康宣言でもうたっている「健康で、生き活きと輝く」ことで実現に近づけると考えています。
健康経営の取り組みを始めて5年ほど経ち、少しずつ体制が整ってきたことで施策の幅が広がってきました。今後は、より多くの従業員に参加してもらい、健康経営が社内でもっと盛り上がるように進めていきたいと思っています。
ーー本日はお話いただきありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社阪急阪神エクスプレス
インタビュアー:塩野実莉