
株式会社コプロ・ホールディングスは、全国に9つの拠点を持ち建設エンジニアを中心とした人材サービスを展開する企業です。2020年から健康経営に取り組み始め、2年連続で健康経営優良法人2022(大規模法人部門)の認定を受けています。
今回は法務部ヘルスマネジメント課の笹野さんと岩山さんに、健康経営の取り組みについてお話を伺いました。
病気を機に、あらためて健康の大切さを実感

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の事業内容や沿革について教えてください。
笹野さん(以下、笹野):弊社は2006年に、建設エンジニアを中心としたアウトソーシング事業をメインビジネスとして創業いたしました。本社は愛知県の名古屋市にあり、北海道から福岡まで全国に9拠点を展開しています。
創業以来「一人ひとりの心に点火する人づくり企業になる」をビジョンに掲げ、現在約2,500名の社員とともに人材派遣ビジネス業界で成長しています。
ーー健康経営を始めたきっかけについてお聞かせください。
笹野:個人的な話になるのですが、健康経営を始める少し前に定期健診で所見が見つかり病院で精密検査を受けたところ病気が見つかりました。手術をすることになって大事には至らなかったのですが、自分自身を見つめ直す機会となり、健康であることは当たり前ではないとの認識をあらためて持ちました。
病気を経験した自分だからこそ伝えられることがあるのではないかと考えていたときに、ホームページでたまたま健康経営のサイトを見つけました。まさに自分が取り組んでみたい施策であると感じて、現在プロジェクトリーダーも務めている当時の上長に企画の提案をしました。
そこから、社長をはじめ役員の方たちにプレゼンする機会をいただき、プロジェクトを発足することになりました。2020年度に健康経営の調査申請を開始して、2年連続大規模部門での認定を受けて現在に至ります。
ーー健康経営を始める前、健康に関する社内制度の充実度はいかがでしたか?
笹野:弊社の管理部門の社員は若い世代が多く、体に不調を抱いている社員はあまりいません。そのせいか、自身の健康状態に問題意識をもっている社員は少なく、改善意識も低かったように思います。
ーー岩山さんは新卒入社の若い世代として、健康経営についてどのような印象を持たれましたか?
岩山さん(以下、岩山):健康経営については入社してから知りました。私自身、まだ年齢も若いということもあり、以前は健康を意識していませんでした。健康経営という言葉を知ってから健康を意識し始めました。
健康を考えながら全社員が気持ちよく働ける職場づくりを

ーー社員の皆さんの健康状態について、改善が必要だと感じていた点はありますか?
笹野:プロジェクトを発足する際に、会社として問題意識を持っている健康課題について社長にも伺ったところ、喫煙率が挙がりました。取り組み開始前、35歳以上の喫煙率は46.2%と、非常に高い状態にありました。
あとは、年々体調を崩して休職や退職に至る方が増えてきたことや、若年層のBMI数値が上昇していて肥満率が上がってきていることを問題視していました。
ーー具体的な施策について教えてください。
笹野:喫煙の問題に関しては、健康教育の研修や専門職の方から考案をいただくこともあります。あとは、喫煙者の意識を変えていけるように禁煙デーを設けていて、少しずつではありますが変化がみられるようになってきました。
また、受動喫煙の問題点など、非喫煙者の想いも喫煙者に伝えています。一方的に喫煙者を否定するのではなく、喫煙者・非喫煙者、双方が共存して気持ちよく働ける職場環境を目指し、取り組んでいます。
ゲーム感覚で楽しく取り組める「健康チャレンジプログラム」

ーー喫煙の課題に関しては、着実に効果がでてきているようですね。ほかにも、何か施策はありますか?
笹野:弊社の特徴的な取り組みとしては、健康チャレンジプログラムがあります。まずは、全社員に健康に関するアンケートをとって、個々の健康課題をヒアリングしていきます。その後、個人が健康課題ととらえている項目についてeラーニングで学んでいただき、そこから社員全員で習慣化に取り組んでいくプログラムになります。
人は3週間同じ行動を続けることで習慣化していくそうで、自身がチャレンジしたい課題について社員みんなで3週間取り組んでいきます。
また、取り組みのなかに楽しみを見出してもらえるように、最終アンケートまでしっかり回答してもらった方々のなかから抽選で30名に参加賞として素敵なギフトを準備しました。今年(2022年)は淡路島の特産品がもらえるチャンスがあるというゲーム感覚を持った形でプログラムを実施して、大変好評をいただきました。
ーー皆さんそれぞれ、どのような課題を設定されているのですか?
笹野:コロナ禍で体を動かす習慣が減っている方も多く、運動習慣に関する課題は多く見受けられました。普段降りる駅の一つ前の駅で降りて歩く習慣をつける、お風呂上がりにストレッチをするといった日常生活に取り入れやすそうな課題に対して努力をする方が多かったですね。
ーー健康チャレンジプログラムに対する社内の反響はいかがですか?
笹野:会話のなかで、健康チャレンジプログラムについて話がでるようにもなりました。あとは、喜びを社員でわかち合うために、参加賞に当選した方には参加賞と合わせて写真を撮ってもらい社内報に掲載しています。
参加賞を手にした社員は、取り組みを通じてプラスアルファの楽しみを見いだせたことに喜びを感じてコメントをしてくれています。
上の世代がお手本となり若手の意識を変えていく

ーー若年層のBMI数値の上昇も問題視されていましたが、何か施策は打たれていますか?
笹野:社員へのリテラシーの向上を図るため、まずは経営層および管理職の方々から積極的に健康改善に取り組み、変化を体現していく企画を考えています。企画にご賛同いただいた6名の役員・管理職の方に、週2回トレーニングに通っていただきます。
弊社では、定期的に社員が集うようなイベントを行なっているので、イベントの場で管理職の方が本気で取り組んでいる姿が伝わるように、テレビCMのパロディのような形で紹介したいと考えています。
また、チーム戦で参加できる企画も用意しました。私も参加させていただきますが、5人一組になって体質改善の目標数値を立て達成に向けて、チーム一丸となって取り組んでいく予定です。
ーーユニークな取り組みですね。社員のリテラシーアップを一番の目的として企画されたのですか?
笹野:健康経営に取り組み始めて3年目を迎えましたが、セミナーなどさまざまな施策を実施しているなかで、社員(特に若年層)になかなか浸透していないな、と感じるようになりました。社長やプロジェクトメンバーとのミーティングを重ねるなかで、もっと楽しみながらコプロ基準で考え、促進していけるような企画が必要なのではないかという意見が飛び交うようになり、そんな発想から今回の企画が生まれました。
ーー若い世代から見て、今回の企画はどのように映っていますか?
岩山:企画を聞いたときは正直驚きました。ただ、経営層の方々が積極的に健康促進に取り組んでくださるのは、健康の見える化でもあり会社にとって大事なことだと思います。日々志事するなかで尊敬する方が実際に、変化していく姿を見ることで伝わるものもあると思いますし、僕自身も期待しています。楽しみですね。
課題はあるものの、少しずつ健康経営が社員に浸透してきている
ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことはありますか?
笹野:取り組み当初から感じていることですが、健康経営に正解はないと思っています。各企業にとってそれぞれの正解があると思っていて、他社が推進している取り組みが必ずしも弊社にフィットするとは限りません。正解がないなか、手探りで取り組みを始めて、自身のなかに常に葛藤みたいなものはありますね。
あとは、弊社は若年層の社員が多く、健康経営って何?というところからスタートしました。各取り組みが社員に浸透していくには一定の時間を要すると思っていて、3年目を迎えようやく少しずつ変化してきているように思います。しかし、まだまだ社員との温度差もあるように感じています。
また、重点課題の一つとしてとらえてえているのが、無関心層へのアプローチですね。健康意識が高い方は少しのアプローチで積極的に取り組んでくれますが、無関心層の方が関心を持ち、改善に取り組み、習慣化していくことは容易なことではないと思っています。今後さらなる健康経営促進をしていくにあたり、重要な課題として認識しています。
岩山:社員との温度差は感じますね。僕自身も健康経営を知らなかったですし、健康といわれてもピンとこないところがありました。若い社員が多いなか、自身の強みでもある若いからこその視点を活かして若年層へのアプローチも考えていきたいです。
ーー健康経営を始めて、社内に良い変化はありましたか?
笹野:社員間のコミュニケーションが促進できているかなと感じています。健康というワードも結構飛び交うようになってきて、意識の変化は感じますね。
あとは、健康経営はトップダウンで進めていくことが非常に重要であると認識していて、社長をはじめ役員の方たちの意識が高い企業は非常に早いスピードで促進できているように思います。
1年目はあまり経営層の方々からも健康に関するワードが出てくる機会も少なく感じていたのですが、ここ最近は社員が集まるイベントの場などでも健康経営というワードが頻繁にでてくるようになり、経営層の方々の健康経営に対するとらえ方の変化も感じられるようになりました。
また、毎年健康に関するアンケートを取っていて経年比較を見ていると、弊社が一つの重点課題として取り組んでいる運動習慣に対する改善意欲や問題意識が非常に上昇しています。さらなる促進を図るため、来期に向けた施策も検討しているところです。
社員の健康を守ることは、企業の成長にもつながる
ーー健康経営について、今後の計画や注力されていくことがありましたらお聞かせください。
笹野:当グループでは人こそが財産であるととらえており、派遣エンジニアをはじめとした社員の可能性を広げて活かしていくことが、より企業の競争力を高め企業価値を向上させると考えています。少子高齢化が進む昨今、社員一人ひとりが健康で継続的に働いてもらえることが今後の会社の持続的な成長にもつながるととらえています。
健康に対しては、世代や生活環境によって個人の認識が異なると思います。弊社のように若い世代が活躍する企業の社員は健康についてあらためて考えるような時間も少ないでしょうし、他人事としてとらえている社員も少なくありません。
全従業員が健康について共通認識を持ち、健康課題をネガティブにとらえるのではなくポジティブに受け止め、改善に向けて楽しみを見いだしながら取り組んでいけるような企画運営に今後も努めていきたいです。真の健康経営を追求して、さらなる企業価値向上にもつながればと思っています。
ーー健康に関心のある読者や、健康経営に取り組む企業の担当者へメッセージをお願いします。
笹野:ここ数年、世の中は新型コロナウィルス感染症という得体の知れないウィルスに働き方や健康を脅かされ、より一層健康意識が高まってきているように感じます。新しい生活様式への転換が必要となってきている今日、会社ならびに個人それぞれが「未病改善」に取り組んでいくことがイキイキワクワク健康的に暮らせる社会を実現するために、重要なキーワードだと思っています。
健康は当たり前に続くものではありません。将来の自分への健康投資として、また周りにいる大切なひとのためにも、ぜひ一度セルフケアから始めてみてはいかがでしょうか。
岩山:2022年に新卒として入社してから健康経営に携わり、「健康」への意識は自分を含め同世代もまだまだ低いなと感じた日をよく覚えている一方で「弊社の若年層の健康意識の低さにも対策を講じなければ」という強い想いが芽生えてきました。
その一つが、経営層のダイエットイベント企画です。いつもの日常に「見える」変化が訪れることで、自らを見直すきっかけになるとともに、健康意識向上にもつながればと思っています。今後もこのようなイベントを企画して、会社一丸となって健康経営に取り組んでいけるような理想の形を目指していきます。また、熱い想いをもって健康経営に取り組んでいる企業の皆様方とともに、日々精進していきたいと思っておりますので、弊社にご興味のある方はぜひご連絡いただければと存じます。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社コプロ・ホールディングス
インタビュアー:朝本麻衣子