
西濃運輸株式会社は、岐阜県大垣市に本社を構える運送会社です。健康経営の取り組みとして、健康診断後のフォローや運動促進に力を入れて活動されています。
今回は、健康経営優良法人2022を取得した同社の人事部厚生課 課長の飯田さん、セイノーHD株式会社の総務部 課長の澤田さん、サステナビリティ推進部 課長の林さんにお話を伺いました。
日本で初めてトラックでの長距離輸送を行なった会社
ーー本日はよろしくお願いします。御社の沿革やおもな事業内容について教えてください。
澤田さん(以下、澤田):1930年、後年「日本のトラック王」と呼ばれた創業者の田口利八が、中古トラック1台で始めた田口自動車が当社の原点です。当時の長距離貨物輸送は鉄道が中心の時代でしたが、日本初となるトラックの長距離定期路線の免許を取得し、トラックターミナルを全国に設けてきました。
現在は岐阜県に本社を構え、輸送グループが保有するトラックは3万台を超えています。「価値創造」をセイノーグループの使命とし、共創・共生の考えのもと業種や業態を超えてつながり、お客様のお困りごとを解決する新たな価値を提供することで、今後もお客様の繁栄に貢献できるよう挑戦を続けていきます。
ーーありがとうございます。健康経営の取り組みを始めたきっかけはどのようなことでしたか?
飯田さん(以下、飯田):2020年頃、世間的に「健康経営」が注目されるようになりました。そこで、「当社でも何かできることはないか」と模索するなかで健康経営のプロジェクトチームを立ち上げたことがきっかけです。健康経営の取り組みに対する目標を、経済産業省が行なっている健康経営優良法人の取得と、上位500社が認定されるホワイト500の取得として活動を始めました。その結果、健康経営優良法人2022の認定をいただいています。
個人で掲げた目標達成を目指す、MY BESTチャレンジ

ーー健康経営の活動について、最初はどのような施策から始められましたか?
澤田:健康経営のプロジェクトチームには、立候補で15名が集まりました。従業員の健康に関わることや職場環境を変えていく必要があるなかで、まずは「MY BESTチャレンジ」という企画を開始しました。
これは自分の健康を考えて目標を立ててもらい、達成に向けての進捗を確認していく取り組みです。例えば、「毎日何千歩を歩く」「休日には山に登る」「よく寝る」「リフレッシュのためにギターを弾く」など、心身の健康について幅広い目標が集まりました。任意参加ですが、3万人のグループ従業員のうち1万5千人もの方が参加してくださり、1年ほど取り組みました。
運動習慣比率が低いことが課題
ーー健康経営の取り組みを進めていくなかで、従業員の皆さんの健康状態について改善が必要なことはありましたか?
飯田:全国健康保険協会で当社の運動習慣比率を調べてもらったところ、35歳以上の従業員の運動比率が30%前後と、平均より低い結果となりました。健康診断の結果でも、血圧や血液検査で数値が良くない方もいたので、改善していくために運動促進が必要だと感じています。
ーー運動習慣の促進について、これまでどのような取り組みをされましたか?
飯田:ヨガやピラティスの講師を本社にお招きして、実際に体験できる教室を開催しました。その様子を動画で撮影し、社内で発信することで全従業員が見られます。また、歩数を競い合う「ウォーキングイベント」も行ないました。参加者にはアプリをダウンロードしてもらい、チーム対抗で参加していただきます。上位の方々には景品をお渡ししていますが、参加率は低く改善の余地があると感じました。
強制的に参加させるものではないので、多くの従業員が参加してくれるためのきっかけづくりに苦戦しています。参加をポイント制にして、ポイントがたまると景品がもらえるなど、目に見える形で自分に返ってくる体制を取り入れることで少し改善に向かうのではないかと思い、検討を進めている状況です。
健康診断後のフォローに力を入れる

ーーほかにはどのような取り組みをされていますか?
飯田:当社にはドライバーが在籍しているので、健康を起因とする事故を防ぐための取り組みとして、昔から健康診断後のフォローに力を入れています。要再検査・要精密検査などの2次健診の受診率を100%にするために、紙で通知するだけではなく現場の管理者から直接受診を促してもらい、2次健診の重要性を感じてもらいます。
ドライバー職は昔から2次健診の受診率100%でしたが、非乗務職は50%だったところが100%ほどに上昇しており、ここ1年ほどで成果が出ている状況です。
施策の費用対効果を出していくのは難しい
ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことはありましたか?
飯田:健康経営は非常に難しい課題だと思っています。この施策を行なうとすぐに健康になれるような即効性のある施策はなかなかありません。一つの施策を行なうにも費用がかかるので、費用対効果をどう出していくかの検討には特に苦労していますね。
ーー取り組みに対する効果や従業員の皆さんからの反響はいかがでしたか?
飯田:健康経営の取り組みに関する従業員の声としては、おおむね好評の声をいただいています。しかし、イベントの参加率や健康情報を発信している動画の再生回数に関しては、まだ改善の余地がある状況です。今後は、健康診断やストレスチェックで心身の健康について、数値的に検証していこうと考えています。
いろいろな方法を試しながら活動を進めていく
ーー健康経営の今後の目標や計画について教えてください。
飯田:現在、健康経営優良法人2023を申請中です。毎年、評価内容がブラッシュアップされているので、ホワイト500を取得するには高いハードルがあります。当社の健康経営の取り組み内容についてもブラッシュアップを進めて、従業員の一人ひとりに健康経営を理解してもらえるような取り組みを進めていきます。
澤田:サントリーさんと一緒にウォーキングイベントができるアプリがあると聞いていますので、今後はそのアプリの活用をしていきたいですね。当グループには3万人の従業員が在籍しているため全員の意見を吸い上げるのは大変難しいことです。サントリーさんと協業し、アプリを使った情報発信や健康情報を効率的に学ぶことで従業員の健康促進につなげるなど、今後もいろいろな方法を試して取り組みにつなげていきたいと思っています。
「ゆるく・長く・簡単に取り組めるもの」を

健康に関心のある読者の方や、企業で健康経営を担当されている方に向けてメッセージをお願いします。
飯田:健康経営を進めていくなかで自分たちができることを一つひとつ行ない、行動を変えていくことが必要だと思います。具体的には、朝少しだけ早く起きてウォーキングを始めたり、食べ物の量や質を変えてみたり、どんなに小さなことでも良いので健康に向けて挑戦してみてはいかがでしょうか。
林:従業員の健康は会社を経営していくうえでなくてはならないものだと思います。体と心が健康でないと働いている人も楽しくないですし、会社の業績や生産性も向上していかないということは、研究結果としても公表されています。当社も従業員が働いてくれるおかげで物を運ぶことができ、事業が継続できているので従業員を大切にすることには今後も力を入れていきます。
健康への取り組みの結果はすぐには表れません。「ゆるく、長く、簡単に続けられること」がポイントだとサントリーさんから教えていただいたので、継続して取り組んでいくことが健康経営のポイントだと思います。今後も、ほかの企業様の取り組みを参考にしながらセイノーらしい健康経営を促進していきます。
ーー本日は、お話しいただきありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:西濃運輸株式会社
インタビュアー:塩野実莉