
日本飛行機株式会社は神奈川県横浜市に本社を置く航空宇宙機器メーカーです。1934年に旧海軍用航空機の生産を目的に創業されて以来、日本における航空宇宙産業の一翼を担い、航空機部分品や宇宙機器の開発、製造と航空機の整備を行なっています。
「社員の豊かな生活の実現」を経営理念に、従業員の健康保持・増進が企業価値向上にもつながると考えて健康経営に取り組み、「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」の認定も取得しています。
今回は、同社人事総務部の塙さん、人事総務部安全環境課の若友さんに、健康経営の施策やこれから注力される事柄などについてお伺いしました。
国内唯一の航空宇宙機器専業メーカー

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、御社について教えてください。
塙さん(以下、塙):日本飛行機株式会社は、昭和9年(1934年)10月に創立され、今年で88周年を迎えた会社です。おもに航空機・宇宙機器の開発、製造を行なっており、従業員数は正社員で1,100名ほど。国内には、航空機製造の認可を得ているいわゆる“機体5社”と呼ばれる企業があり、当社はそのなかの一つになります。
この5社のなかでは、一番規模の小さい会社となりますが、他社が多角的に事業を展開しているのに対し、当社は航空機・宇宙機器を専門とする、国内唯一の専業メーカーです。
横浜工場と神奈川県大和市の厚木工場の2カ所がマザーファクトリーで、横浜工場では航空機部分品の開発、製造を行なっており、厚木工場は隣接基地に離発着する航空機を整備する工場となっています。厚木工場では防衛省の航空機だけでなく、米海軍機の整備も行なっています。
健康経営の主旨に賛同し、認定を取得
ーー御社が健康経営を始められたきっかけについて教えてください。
塙:当社が健康経営に取り組み始めたのは3年ほど前からです。担当役員が従業員の健康年齢を延ばして元気で働いてもらうという主旨に賛同し、参画することになりました。
ーーこれまでに従業員の方の健康状態に改善が必要だと感じていた点はありましたか?
若友さん(以下、若友):健康診断のデータから、40代以上の従業員の血圧や肥満、飲酒頻度、睡眠習慣といった部分が、他の製造業と比較してやや改善が必要だと感じられました。また健診によって有所見となったにもかかわらず受診されないケースが散見されることも気になりました。
加えてストレスチェックの集団分析からは、健康リスクが全国平均よりもやや高い傾向が続いています。これは職場のコミュニケーション不足が原因ではないかと感じています。
就業時間内の産業医面談や社長との意見交換会を実施
ーー御社が行なっている具体的な施策について教えてください。
塙:安全環境課と人事課がタイアップして、健康を推進する活動やワークライフバランス活動などは以前から取り組んでいました。そのため、健康経営を始めてから新しく施策を行なったというよりは、以前からやっていたことをまとめ直したという形になります。
期初にトップの方針を打ち出して、従業員一人ひとりに会社の取り組みを知ってもらうということを、健康経営への参画を機に始めました。
当社では役員、幹部が同席し、社内の重点項目を審議、報告する場である管理会議があります。1月の管理会議の場で健康経営やワークライフバランスの活動について、前年の振り返りを行ない、課題を抽出し、その結果を受け当年の計画として課題の解決策を立案し報告。現状の問題点と、それをどのようにして解決していくのか、どういった活動に力を入れるかなどをその場で報告し、1年間のキックオフとしております。
若友:当社には「日本飛行機健康保険組合」があり、会社とコラボヘルスを行ないながら、従業員の健康増進に向けた取り組みを展開しています。
会社の取り組みとして就業時間内に対象者全員との保健指導を、産業医面談という形で実施しました。対象者の選定にあたっては、単に健康診断のデータだけでなくこれまでの経過から産業医が総合的に判断して抽出しています。
一方、健保組合は、予防と健康維持・増進の観点から生活習慣病予備軍にあたる従業員に特定保健指導を対面等で行なっています。これも就業時間内に実施しているのが特徴です。
近年はICTを利用して、遠隔地で勤務する対象者に面談や保健指導を行なうだけでなく、従業員の家族にも特定保健指導が受けやすい環境を作っています。
また、バイタルデータやワクチン接種の記録、健康記事の閲覧、お薬手帳等の機能がある健保組合提携アプリも展開。健診を受けた方に「健康年齢」をお知らせしています。ウォーキングラリーの参加や、記事の閲覧、健康クイズの回答等によってポイントが加算されます。楽しみながら健康づくりとなる仕掛けになっており、なかなか好評です。
職場のコミュニケーション不足については、従業員のリテラシーの向上を図るとともに、上層部ともメンタルヘルスについて情報を共有した結果、経営層の方に関心をもっていただきました。具体的には、外部講師を招いて職位別のメンタルヘルスセミナーを開催し、本年度からは社長と若手社員との懇談会を開催しています。
特定保健指導により状況が好転した従業員も
ーー健康経営に取り組むなかで、大変だったことはありますか?
若友:健康経営の浸透には、関心の薄い従業員層に対し、いかに関心をもってもらえる機会を多く作れるかがポイントになります。しかし、新型コロナウイルスへの対応を優先せざるを得ず、健康経営に対し十分な取り組みができなかった時期がありました。
ーー御社の取り組みについて、従業員からの反響はいかがでしょうか?
若友:従業員の反響としては、就業時間内に社内で面談や保健指導が受けられることもあって、おおむね好評だったと思います。実際に特定保健指導を受けて、そのアドバイスを実践したら、改善が見られたという声を直接聞くこともあります。
対外的な評価向上より社内の課題にきちんと向き合うことを重視

ーー健康経営について、今後の目標や注力されていくことがありましたらお聞かせください。
塙:2023年度の健康経営優良法人の申請もしておりますが、認定での評価アップを目指すのではなく、社内の課題一つひとつと向き合って解決することに注力したいと考えています。
当社は働き方改革や健康経営という言葉が世に出る以前から、ワークライフバランス活動に力を入れており、経営者も積極的に取り組んできました。しかしながら、このところ残業時間の増加が見られ、働き方そのものへの意識改革が必要ではと思っています。
長時間勤務によるストレスも、メンタルを崩す原因となる場合があります。昨年よりラインケアやセルフケアなどの研修も取り入れており、メンタル不調による休職者、あるいは休職に至らなくても問題を抱えている従業員へのケアも強化できればと思います。
また、ストレスチェックの結果から判明した、社内における上下間のコミュニケーション不足については、経営層も問題視しています。
実際、コロナ禍により従業員を集めて朝礼を行なって、役員が話す機会はこの3年は持てていません。そのなかで経営トップも入れ替わり、従業員へ直接呼びかける場がなく、経営層の考えを社内に浸透できていない状況になっています。
これを解決するため、施策の一つとしてこの秋より社長と若手との懇親会を実施しているのですが、年明けには随時対象社員の年齢を上げて続行していく予定です。従業員の考えや不満を直接聞き、社長もまた考えを直接伝えることで、会社の将来計画や経営方針などを共有していくことに、今後力を入れたいと思っています。
健康は未来への投資
ーー最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
若友:健康に関心を持って行動することは、未来の自分への投資であると思っています。同時に、従業員やその家族の健康は、会社にとっても大切な財産です。
従業員自身が未来の自分へ投資できる環境整備に向け、私自身もこれからも真摯に取り組んでまいります。
塙:私は長く人事関係の仕事に携わってきましたが、長時間の残業を繰り返す職場への意識改革はまだまだ十分とは言えません。ワークライフバランスの活動として取り組んだ結果、ここ数年で従業員の意識もかなり変わってきたとは思いますが、まだまだ継続的な活動が必要です。
残業は本当に必要なときにだけやるものだという意識にあらためてもらうには、繰り返し伝え、うながすといった活動が不可欠です。私も働き方の意識改革をうながせるよう、継続的に取り組みたいと思っています。
ーー本日はお話いただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:日本飛行機株式会社
インタビュアー:島田佳代子
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