
山形県天童市の「株式会社デンソーFA山形」は、自動車分野をはじめ、医療、電気・半導体などさまざまな分野に自動化生産設備を供給する会社です。
社員と家族の健康を最重要経営資源の一つと考える同社は、心身の健康サポートと働きやすい職場づくりのため健康経営を推進しています。取り組みは社外からも高く評価され、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人2022~ホワイト500~」にも選ばれました。
今回は株式会社デンソーFA山形の執行職、阿部浩さんにお話を伺いました。
システムインテグレーションのスペシャリスト、株式会社デンソーFA山形

ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の事業内容について教えてください。
阿部さん(以下、阿部):当社は、1966年にパイオニア株式会社のスピーカー専用工場として設立された東北パイオニア株式会社内で自動化生産設備を担当する部門として始まりました。その技術力を活かして社外へと展開し、オーダーメイドの自動化生産設備のシステムインテグレーターとして事業を拡大してまいりました。
1988年に製造会社としてティエスイー株式会社を設立し、2011年に東北パイオニア株式会社からFA事業部を分社、吸収分割にて東北パイオニアEG株式会社の設立を経て、2018年からは株式会社デンソーの子会社となり現在に至ります。
おもな事業としては、自動車分野をはじめ、医療、電気・半導体など多岐にわたる分野に自動化生産設備を供給しております。
ーー健康経営を始めたきっかけや目的について教えてください。
阿部:当社は、社員と家族の健康を最重要経営資源の一つととらえ、社員一人ひとりが心身ともに健康で個人の能力を最大限に発揮できる環境の構築を目指しています。
これまでに取り組んできた健康維持・増進活動を発展させ、より組織的な健康づくり活動を積極的に推進すること、そして経営層と社員が一体となって取り組むことが、会社の継続、発展に必要不可欠なものと考えています。
「健康経営優良法人」の認定を取得することで、そういった活動が「見える化」され、より社内の意識向上、地域との連携推進に役立つのではと考え、申請し認定に至りました。
ーー社員の皆さまの健康について、改善が必要だと感じていた点はありましたか?
阿部:当社では責任感が強く真面目な社員が多く、過剰に負荷をかけてしまう事例がありました。熱心に取り組むことはありがたいと思いますが、健康面でも精神面でも一度健康を損ねてしまうともとに戻るのは時間がかかる場合があります。
また、社員の不調は本人だけでなく家族や職場の同僚に負荷が生じることもあり得ますので、健康意識を高めたいと考えていました。
ボトムアップ重視の健康経営。6つの施策を推進

ーー実際のお取り組みについて詳しく教えてください。
阿部:デンソーグループ全体で健康経営に取り組んでおり、デンソー健康推進部からの支援を受けながら横のつながりを重視した包括的な組織体制をとっています。
特徴的なのは、部門所属長が健康経営推進員を担い、各職場の状況に合わせて施策の舵をとっていること、また社員との意見交換を定期的に行ない、ボトムアップを重視していることです。
具体的な取り組みとして、6つの施策があります。
1つ目は健康診断についてです。毎年1回、全社員を対象に各種検診やオプション検査について周知説明し、一人ひとりの希望に基づいたテーラーメイドの健診を組立ています。また、予約窓口を一本化し、結果のフォローまで一括管理することで、全社員がワンストップで人間ドックのような質の高い健診が受けられる環境を整えています。
2つ目はワークライフバランスの推進です。時間単位の年次有給休暇をはじめ、不妊治療や新型コロナウイルス感染症対策を考慮した休暇制度を活用しながら、ワークライフバランスに配慮した多様な働き方を支援しています。
3つ目は治療と仕事の両立支援です。厚生労働省のガイドラインに沿った標準の様式に加えて、独自の様式も設けました。
昨今の新型コロナウイルス感染症拡大など諸事情で書類対応が医療機関の負担になる場合もあることから、当社では書類にこだわらず、医師からヒアリングした結果の提出でも可能としました。社員の困りごとに対して、スピード感重視の柔軟な対応を優先しています。
4つ目は意識啓発の取り組みです。社員向けの健康セミナー教育だけでなく、管理職ライン長に特化したセミナーを定期的に開催し、心身ともに健康で個々のパフォーマンス発揮できる意識啓発に取り組んでいます。
5つ目はメンタルヘルスについてです。ストレスチェックの全社員受検と個人・職場への事後フォローの徹底を図っています。心療内科専門医による無料相談が受けられるほか、公認心理師が常駐しており、心のケアに注力した環境を構築しています。
6つ目はコミュニケーション促進の取り組みです。円滑なコミュニケーションに活用できるアサーションスキルについて理解を深め、即実践できるセミナーを実施しました。
社員の健康意識、外部からの信頼がアップ

ーー健康経営を実践するうえで、苦労されたことや工夫されたことはありますか?
阿部:コロナ禍におけるコニュニケーション施策については苦労しました。社員・家族・協力会社が参加する「納涼祭」や全社員参加の「忘年会」など、社内外でコミュニケーションを深められる場がなくなってしまったためです。
換気・消毒・少人数・黙食をはじめとする感染対策を徹底することで、社員同士のコミュニケーションの機会が減少してしまうため、コミュニケーションの場を確保することが難しい状況でした。
そこで、withコロナに対応した新たなコミュニケーション促進の施策と感染対策の両立を図るべく、社内で協議を重ねています。メールやチャットなどオンラインを活用した感謝イベント「サンキュ―Day」を開催し、社員同士が感謝の言葉を贈りあう機会をつくりました。
ーーこれまでの取り組みによる効果や、健康経営優良法人認定に対する社内外からの反響はいかがでしょうか?
阿部:社員の反響としては「新聞を見た親から、信頼できる会社で安心したと電話がきた」「お客様や取引先や学生に会社をPRできる」といった声が寄せられています。
また、「自分は健康だから関係ないと思っていたが、会社全体で取り組むことのメリットがわかった」「今は健康だから関係ないではなく、今後も維持していく意識が高まった」といった健康意識の変化もみられました。
社外からも「社員を大事にしている会社なのですね」「自社でも健康経営に取り組みたいのでノウハウを教えてほしい」といったお声がけをいただくようになりました。
医療機関からも好評価をいただいています。「大きな病気を患ったら仕事を辞めざるをえないのではなく、患者が治療と仕事を両立できるようなフォロー体制が整っているため信頼できる」といった声をいただいています。
社外も巻き込んだ施策展開も。一人ひとりの活躍を目指して
ーー健康経営について今後の計画や注力されていくことがありましたらお聞かせください。
阿部:自社だけではなく取引先などを巻き込んだ両立支援、健康経営施策を展開していきたいと考えています。一例として「ウォーキングキャンペーン」という健康イベントを今年10月から1社共同実施で始めました。
ーー最後に、健康に関心のある読者の方へメッセージをお願いします。
阿部:健康経営の取り組み強化は、人的資源の確保や会社全体のワークエンゲイジメントの向上が図れ、生産性向上へつながっていくものだと考えています。社員一人ひとりが生き生きと活躍できるように、健康経営を推進していきましょう。
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社デンソーFA山形
インタビュアー:青柳和香子