株式会社トーケンは石川県に本社を構え、建設総合サービス事業を展開する企業です。2019年に健康経営優良法人の認定を取得以来、4年連続で認定を受けています。
2021年、2022年は中小規模法人部門上位500社のみ認定される「ブライト500」にも選出された同社。今回は、健康経営の取り組みについて管理本部広報課長 木下理恵さんにお話を伺いました。
「地域のお役立ち企業」を掲げる株式会社トーケン
ーー本日はよろしくお願いします。まずは、御社のおもな事業内容について教えてください。
木下さん(以下、木下):1970年に創立した当社は、各種建築物の企画から設計施工、維持管理までを事業の柱とする「建設総合サービス業」、「地域スーパーゼネコン」を標榜し、2014年より石川県の金沢本社・小松本社の2本社制を導入しております。2017年から6期連続でグループ売上高100億円を達成しました。
「企業は人」「社員が主役の企業を目指す」を経営信条に「人を大切にする経営」を実践しており、おもな建設事業のほかに「高齢者介護施設紹介事業」「環境緑化事業」「開発不動産事業」「賃貸マンション管理事業」など、地域のお役に立つ事業を展開してきました。近年では、「支え合う地域共生社会の実現」にむけて、「障がい者就労支援事業」にも取り組んでいます。
ーーありがとうございます。では、健康経営を始めたきっかけを教えてください。
木下:「働き方改革は宝の山」をスローガンに改革に取り組もうとするなか、「成長するも停滞するも企業は人」「従業員の健康が会社を元気にする」という考えから、健康経営に取り組みました。健康な従業員が元気に働くことは、業務効率化や顧客満足にもつながり、結果として会社の成長にもつながります。
会社成長のためには、健康経営に取り組むことは必要不可欠だと考えました。そして、健康でいることは、家族との時間や趣味などの私生活をエンジョイするためにも大切です。従業員の人生を心身ともに豊かにすることは、一日の1/3を過ごす会社の大きな役割であると思っています。
ーーどのような体制で健康経営に取り組まれているのでしょうか。
木下:健康経営に取り組むには、経営陣と従業員の意識改革が必要です。まずは経営トップが先頭に立って、経営陣や部門長の健康経営への理解と方針の浸透を行ないました。取り組み当初は、各部門から選出した従業員による「意識改革委員会」「衛生管理委員会」「業務改革委員会」など5つの委員会を発足して、従業員が当事者意識を持ち、全社一丸となって取り組みました。
例えば、残業時間が多い理由として、責任感が強く仕事が大好きな従業員もいますし、そうした上司のもとに配属された部下もいます。また、たくさん働くことが美徳とされた時代を知る従業員もいますし、建設という業界のこれまでの常識などもあります。そうした固定概念から脱却し、いかに「健康経営を理解して取り組んでもらうか」を意識した取り組みです。
同時に、「働き方改革は宝の山」をスローガンに、残業削減や代休、有休など休日取得の推進、離れていても現場を確認できる現場ライブカメラやテレビ会議システム、全従業員へのパソコン・タブレット・スマートフォン貸与などIT化も導入しました。
現在は、建設プロセスのDX化にも注力し、BIMの活用やVRゴーグルの導入を積極的に進めています。現場での膨大な書類の作成や管理業務のために残業を強いられている実態に対し、これをサポートする「生産支援センター」を新設し、女性を中心に現場業務の軽減化に向けて取り組んでいます。
また、毎週開催される役員会議では、全従業員の残業時間と休日取得状況などを把握して、管理職を含めた従業員の勤務状況を管理するようになりました。一斉メールシステムを活用して毎朝、社員の精神状態や睡眠状態、健康状態を把握し、問題があれば声かけや解決に向けた指導を行なっています。
業務に関する部分だけでなく、従業員や家族が安心して働けるよう法定外福利厚生の充実にも注力しています。
意識改革を最優先に取り組んだ健康経営
ーー従業員の健康状態について改善が必要だと感じていた点、課題はありましたか?
木下:「健康」に生きることは人生を豊かにするために必要なことです。健康経営に取り組む以前は、各従業員の健康に対する意識が現在と比べると格段に低い状態であったことから、一人ひとりが「健康」を意識できるように、意識改革を行ないました。
課題は、長時間勤務による残業時間と休日問題です。先ほども述べたとおり、真面目で責任感があるからこそ遅くまで働く従業員や、仕事が好きで休みの日にも仕事に来る従業員もいました。夜になったらパソコンの電源を強制的に切るような頭ごなしの対策をするのではなく、業務時間を短縮できる工夫をしながらの改善を目指し、仕事以外の趣味や家族との時間を大切にするようにとの意識改革も行ないました。
ーー実際の取り組みについて詳しく教えてください。
木下:意識改革を主軸に、健康経営だけでなく働き方改革やIT化など連携させて取り組みました。具体的に挙げますと、
- 意識改革:トップメッセージ、5つの委員会、社内発表会「胎動塾」など
- 働き方改革は宝の山:業務改革、IT化、生産支援センターなど
- 毎週役員会議で管理職を含めた残業時間と休日の取得状況を確認
- 役員を含めた全従業員が毎朝健康状態を報告するアプリの導入
- 感染症対策:インフルエンザ予防の職域接種、抗菌マスク不織布マスク、抗原検査キットの配布
- 年に1度、各本社に体組織InBody計測機を出張依頼して自身の体の状態を把握
- 3つの提携運動施設無料利用(費用は会社負担)
- 情報発信:随時健康情報の掲示、毎月社内報で健康情報を発信
- 定期健康診断検査項目追加(歯科、骨密度など)
- 人間ドック費用の全額補助(40歳以上は隔年、60歳以上は毎年)
- 会社で保険に加入 ※一部の疾病に限る(個人で保険をかけられない社員も安心)
- 施設内禁煙(喫煙所を撤去)
- 新型コロナワクチンの職域接種
といった活動を行なっています。
ーー健康経営を実践するうえで、苦労されたことや工夫されたことはありますか?
木下:一番は健康に対する意識改革です。プライベートなことも多くありますから、あまり過干渉にならないように気をつけながら、「健康」に意識が向くような取り組みと相談しやすい職場になるような取り組みを進めました。また、「仕事が忙しくて通院できない」ことがないように、部門長をはじめ、全社で協力しながら治療に専念できる風土づくりに注力しています。
職場の環境整備の継続と「相談しやすい風土づくり」に注力
ーー取り組みによる効果、健康経営優良法人認定に対する社内外からの反響はいかがでしょうか?
木下:健康経営優良法人に認定していただいていることは、社内外に大きく効果があり、従業員の健康意識の更なる向上や「自分が働いている会社は健康経営に積極的に取り組んでいる」と誇りを持っていただけるようになったと実感しています。
また、新卒採用・中途採用でもPRすることができ、応募数も応募してくる人のレベルも高くなっています。
ーー健康経営について今後の計画や注力されていくことがありましたらお聞かせください。
木下:現在「人を大切にする経営」の実践に取り組んでいます。会社が大切にすべき5者のうち、一番目に大切にするのは「従業員とその家族」です。従業員が元気にいきいきと働くことができる職場環境の整備と悩みなどを相談しやすい企業風土を構築しています。
そのなかで、法定外福利厚生の充実に注力し、この数年で従業員のための多くの支援や制度を導入、規程の改訂も随時行なってきました。働き盛りの従業員が安心できるように、子育てに関する福利厚生にも注力しています。
育児介護休暇制度は法定の倍の日数取得できたり、配偶者が出産する際は特別休暇を取得できたり、勤務形態についても柔軟な働き方ができるようになり、保育園のお迎えのために早退することも日常のなかであたり前となりました。従業員の出生率は全国の企業のなかでもかなり高くなっています。
また、従業員の健康に「投資」するという考えから、従業員の健康を「資産」と位置付け、健康経営は資産価値を維持・向上させるための取り組みと考えています。
ーー健康に関心のある読者へのメッセージをお願いします。
健康経営は、コストをかけずにできることも多くあります。それぞれの会社で課題は異なりますが、企業にとって「従業員が健康であること」がいかに価値のあることかに気付いていただくきっかけになれば幸いです。当社でも、健康経営に終わりはないと考え、健康経営を進化させていきます。
ーーお話をお聞かせいただきありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社トーケン
インタビュアー:朝本麻衣子