
兵庫県姫路市に本社を構える株式会社エコリングは、不用品の「幅広買取」を中心としたリユースサービス事業を展開する会社です。「リユースで世界をもっとHAPPYに」というモットーを掲げ、循環型社会の実現を目指してリユース文化拡大に取り組んでいます。
事業の社会的価値が評価され、「良い会社」の証ともいわれる「B Corp」認証を取得した同社では、社員の健康や働きやすい環境づくりもサポートしているとのこと。「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」にも認定されています。
今回は株式会社エコリングのコンプライアンス部長 大和田誠太郎さん、サステナビリティ推進課長の村上洋子さんにお話を伺いました。
物心ともに豊かになることを目指して

ーー本日はよろしくお願いします。まず御社の事業について教えてください。
村上さん(以下、村上):弊社は2001年に創業し、今年(2023年)で22年目の会社です。社名「エコリング」には「エコロジーの輪を広げていく」という意味があり、リユース事業を通じた社会問題解決への貢献を使命としています。
買取実店舗は現在、全国に189店舗あり、お買取した商品を独自のWebオークションサービスで販売させていただくほか、他社様の商品を委託出品するという事業も展開しております。タイやシンガポールなどアジア圏を中心にリユース文化を拡大しており、国内ではフランチャイズ事業によってリユース事業への参入業者を増やしてきました。
大量生産・大量消費・大量廃棄を抑制して最適生産・最適消費・最少廃棄へと転換すること、持続可能な循環型社会の実現を目指して事業を展開しています。
ーーありがとうございます。健康経営に着目されたきっかけは何だったのでしょうか?
大和田さん(以下、大和田):数年前までは社員の平均年齢が20代だったのですが、それが30代前半に上がってきたことで、ライフステージの変化や生活習慣上の課題に適した健康増進施策が必要だと考えました。
当社には「物心ともに豊かになる」という経営方針があります。「物」はいわゆる経済的な、賃金や福利厚生などでカバーされるような豊かさで、「心」はご自身や家族の人生における満足、いわゆるQOL(生活の質)とよばれる豊かさです。
社員が物心ともに豊かになるには健康についても取り組みが必要だということで、代表の桑田をはじめとする経営層の発信によって2018年から健康経営の推進を始めました。
プロジェクトの強みを生かして多方向から健康増進
ーー健康経営の推進体制について教えてください。
村上:社内制度構築の主幹は人事部ですが、ボトムアップでさまざまなアイデアが挙がりました。それらを実行するのは社内プロジェクトとして設置された「B Corpプロジェクト」のチームであることが多いです。
B Corpプロジェクトは、「社会問題解決型組織」を目指して2018年から始まりました。部門を横断して社内の声を拾い、制度化するプロジェクトです。女性社員の声から会社に対して提案をする「女性サステナビリティ推進チーム」など、多数のチームがあります。
ーー健康関連では、例えばどのような制度ができましたか?
大和田:B Corpプロジェクトから提案され制度化された事例として「禁煙補助制度」があります。社員が禁煙にチャレンジする宣言をした場合、上限1万円として会社が禁煙費用を助成するという制度です。
禁煙に成功した社員の声を紹介したり、喫煙に対する経営陣の考えを発信したりして、「全社一丸となって取り組む」という意識を醸成しています。
ーー補助制度や発信によって、何か変化はありましたか?
大和田:以前は喫煙者がそれなりにいたのですが、現在は大幅に減っていますね。「煙草をやめたらごはんがおいしく感じるようになった」という社員もいるんですよ。私も以前は喫煙していたのですが、会社での取り組みをきっかけに禁煙してよかったと感じています。
B Corpプロジェクトのチームが進めた企画は禁煙以外にもあります。例えばテレワークで外出機会が減ってしまった管理部門を中心に、ウォーキングイベントを実施しました。仮想的に目標地点を決め、東京から歩き始めたとしてどこまでいけるか挑戦するというイベントでした。
人事部へのダイレクト相談「マル秘サポートシート」
ーーメンタルヘルスケアのサポートにも力を入れていらっしゃるそうですね。
大和田:仕事以外の悩みや相談を役員や代表にも相談できる社内コミュニケーションツールがあります。産業医による面談など、カウンセリングも3種類ほど設けています。
ーー「マル秘サポートシート」についても教えてください。
大和田:マル秘サポートシートもメンタルヘルスサポートの一環で、なかなか周囲に相談しにくい個人的な悩みを人事部へダイレクトに相談できる仕組みです。
悩みを相談できないまま不安を抱えていると仕事に集中できないこともあり得ますし、人事情報として把握しておいたほうが、ご本人にとっても会社にとっても有益だろうということで設けられました。
当社の評価制度は、直近タームでの自己評価を入力し、その結果を上長が確認したうえで定期面談を実施します。その入力項目のなかに「マル秘サポート情報」という欄があるのですが、上長には伝えずに人事部にのみ伝えたいことがある場合は社員自身が書き込めるようになっています。
例えば過去に「子どもが障害をもっているため異動の対象外としてほしい」という希望がありました。職場の同僚にはなかなか言えないことでも、会社が理解してくれると思えることで心のゆとりができるのではないかと思います。
人事部としても、マル秘サポート情報によって、経営上大切な視点に初めて気付かされることがあると伺っています。伝えるのに勇気がいる個人的な事情を伝えてもらえることは、とてもありがたいですね。
「ありがとう」が飛び交う組織づくり
ーー御社ではWeb上でのコミュニケーションも盛んだそうですね。
村上:そうですね。例えば社内掲示板の「エコスタグラム」では「ありがとうカード」というものを社員どうしで送れるようになっています。全社員のなかから宛先を選択して、感謝の内容を示すバッジを選択し、メッセージが入力できるんです。
ありがとうカードが届いた人には通知が届いて、マイページでは、受け取ったありがとうと自分が誰かに送ったありがとうが一覧できます。
もともとは手書きのカードでしたが、テレワークが普及したり全国に店舗も増えたりしたことで、直接紙のカードを渡すことが難しくなってきました。そこで2020年1月にシステム化して、いつでもどこからでも送れるようになっています。
ーー感謝の気持ちを目に見える形で贈り合うのですね。皆さん活用されていますか?
大和田:毎日「ありがとう」が飛び交っていまして、多い人だと一年に200~300通も受け取ったり送ったりしています。運用開始当初は、たくさん受け取っている人や送っている人を社内表彰する制度もありました。
代表の桑田を中心に「ありがとう」が飛び交う組織づくりを進めていまして、すごくいい空気が醸成できたのではないかと思います。
勤務時間の柔軟な調整や情報発信も

ーー健康に関する取り組みはほかにもありますでしょうか。
村上:健康促進の推進を担うグループの一つに「社員満足度向上委員会」という委員会があるのですが、ここから挙がった案が実現して2時間ごとの有給休暇が導入されました。例えば、午前中に少しだけ通院してから出勤するといった柔軟な働き方が可能になり、とても助かっています。
また、健康診断の受診も重要であると考えており、当社では、正社員だけでなくパートタイムで勤務されている方も含め全員が健康診断を受けられ、その費用も全額会社が負担するほか、受診中は勤務時間として扱われます。
ーー健康に関する情報発信についてはいかがでしょうか?
村上:健康に関する情報に特化した社内報「健康一番」を社内ポータルに発信し、健康増進に関する制度の定期案内を出してきました。コロナ禍でテレワークが増えた頃は腰痛改善に効く筋トレ紹介、瞑想のすすめなどが掲載されました。
大和田:2022年からは、社内イントラネットで閲覧できる「人事部だより」に、健康関連の情報を盛り込んでいます。この人事部だよりは、人事制度の話題や最近の採用状況、入社した方の紹介、育休の相談件数、部署ごとの有給休暇取得率ランキングなどを毎月お知らせするお便りです。
より休みを取りやすく、有効活用できる制度づくりへ
ーー健康経営について、今後の展望がありましたらお聞かせください。
村上:ありがたいことに売上が伸び、会社規模が急速に拡大しています。ここ数年で200名ほど採用していますので、個別対応の体制づくりも今後さらに求められると考えています。
また先日、2023年度の「女性サステナビリティ推進チーム」キックオフミーティングがありました。今年のメインテーマは休暇制度の改良です。不妊治療や妊婦検診、生理休暇など、「休まなければいけないけれど人には言いにくい」休暇も、もっと取りやすい制度づくりに取り組んでいきます。
特にお客様とアポイントメントがある社員は突発的な休暇が取りにくいこともありますので、全員がより休暇を取りやすい制度づくりに着手する予定です。
大和田:会社の年間休日も毎年増やしていくことになりました。2022年の年間休日は110日でしたが、2023年は113日と3日増やしました。これを少しずつ増やし、遅くとも2030年までには135日とするプランを掲げ、実現を目指しています。
休日が増えると会社にとっての費用的な影響は大きいのですが、有給休暇も含めて年間150~160日ほど休めるような環境を目指し、制度を整えているところです。社員が心身ともに健康な状態を維持し、リフレッシュする時間を増やしていけたらと考えています。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社エコリング
インタビュアー:青柳和香子
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