
新雪輸送株式会社は、埼玉県川口市に本社を構える食品輸送会社です。
健康経営では、手軽に健康状態を測れる「スマートパルス」の導入など、従業員の皆さんの健康を守る取り組みをされています。2022年にはそれらの取り組みが認められ、健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)の認定を取得されました。
今回は同社で健康経営に取り組む、石田英昭さんにお話を伺いました。
食品の輸送事業を行なう、新雪運輸株式会社
ーー本日はよろしくお願いします。まずは御社の沿革やおもな事業内容を教えてください。
石田さん(以下、石田):当社は1963年に設立しました。埼玉県川口市に本社を構え、東京を中心とした一都三県に食品の輸送を行なっています。現在営業所は6カ所あり、設立以来、一貫して食品の輸送事業に取り組んでいる会社です。
ーーありがとうございます。健康経営に取り組み始めたきっかけについて教えてください。
石田:従業員の高齢化が進むなかで、病気になる方が増えていました。その際に、「従業員のために、微力でも会社にできることはないか?」と考えたことが、健康経営に取り組み始めたきっかけです。参考になる施策を導入しながら従業員のためにできることを探り、健康経営の取り組みを進めてきました。
また、ドライバー職の従業員は、出発すると業務時間内に顔を合わせてコミュニケーションを取れる機会が少ないため、従業員が健康で安全な運転を行なってもらうためにも、「予防」の観点は重要だと考えています。
万が一のことを考えて、保険に加入することから始めた

ーー健康経営の取り組みは、どのようなことから始められたのでしょうか?
石田:まず、従業員が特定の病気を罹ったときに使える保険に、会社負担で加入することから始めました。このことで、従業員が万が一病気に罹っても、すぐに治療が始められる体制を整えられたので、安心して働ける環境の整備につながりました。保険への加入は入社5年目以降の従業員が対象です。
その後、昨年9月に、保険の内容を幅広い病気と怪我に対応するものに変更したことで、より安心してもらえる施策へと進化しています。例えば、プライベート時間の怪我であっても補償が下りたり、入社当日から加入できるようになったりしました。従業員からも「良い取り組みだ」という評価をいただいています。
スマートパルスで健康状態を確認する
ーー健康経営を進めていくなかで、従業員のみなさんの健康状態で改善が必要なことはありましたか?
石田:定期健康診断の結果で要再検査・要精密検査と診断された方でも、「体調が悪くないから行かない」という方も多くいたので、病院に行ってもらうために受診勧奨を行ないました。通知文をつくって渡すだけでなく、本当に病院に行っているのかを一人ひとり確認することで、受診してくれる従業員が増えてきています。
ーーほかにはどのような施策に取り組まれていますか?
石田:従業員には、パルスオキシメーターのように指に挟んで心拍数・ストレス度・血管の収縮度などを図ることができる、「スマートパルス」という機械を導入いたしました。その数値はスマートフォンに記録できる仕組みになっているので、心拍数や血管の収縮度が悪化してきたら気付くことができ、自身の健康状態の変化を早期に発見できるようになりました。
ストレス度は、身体的ストレス・精神的ストレスの2つの観点から計測して数値を出すので、心の健康を維持することにつながります。計測時間は1分ほどと、手軽に健康状態を測ることができるので、出発前にドライバーが測定している姿をよく見かけるようになりました。
病気のリスク判定で健康を意識するきっかけをつくる
ーー健康経営に取り組んでいくなかで大変だったことはありましたか?
石田:「体調が悪くなっていないから」と、健康経営の取り組みに対して意欲的に行動してくれない従業員が多くいることです。例えば、「インフルエンザの予防接種を受けたら助成金を出します」と伝えても、全員が予防接種を受けてくれるわけではありません。制度があっても活用していない従業員も多くいるので、今後は健康に対する意識の向上に努めることで、健康経営の施策がより活用されるようにしていきたいと考えています。
そのために、手軽に病気のリスクを調べられる機器の導入などを検討中です。まだ検討中の段階ですが、リスク判定を受けることや結果を知ることによって、従業員が健康を意識するきっかけにつながればうれしいです。実際に取り入れるべきか、従業員の意見を確認しながら進めていければと思います。
従業員の家族も安心できる職場環境

ーー健康経営に対する効果や社内外からの反響はいかがですか?
石田:当社は24時間・365日稼働しているので、ご家族からの理解や応援がないとなかなか続けることができない仕事だと思います。そのため、ご家族の方にとっても安心できる職場であることが重要ですが、健康経営の取り組みを進めることでそこにつながっていると感じています。
また、新しい人材の確保も難しい状況ですので、健康経営に取り組んでいることが当社の強みとなり、今後は採用の面でも効果が出てくると考えています。
ーー最後に、健康に関心のある読者の方や、企業で健康経営を担当されている方に向けてメッセージをお願いします。
石田:採用活動に関しては、現代も「給料が良い」「大手企業」という理由で会社を選んでいる方ばかりかというとそうではなく、時代が変化してきていると思います。「安心して働ける」「体と心が健康に働ける」という条件が出てくる方が多いのではないでしょうか。
また、健康経営は採用活動だけでなく、良い職場づくりにも活きてくると思いますので、皆さんも積極的に健康経営を取り入れてもらいたいですね。また、皆さんと健康経営の取り組みを共有できるネットワークがあれば良いなと思います。
ーー本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:新雪運輸株式会社
インタビュアー:塩野実莉