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企業が進める健康への取り組みを聞いてみました

認定取得を目的とした健康経営にならないように。金井重要工業株式会社にインタビュー

繊維機器の部品製造で130年の歴史を持つ企業

ーー本日はよろしくお願いいたします。まず、御社の沿革やおもな事業内容を教えてください。

金井宏彰社長(以下、金井):弊社は明治27年創業と歴史ある会社で、創業当初から繊維機械の基幹部品を製造・販売しております。かつては繊維産業が日本の経済を担っていた時代があり、その頃から繊維や糸の製造に欠かせない部品を作ってきました。

そういった繊維機器事業に加え、現在は幅広い用途で使われる不織布製品を作る事業も行なっています。不織布は自動車の内装部分や、建物の空調機器内のフィルター、半導体製品の製造過程での精密な研磨作業などに使われ、さまざまな分野で必要とされる素材です。最近は医療分野でも不織布素材の需要が高まっており、弊社も参入しているところです。

また、古くから所有している不動産もあり、それらを活用したマンションや飲食店の経営なども展開しています。

事業の拠点としては大阪にある本社のほか、東京と名古屋に支店を設け、兵庫県伊丹市と宝塚市に繊維機器の部品および不織布の工場があります。

従業員は全体で250名ほど。金井ホールディングスとして海外3拠点を含めたグループ会社が6社あり、グループ全体では2,000名の従業員がいる状況です。

古くから従業員の健康が企業活動を支えると認識

ーー健康経営を始められたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

金井:弊社の場合、「健康経営優良法人」の認定に向けて、取り組みをはじめたのではありません。それ以前から、従業員が健康で頑張れる状態でなければ、会社そのものが長く続かないと思い、必要な施策を行なってきました。

古くから工場でもの作りをしてきましたので、我々が行なう事業の基本には安全があり、そのうえで良い品質のものを作って健康にやっていく。これが取り組みの柱となっています。

ただ、制度として確立されたことで、これまで単独で取り組んでいた内容を体系的にまとめられるようになりました。その時々にピンポイントでやっていたため、漏れや抜けが生じていた部分を、この健康経営優良法人の認定に向けた取り組みのなかでカバーできたように思います。

ーー従業員の皆さまの健康状態について、改善が必要だと感じていた点はありますか?

金井:現在、従業員の平均年齢が45歳となっており、少しずつ高齢化しています。

業務を自動化して体に負担がかからないようにしていますが、それでも重量物を運ぶ作業はあります。腰痛をはじめ、工場ではケガや事故が発生することもあるので、対策が必要です。

また、工場の作業員は喫煙率の高さが目立ち、禁煙を推進する必要があると考えています。さらに近年はコロナ禍という前例のない出来事が起こっており、従業員の健康を守るのは会社の大きな役割であるとあらためて感じていますね。

個人の意思を尊重しながら健康推進

ーーそれでは実際に行なわれている、具体的な施策内容を教えてください。

金井:工場作業での腰痛やケガを回避するため、古くから朝のラジオ体操を実施していますが、さらに一歩上を目指した施策を展開しています。

不織布事業では化学薬品を扱うので、薬品の臭いで健康を害することもあります。それ以外にも薬品使用時には取り扱いを誤ると衣服や皮膚へ付着し、ケガ・火傷につながる恐れも。そういった事象を想定した体制も整え、健康被害が出ていないか、健康診断で定期的にチェックしています。

また、古い工場では新しい建物と比べて空調設備が整っておらず、夏は暑く冬は寒いところもあります。健康面での影響が出ないよう、職場環境の整備も随時実施しているところです。

喫煙率を下げる取り組みは個人の嗜好も絡むため、強制できない難しさがありますね。強要するようなやり方では、ハラスメントになる恐れもあるでしょうし、そのあたりにも気を配りながら、まずは喫煙場所を制限するようにしました。

以前は工場内に喫煙場所が点在していましたが、少しずつ減らしています。完全撤去してしまうと外に吸いに出てしまい、道路上で喫煙することで事故に巻き込まれたり、たばこの煙が近隣の方に迷惑をかけたりといった新たな問題にもなりかねません。そういったことへの配慮から、少しずつ環境を変え、喫煙について考え直す機会となるようにしています。

そうしたハード面での取り組みと並行して、ソフト面の取り組みでは、禁煙外来の補助や産業医によるセミナーで喫煙に対する意識をあらためてもらう機会を設けました。

また、健康は体だけでなくメンタル面でも大切です。ストレスチェックは毎年実施し、どの部門・どの工程に負荷が多いかをデータから検証し、対策を考えるようにしています。

従業員の健康を守るため、新型コロナウイルスのワクチン接種は職域接種を実施し、会社で全従業員が受けられるようにしました。それ以前からも、インフルエンザの予防接種は会社で受けられるようにしています。

こうした取り組みを会社が実施していると従業員が認識してくれれば、自分自身の健康にも気を遣ってくれるようになって、相乗効果が生まれるのではないかと期待しています。

コミュニケーションのあり方やメンタルケアの難しさ

ーー健康経営に取り組まれるなかで、今後の課題に感じている部分はありますか?

金井:以前は会社全体での運動会を実施し、ストレス発散や従業員同士のコミュニケーションの場となっていました。また、仕事のあとに部下を誘って飲みに行き、人間関係を作っていく場にもなっていました。

しかし、最近はコロナ禍と世代による価値観の違いもあり、そういったコミュニケーションが少なくなっているようです。それをどのように解決していくかは、今後の課題の一つではないかと思います。

世代間のギャップもあり、指導方法や社内のコミュニケーションが難しくなっているので、価値観の違いに配慮しながら対処する必要があるでしょう。

残念ながらメンタルの不調により、長期にわたって休職している人もいる状況です。メンタル面でのケアは非常に難しく、模索しながらにはなりますが、今後もサポートを継続したいと思っています。

ーー取り組みに対する従業員の皆さまからの反響はいかがでしょうか?

金井:これまでの取り組みのなかで、従業員からの大きな抵抗はなかったように思われます。

喫煙の制限については個人の嗜好品でもあり、内心反発している人もいるとは思いますが、基本的には大きな負担をかけるような取り組みをしていません。おおむね抵抗感なく、受け入れられているのではないでしょうか。

ただ、各自の健康への意識を高めていくのは難しいと感じています。自身の仕事や会社業績に直接影響するものではないので、こうした取り組みは後回しにされがちです。

会社が従業員の健康を守り、みんなが健康になれば仕事面でもプラスに働くのだと理解してもらえるよう、今後もアプローチしていきたいと思います。

健康経営は誰のためであるかを考えて実行するのが重要

ーー健康経営について今後の計画や考えていることがあればお聞かせください。

金井:今後も健康経営優良法人の認定や、その上位にある「ブライト500」も取りたいとは思っています。

しかし、認定取得を目的にしていては、本当に意味のある施策はできません。従業員に対する健康への取り組みを充実させた結果、そうした認定にもつながったという形であるべきと考えています。

日本では、ほかの企業がやっているから自分のところもやる、という流れになりがちです。取り組みが広がるのは良いことですが、形だけのものになってしまわないか、危惧しているところでもあります。

何のためにやるのか、誰のためのものか、具体的な目標を示して従業員への理解を求めながら取り組まなければ、ついてきてくれないでしょう。

それには全員参加で健康経営のPDCAサイクルを回すこと、それをルーティン化できればと考えています。

ーー健康に関心のある読者や、企業で健康経営に取り組まれる方に向けたメッセージをお願いします。

金井:昨今、新型コロナウイルスやロシア、ウクライナの問題などこれまでに直面したことのないさまざまな問題が発生し、我々を取り巻く環境が変化しています。

そんなときの対応力を身につけるには、やっぱり健康が基本になるでしょう。

仕事も日々の生活も、健康でなければ思うようにできません。皆さんもぜひ、健康を考えた取り組みを実践していってください。

そして弊社では、従業員は会社にとって家族であり、それを守るために必要なことをすると、経営方針のなかにも盛り込んでいます。健康経営もその一環であり、会社から従業員に対しての愛情です。

認定を取るための形式的な活動ではなく、愛情を持って取り組まなければ、従業員も応えてくれません。認定取得を目的にしていたのでは、取得を達成できた時点で活動が終わってしまうでしょう。

認定制度があるからそのためにやるのではなく、会社として従業員を守るために必要な取り組みであると認識して実践して欲しいと思います。

ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

今回お話を伺った企業はこちら:金井重要工業株式会社

インタビュアー:朝本麻衣子

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