
梅南鋼材株式会社は大阪市西成区に本社を構え、鋼材加工や販売など鋼材に関する事業を行なう会社です。創業より67年にわたり、顧客の要望に柔軟に応えながら確かな技術による品質保持を強みに事業を続け、大阪のものづくりを支えてきました。
長く事業を続けるためには従業員の健康が欠かせないと考え「健康づくり委員会」を設置し、健康経営にも注力している同社。2018年には健康経営優良法人2018の認定も受けています。
今回は梅南鋼材株式会社代表取締役の堂上勝己さんと健康づくり委員会の赤井里奈さんにお話を伺いました。
まずは健康に関心を持ってもらうことから始めた健康経営
ーー本日はよろしくお願いします。早速ですが、御社の沿革や事業内容について教えていただけますか。
堂上さん(以下、堂上):当社は1956年の創業時から鋼材の販売事業を行なってきました。65年にわたる歩みのなかでバブル崩壊などの厳しい経済状況も経験し、販売だけでは事業の継続が難しいということで徐々に鋼材の加工事業も手がけるようになりました。
鋼板をレーダー光線で切断したり、曲げたり、さまざまな加工を施してお客様にお届けしています。図面での注文を受けて、鋼材の調達から加工までをスピーディに対応する「プラモデル納品」も当社の特徴の一つです。
お客様のご要望をもとに加工した鋼材を部品の状態で納品し、プラモデルのようにほかの部品ともピタリと合うように、お客様が受け取った際に最も効率よく、あと工程に進められるような加工対応をしています。
ーーありがとうございます。では、御社が健康経営を始めたきっかけについて教えてください。
堂上:弊社では鋼材や機械をあつかうため、体力が必要な仕事が多くあります。そこで、若い人材を集めるために、2004年頃から新卒採用を積極的に進めてきました。現在の従業員数は52名で平均年齢は31歳です。
比較的、若い従業員が多いですし、女性従業員の比率も30%と、製造業の会社にしては女性も多い会社ですね。
きっかけについてですが、若い社員の昼食風景を見ていると、昼食にコンビニ食やインスタント麺ばかりを食べるなど、食事の栄養バランスの偏りが見受けられました。私もたまに食べるので、おいしいことはわかるのですがやはり味が濃いですよね。
できるだけ、食事のバランスを見直してほしいという思いから、従業員の健康について考えるようになりました。やはり社員が健康でなければ会社は発展していかないのだろうと思っています。
そこで健康経営を積極的に取り入れようと思い至った経緯があります。
ーー最初はどのような取り組みから始められたのでしょうか。
堂上:まずは分煙から取り組み始めました。ちょうど健康経営を始めた頃に、経済産業省が分煙を奨励しており、世の中の分煙化が大きく進んでいました。
当社でもすべての事業所に分煙室を設置し、まずは喫煙できる場所を限定することから始めました。分煙室の整備は進めたものの、まだまだ喫煙率は高い状態です。ここからどうやって禁煙につなげていくかが課題ですね。
また、昼食の食事バランスについても課題がありましたが、当社は社員食堂がないため、仕出し屋さんのお弁当を奨励することにしました。会社から費用の補助を出しているので、従業員は180円ほどで、バランスの良いお弁当を食べることができます。
仕出し屋さんのものなのでカロリーや糖分は計算して作られていると思います。徐々に利用者が増えており、最近ではコンビニ食で昼食を済ませる従業員を見かけることも少なくなりましたね。
その他には、運動習慣も大事だろうということで「ウォーキングラリー」も実施しました。一日に歩いた歩数を各自で計測して毎日申請してもらい、それを月間で集計して上位5位ぐらいまでの方にポイントを付与するような取り組みです。
ポイントはさまざまな景品の購入に充てることができます。年間でポイントを貯めて、健康グッズを購入してもらっていて、過去にはバランスボールやウォーキングシューズを買う方もいましたね。
取り組み始めは、なかなか積極的に参加してもらえないことも気になっていましたが、最近では約半数の方に参加していただいており、1カ月で40万歩ほど歩かれる方もいます。我々は必死になっても25万歩ぐらいですね。
景品が出ることと、毎月上位の方を発表しているので少しずつ社内でも浸透してきていると思います。
体の健康にとらわれず、毎日楽しく働ける状態を目指して

ーー少しずつ健康意識が根付いてきているのですね。食事や運動のほかに、取り組んでいることはありますか。
堂上:年に2~3回、専門の講師を招いて、ストレッチやメンタルケアについて教えていただく機会も設けて全社会議の間にみんなで取り組んでいます。
当社は、健康づくり委員会を中心に健康経営の取り組みを進めていますが、こういった講習のテーマもそこで検討してもらっています。世の中で話題になっているものだったり、社員の方が興味を持っていたりするものを取り上げることが多いですね。
赤井さん(以下:赤井):先日は「お金の健康」に関する講座を実施しました。専門の講師の方をお招きして、「お金のことも健康に関係してくる」という話をしていただきました。
若い方だと、目先のことを考えがちなのですが、長い人生のなかで、しっかり計画を立てて、貯蓄をするとか、そういったことも健康につながるという内容ですね。
ーー健康経営に取り組むなかで大変だったことはありますか?
堂上:当社は若い方が多いので、自身の健康は当然だと思っているところがありますね。やはり、若い方は健康に関する危機感があまりないので、取り組みに積極的に参加されないというのが今でも悩みです。
若い頃はあまり健康を意識していないかもしれませんが、40歳を過ぎたあたりから、何らかの生活習慣病を抱えておられる方が結構いらっしゃいます。
健康というのは病気や体の不調に限らず、毎日楽しく働ける、楽しく人生を送れることだと思っているので健康なうちから意識してほしいですね。
こういった考えから体の健康だけでなく、メンタルケアや残業時間の削減、有休消化率の向上にも積極的に取り組んでいます。
今後は社内イベントの企画をとおして従業員の心の健康増進を
ーー幅広い観点で健康にアプローチされていらっしゃるのですね。取り組みについて、従業員の皆さんからの反響はいかがですか。
赤井:社内のアンケートではボウリングやカラオケなどのイベントも健康経営の一環ではないかという声があがっています。
食事や運動など体の健康に関する取り組みのほかにも、リフレッシュやコミュニケーションの活性化につながるものも取り入れていきたいですね。
堂上:今後は社内イベントの補助ができないかと考えています。全社でとなると人数も多く取りまとめが大変なので、まずは2~3人以上でハイキングやキャンプなどですね。会社で補助を出すので、いろんな方で企画をしてください、というのを奨励していこうと思っています。
運動だけではなくて、そういった共通の趣味を持つことが、働きやすい職場環境づくりにつながり、心の健康にもなるでしょうから。そういったイベント性を含めた取り組みをすることで、若い社員にも参加してもらえたらと期待しています。
ちょうどボウリング大会も企画しているところです。以前は、バーベキューもやっていたのですがコロナ禍をきっかけに、なかなかイベントの実施が難しくなってしまいました。また、徐々に日常に戻っていけたらと思っていますね。
ーーありがとうございます。それでは最後に読者へのメッセージをお願いします。
堂上:昨今、従業員の健康について悩む企業も多いと思いますが、社内に健康な従業員がたくさんいることが一番生産性向上につながるのだと感じています。
健康経営優良法人の認定取得は、やはり対外的に信用を得られるところがありますので、こういった取り組みを行なうことは会社側のメリットも多いのではないでしょうか。
認定の取得や健康状態だけにとらわれず「従業員が毎日楽しく働くために必要なこと」に目を向けて、ぜひ健康経営に取り組んでいただけたらと思います。
ーー本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:梅南鋼材株式会社
インタビュアー:塩野実莉