
株式会社小島組は、海洋土木分野に携わる建設会社です。同社では作業船、本社などさまざまな環境で業務がなされています。そのため職員が心身ともに健康でいられるよう、工夫を凝らしながら健康経営を推進中です。
今回は株式会社小島組の常務取締役である木村道広さん、総務部長の二村康文さん、同じく総務部グループリーダーの山口宏美さんにお話を伺いました。
海洋土木事業を営む株式会社小島組

ーー本日はよろしくお願いします。まず御社の事業内容について教えてください。
木村常務(以下、木村):当社は「海洋土木」という海の仕事を中心とした建設事業を展開しています。中心となるのは作業船を使った浚渫(しゅんせつ)工事で、これは海底の土砂を掘り、船の航行や荷役作業ができる水深・水域を確保する工事です。
施工関連の業務をする職員が約100名、作業船の乗組員が約100名の計200名ほどが勤務しています。グループ会社を合わせると、260人~270人ほどの規模です。
ーーありがとうございます。健康経営に着目された理由についてもお聞かせください。
二村部長(以下、二村):定期健康診断で、高血圧や血中脂質などについて有所見者が多いという課題がありました。特に作業船で業務をする乗組員は寄宿生活をしていますので、私たちとしては食事や運動不足など生活習慣が気になっています。
また当社の事業は国交省等の官公庁からの発注を受けて行なうのですが、受注する事業者は入札で決まります。入札の際、健康経営に取り組んでいることがプラスアルファで評価される場合もありますので、その意味でも取り組む価値があると考えました。
生活習慣の見直しが課題

ーー実際のお取り組みについてえてください。
二村:定期健康診断の有所見者には、該当項目についてのお知らせを書いた通知書を直属の上司を通じて配布し、再検査を受けた結果を必ず私へ報告するようにお願いしています。業務が忙しいなどですぐに受診ができない場合も、いつ受ける予定なのかを先に共有してもらっています。
ーー先ほど、寄宿生活にともなう生活習慣のお話がありました。乗組員の方はどのくらいの期間乗船されるのでしょうか。
二村:独身寮に入っている職員は寮から通うことが多いですが、一度工事が始まると、2カ月~4カ月ほどは船で生活することになります。ただ当社の工事は岸壁からあまり離れていませんので、週末には買い物をするなど陸上でも過ごせます。
ベテランの職員についてはお盆休みやお正月休み、大型連休のときだけ自宅に帰るという人もいますね。そのため、好きなものばかりを食べたり飲んだり、という生活になりやすいのではないかと思います。
作業船2隻でレタスを水耕栽培

ーー食事に関して、どのような取り組みをされていますか?
二村:当社が所有する作業船のうち、世界最大の浚渫船と新しいハイブリッド船の中庭でレタスを水耕栽培しています。2~3年ほど前から設備を導入して始めました。
当社の代表が海外に行った際、現地の環境によっては生野菜が食べられないということを実感したのがきっかけです。職員たちは船の生活でも新鮮な野菜が摂れることを喜んでくれています。
ーー生活する船内で育てた新鮮なレタスが食べられるのはうれしいですね。乗船中の食事はどうされているのでしょうか?
二村:本社の職員は外食か外での購入、お弁当持参です。作業船には専門の調理担当者が乗っていますので、10人乗船していれば10人分のまかないを朝・昼・晩の3食提供しています。
ーー船のまかないには、例えばどのようなメニューが出るのでしょうか?
二村:昼食は丼物が多いようです。夕食時のメインは魚のフライや刺身、焼き魚などさまざまですが、品数は豊富に提供されます。ビュッフェ形式の船もありますので、好きなものだけをたくさん食べてしまう職員もいるかもしれません(笑)。
船に設置した運動マシンが好評
ーーほかにはどのような取り組みをされていますか?
二村:安全環境部から食事面の注意事項などをリーフレットにまとめ、安全衛生委員会をとおして各部署に配布しています。
夏は熱中症対策として飲み物や塩分補給の飴を配布したり、スポットクーラーを使ったりして、体調不良者を減らせるようにしています。
山口さん(以下、山口):定期的に船の安全パトロールという業務がありますので、その機会に私たちも管理者や乗組員と健康管理について話をすることがあります。
二村:運動面のサポートとしては、一部の作業船内にランニングマシンなどの運動器具を設置しています。つい最近ある船を訪れたところ、マシンを活用している若手職員が「さらに拡充してほしい」と声をかけてくれました。
木村:コロナ禍以前は発注者である国交省主催の駅伝大会に会社として参加していたので、そうした機会もまた活用できるようになればと思います。今年5月以降は、状況を見てウォーキングやハイキングなどの手軽なイベントも計画する予定です。
気軽に相談できるよう、面談相手も工夫
ーー課題を感じることはありますか?
二村:メンタルヘルスケアのサポートとして、より気軽に相談をしてもらう必要があると感じています。ストレスチェックはもちろん毎年実施していますが、社内の相談窓口や契約している第三者機関の電話相談・カウンセリングサービスがまだあまり活用されていません。
現在行なっているのは、作業船の乗組員に対して当社の30代社員が一人ずつ面談をするという活動です。これまで総務部長の私や保険会社、産業医が相談先だったことが敷居を高くしていたのかもしれないと考え、その社員には「友達感覚ぐらいの気軽な面談をしてきてほしい」とお願いしました。
正直に相談できている職員もいるようですので、今後こうした面談もメンタルヘルスケアに効果をもたらすのではないかと思います。
しっかり休める制度も用意。健康問題は早めに対処を

ーー今後の計画などありましたらお聞かせください。
二村:まずひとつは、時間外労働の削減を進めたいと考えています。これまで、作業船の業務は日の出から日没までだったのですが、それだと夏は業務時間が長くなり、気温の厳しさもあって心身ともに疲れてしまいます。現在は採用活動をより積極的に行ない、交代で週休2日が取れる、シフトを調整するなどして負担軽減を進めているところです。
ーー御社では「健康経営優良法人」の認定も取得されています。採用活動には影響していますか?
二村:学生の方々から直接話題にされることはまだないですが、取引先銀行の方が「学生さんはそうした認定の有無もしっかりチェックしていますよ」とおっしゃっていました。
木村:当社は、しっかり休みをとってリフレッシュしていただく「リフレッシュ休暇」も設けています。一般職員は有給休暇を60日まで持ち越して取得でき、作業船乗組員は30日の長期休みを年に2回取れるようにしています。有給休暇とは別の休暇です。
健康経営の取り組み以前に、ライフワークバランスの面でも制度を整えているということは採用活動の際にお伝えしています。
ーー健康に関心のある方や他社の健康経営ご担当者にメッセージをお願いします。
木村:これから健康経営を推進される場合には、現在の取り組みの延長線上にある内容から着手することが大切かと思います。その会社、そして社内の各職種に合わせた取り組みを目指し、できることから無理なく取り組まれてはいかがでしょうか。
当社では喫煙率を下げる取り組みもしていますが、喫煙そのものをやめることだけが健康維持ではありません。煙草をすぐにやめられないとしても、例えばウォーキングを毎日する、健康的な食事や飲み物を摂るといった「できること」から健康意識を高め、行動を始めるのが肝心だと考えています。
二村:心と体、いずれの場合でも、不調を感じたときはなるべく早く行動することが大切だと思います。以前、メンタルに不調を感じた職員ができるだけ早くクリニックを受診したことで、比較的早く業務に復帰できたということがありました。不調を感じたら遠慮や先延ばしをせず、会社に相談したり病院を受診したりすることをおすすめします。
山口:定期健康診断は年に一回必ず受けていただいていますが、その結果に対しては個人的な経過観察に留まる方が多い印象を受けます。ただ歳を重ねると状態も変わっていきますので、早めにできることから対処していくのが良いのではないでしょうか。自分の体は自分で守るという意識も持ちながら、会社の健診などを活用していただけたらと思います。
ーー本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
今回お話を伺った企業はこちら:株式会社小島組
インタビュアー:青柳和香子
サントリーウエルネスのおすすめ商品はこちら