1. そもそも高血圧とは?何がいけないの?
高血圧という言葉自体を知っていても、実際にどのような状態なのかということは知らないという人も多いかもしれません。そこで、まずこの段落では血圧が高いとはどのような状況なのか、なぜいけないのかについて説明します。
1-1. 高血圧とはどういう状況なのか
我々の生命が維持されているのは、心臓が全身に血液を送り届けてくれているからです。心臓は生まれてから死ぬまで、収縮と拡張を繰り返しています。血圧は心臓から押し出された血液が血管を押す力のことです。心臓から血液を送り出すと心臓は収縮し、その分、流れ出た血液によって血管の内側には圧力が強くかかります。このときの血圧が、いわゆる上の血圧です。一方で、下の血圧は血液が心臓に戻るときに心臓が拡張し、血管内の圧力が最も弱まった瞬間の値になります。
高血圧は血圧が一定の値以上に高くなっている状態です。そうなると、血管には常に過度な負担がかかってしまいます。一般的に高血圧と判断されるのは、上の血圧と呼ばれる収縮期血圧が140mmHg以上、または下の血圧と呼ばれる拡張期血圧が90mmHg以上です。日本国内では、高血圧を患っている人が国民の約3分の1を占める4300万人と推測されており、国民病ともいわれています。
1-2. 高血圧はなぜいけないのか
血圧自体は変動があるもので、いつ測っても同じであるとは限りません。測定する時間や環境、リラックスしている状態かストレスがあるのかなど、体や精神の状態によっても変動があるものです。実際に、一気に過度なストレスがかかったときには血圧が急上昇することもあります。一時的に血圧が高くなることは問題がないことも多いですが、血圧が高い状態がずっと続くようならば注意が必要です。
高血圧が続くと血管の細胞壁が徐々に厚くなり、動脈硬化が進行していまいます。動脈硬化が進んで血管の弾力性がなくなると、血液を全身に送っている心臓にも負担がかかります。心臓は負担を受け続けながらも血液を送り出さなければいけません。ますます頑張り、次第に心肥大といわれる状態など心疾患を発症してしまう可能性があります。また、脳への血液の供給量が減ると、脳梗塞や脳出血をはじめとした脳疾患が起こる恐れもあるのです。
2. 高血圧が引き起こす健康への悪影響
では、実際に高血圧が要因となる健康被害にはどのようなものがあるのでしょうか。そこで、この段落では高血圧が引き起こす健康被害と、どのような危険性があるかについて詳しく説明します。
2-1. さまざまな合併症の発症
高血圧は初期のころならほとんど自覚症状がないケースも多いです。しかし、高血圧は実にさまざまな合併症を引き起こします。たとえば、心臓に関係する合併症の数々です。高血圧によって動脈硬化が進んでしまうと、硬い血管では十分収縮してくれません。しかし、硬化した血管に血液を送り続けるため、負担がかかる心臓は肥大し、「高血圧性心肥大」の原因となります。さらに、心臓の病気では、ほかにも心不全や心室性不整脈、狭心症、心筋梗塞などの合併症も引き起こすことがあるのです。
高血圧の影響は腎臓に及ぶこともあります。血管に過度な圧力がかかり続けることで、老廃物のろ過に必要な腎臓の糸球体に影響を与え、腎硬化症や腎不全の原因ともなるのです。そのほかには、大動脈瘤や閉塞性動脈硬化症、眼底網膜病変などの合併症も発症しやすくなります。
2-2. 動脈硬化による脳卒中や心疾患の発症
高血圧で動脈硬化が起こると、心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳卒中のように重篤な病気を発症する可能性が高まります。実際に、血圧が正常な人に比べると、高血圧の人のほうが心疾患や脳疾患を発症する危険度や死亡率が高いという研究データがあるのです。また、生活習慣病は単独で発症するだけではなく、お互いに影響を及ぼし合うこともあります。たとえば、糖尿病や脂質異常症は動脈硬化を進行させる要因となるため、脳卒中を起こす危険性が高まる合併症です。
3. 血圧が高いときに考えられる様々な原因と対処方法
さまざまな合併症を引き起こす高血圧は、そもそもなぜ起こるのでしょうか。血圧が高くなる原因は実にさまざまです。そこで、高血圧の原因とその対処方法について詳しく紹介します。
3-1. 食生活によるもの
高血圧になる大きな要因として塩分の摂りすぎがあります。一昔前の日本では1日10gをはるかに超える食塩を摂取している地域もみられ、世界のなかでは食塩摂取量が多く、比例して高血圧患者も多い国でした。もちろん、塩分は人間の体には必要なものであるため、全く摂取しなくていいわけではありません。日本高血圧学会では1日当たりの塩分(食塩)摂取量を6g未満が理想だと定めています。WHO(世界保健機関)では、さらに少なく、1日の減塩目標が5gです。
野菜を食べるのが少ないと、カリウムやカルシウムが不足し、それが高血圧の原因にもつながります。特に、カリウムは腎臓から余分な塩分を排出してくれる働きがあるため、意識して摂取したいところです。また、カルシウムが不足すると、心臓や血管を収縮させる働きのある副甲状腺ホルモンやプロビタミンDが分泌されます。結果として心臓や血管を収縮させることになり、血圧が上昇してしまうのです。ほかにも、糖分や動物性脂肪を摂取しすぎることで動脈硬化を招き、高血圧につながることもあります。食生活で血圧を上げないための対処方法としては、塩分を控えた野菜中心の食事を心がけることです。
3-2. 肥満によるもの
肥満も高血圧の原因のひとつです。肥満になると血中でインスリン濃度が上昇するため、交感神経を刺激し、血圧も高くなるといわれています。対処方法としては、やはり体重を減らすことです。無理な運動はいけませんが、汗ばむ程度の運動ならば、血圧を下げる体内物質を増やす作用があるとされています。具体的には汗ばむ程度にウォーキングをする、エレベーターはなるべく使用せずに階段を昇るなどです。運動をすることで代謝がよくなるほか、筋肉もつくことで体脂肪が燃えやすい体質になります。日常の生活習慣として適度な運動を取り入れることで、肥満を解消するようにしましょう。
3-3. 自律神経の乱れによるもの
疲労が溜まっていたり、ストレスを感じたり、緊張したりすることによって、自律神経はすぐに乱れてしまいます。自律神経の乱れも血圧が高くなる原因のひとつです。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、交感神経は起きて活発に活動しているときに働き、寝ているときやリラックス状態にあるときは副交感神経が優位になっています。ストレスがかかるときや緊張したときなどは交感神経の働きが強くなり、血管も収縮し、血圧の上昇につながるのです。
また、睡眠不足が続くことでも自律神経が乱れ、血圧が上昇することがあります。対処方法としては、なるべく疲労やストレスが蓄積しない生活を心がけることです。ゆとりのあるスケジュールを立てて心身ともに余裕を持ち、好きなことをする時間を少しでも取るようにしましょう。もちろん、十分な睡眠をとることを意識するのも大切なポイントです。
3-4. 喫煙によるもの
たばこの煙にはニコチンが含まれています。ニコチンは心拍数を上昇させるほか、血管を収縮させる作用もあるのが特徴です。また、血管内で一酸化炭素も増加し、逆に酸素が不足して心臓の負担が増大します。さらに、動脈硬化の原因ともなることから、血圧の上昇を招き、血管内に血栓もできやすいのです。高血圧になるリスクを避けるためにも、やはり喫煙は控えたほうがいいでしょう。また、喫煙で忘れてはならないこととして、受動喫煙の問題があります。喫煙は本人にとって高血圧など悪影響があるのはもちろん、副流煙によって周囲にいる人にも影響を及ぼすからです。大切な人の健康を守るためにも、喫煙には十分注意する必要があります。
3-5. 年齢や体質の遺伝によるもの
血圧が上昇するケースとして、加齢や遺伝が原因の場合もあります。個人差はあるものの、年齢が上がるにつれてある程度、動脈硬化が進んでしまうのは止められません。そのため、加齢に伴う動脈硬化で血流が悪くなってしまうことがあるのです。また、血圧をコントロールしてくれる自律神経も加齢とともに働きが悪くなり、実際に65歳以上の3人に2人が高血圧だといわれています。
両親や祖父母などに高血圧の人がいる場合も要注意です。家族のなかに高血圧の人がいると、体質が遺伝して自分も高血圧になるケースが多くなるといわれています。もし、身近な家族で高血圧の人がいる場合、まずはリスクがあることをしっかり認識することが大切です。そして、定期的な健康診断や人間ドックを受けることで血圧に異常がないか気にかけ、早期発見できれば早いうちに治療を行うのがいいでしょう。
3-6. 病気によるもの
高血圧の原因が他の病気であるケースもあり、「二次性高血圧」と呼ばれています。生活習慣病などが原因の高血圧とは異なり、治療法も違うことがあります。高血圧の人のうち10人に1人程度が二次性高血圧であるといわれており、高齢者よりは比較的20代以下の若い人に発症するケースが多いです。二次性高血圧を引き起こす原因となる疾患には実にさまざまなものがあります。たとえば、心臓疾患や腎臓疾患、血管疾患のほか、内分泌の異常や中枢神経の異常が原因のこともあるのです。ほかにも、薬の副作用が原因ということもあります。もし、二次性高血圧であることが判明すれば、まずは原因となっている病気を適切に治療することが大切です。
血圧が高い原因を知り生活習慣を改善させよう
高血圧は原因がわかれば、生活習慣に気をつけることで改善できるものもあります。しかし、環境や仕事によっては、状況を変えるのが困難なこともあるかもしれません。たとえば、ストレスのかかる職場でも、簡単に辞められないこともあるはずです。そのような場合は、生活習慣に気をつけながら、対策のひとつとして健康食品やサプリメントなどを利用してみるのもいいでしょう。